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新論 / 虜情

其初也出沒洋中、以測吾地形、闚吾動靜、而又誘吾人民、尋而厚禮以乞通商、及黠計不行、乃劫蝦夷焚吾官府、掠吾戎器、而又更要通市、是其闚伺有漸、而其請求、或自飾以禮、或嚇人以兵、百方兼施、其術莫不至、而其意亦可知也、而偸安之徒、動謂彼特欲米穀、不足深慮焉、何其不思之甚也、

新字:其初也出没洋中、以測吾地形、闚吾動静、而又誘吾人民、尋而厚礼以乞通商、及黠計不行、乃劫蝦夷焚吾官府、掠吾戎器、而又更要通市、是其闚伺有漸、而其請求、或自飾以礼、或嚇人以兵、百方兼施、其術莫不至、而其意亦可知也、而偸安之徒、動謂彼特欲米穀、不足深慮焉、何其不思之甚也、

書き下し

其の初めや洋中に出没して、以て吾が地形を測り、吾が動静を闚ひ、而して又吾が人民を誘ふ。尋いで礼を厚くして以て通商を乞ひ、黠計行はれざるに及びて、乃ち蝦夷を劫かし吾が官府を焚き、吾が戎器を掠め、而して又更に通市を要む。是れ其の闚伺に漸有り、而して其の請求、或いは自ら飾るに礼を以てし、或いは人を嚇すに兵を以てし、百方兼ね施し、其の術至らざる莫し、而して其の意も亦知るべきなり。而るに偸安の徒、動もすれば謂ふ、彼は特に米穀を欲するのみ、深く慮るに足らずと。何ぞ其れ思はざるの甚だしきや。

現代語訳

ロシアははじめ海上に出没して、わが国の地形を測り、わが国の動静をうかがい、またわが国の人民を誘った。まもなく礼を厚くして通商を求め、そのずる賢い計略がうまくいかないとなると、蝦夷を脅かし、わが国の役所を焼き、わが国の武器を奪い、そのうえでさらに交易を要求した。つまりその探りには段階があり、その要求は、あるときは礼で自らを飾り、あるときは兵で人を脅すというように、あらゆる手を併せて用い、その術は至らないところがない。その意図もまた知ることができる。それなのに目先の安楽をむさぼる者たちは、何かといえば「彼らはただ米が欲しいだけで、深く心配するには及ばない」と言う。なんと考えの足りないことか。

解説

正志斎は、ロシアの接近を段階を追って整理する。測量と偵察、礼を尽くした通商要求、それが退けられると武力による威嚇と略奪、そして再びの通商要求である。これは寛政四年(1792)のラクスマン、文化元年(1804)のレザノフの来航と、文化三〜四年の樺太・択捉の襲撃事件を指すと考えられる。正志斎はこうした一連の動きを、食料目当てとみて楽観する議論を「偸安の徒」の考えとして退ける。相手の行動を一回ごとでなく段階として読み、その背後の一貫した意図をつかもうとする姿勢は、交渉や危機管理で今も重要である。

この章句が説くこと

虜情鄂羅通商偸安危機警戒

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