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新論 / 虜情

夫西夷之窺 中國者、前後接武、各國逓至、其國雖殊、而其所以敬事尊奉者、則同一胡神也、故耶蘇之闚 中原三百年而不變、而 中國所以待之者、則係時論之趨舍、或出雄斷、或出姑息、是其闚間者、始終一意而應之者、前後異論、以一意者、闚異論者、安保其能久而無間之可乘乎、然則欲使時論一定無可乘之間、在審虜情哉、在審虜情哉、 巻上終

新字:夫西夷之窺 中国者、前後接武、各国逓至、其国雖殊、而其所以敬事尊奉者、則同一胡神也、故耶蘇之闚 中原三百年而不変、而 中国所以待之者、則係時論之趨舎、或出雄断、或出姑息、是其闚間者、始終一意而応之者、前後異論、以一意者、闚異論者、安保其能久而無間之可乗乎、然則欲使時論一定無可乗之間、在審虜情哉、在審虜情哉、 巻上終

書き下し

夫れ西夷の中国を窺ふ者、前後武を接し、各国逓ひに至る。其の国殊なりと雖も、其の敬事尊奉する所以の者は、則ち同一の胡神なり。故に耶蘇の中原を闚ふこと三百年にして変ぜず。而して中国の之を待つ所以の者は、則ち時論の趨舎に係り、或は雄断に出で、或は姑息に出づ。是れ其の間を闚ふ者は始終一意にして、之に応ずる者は前後論を異にす。一意なる者を以て、異論なる者を闚ふ、安んぞ其の能く久しくして間の乗ずべき無きを保たんや。然らば則ち時論をして一定し乗ずべきの間無からしめんと欲せば、虜情を審らかにするに在るかな、虜情を審らかにするに在るかな。(巻上終)

現代語訳

そもそも西洋の夷がわが国(中国=日本)をうかがうのは、前後に足跡を接し、各国がかわるがわるやって来る。その国はそれぞれ違っても、彼らが敬い仕え、尊び奉じるものは、同じ一つの異国の神である。だからキリスト教がわが国をうかがうこと三百年、少しも変わらない。ところがわが国がこれに対処するやり方は、その時々の世論の向き不向きに左右され、あるときは雄々しい決断に出て、あるときはその場しのぎに出る。つまり、隙をうかがう側は始めから終わりまで一つの意志で貫き、これに応じる側は前と後とで論が違う。一つの意志を持つ者が、論の定まらない者をうかがうのだから、どうして長く隙を突かれずにいられると保証できようか。そうであれば、世論を一つに定め、つけこまれる隙をなくそうとするなら、要は外夷の実情をよく見きわめることにあるのだ。外夷の実情をよく見きわめることにあるのだ。(巻上終わり)

解説

「虜情」の章の結びである。正志斎は、来航する国は違っても同じ信仰と一貫した意図を持つ相手に対し、日本側は時々の世論で強硬と姑息を行き来してきたと指摘し、方針を一定させる鍵は相手の実情を審らかにすることだと二度繰り返して強調する。ここでの中国・中原は日本を指す正志斎の用語である。西洋を一枚岩の脅威と見るのは文政期の危機意識による彼の見方だが、交渉や競争で、一貫した戦略を持つ相手に場当たりの対応で臨めば必ず隙を突かれるという指摘は、現代の組織の対外戦略にもそのまま通じる。

この章句が説くこと

虜情一貫方針世論戦略水戸学

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