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新論 / 形勢

且自古病漢土者西羗北胡、前有五胡之亂、後有沙陀契丹女眞蒙古、遂至踐其地而稱皇帝焉、今鄂羅既兼挾羗胡之勢、其勢不得不圖淸、然淸猶強盛、未易間、故顧而涎於 神州、彼其勢欲得志於 神州然後驅我民以擾閩浙如往時海賊明人所稱倭寇者、而罷弊淸之東南、乘釁而取哈密滿洲等地、直衝北京耳、如是則滿淸亦將不能支、虜能得滿淸之地、則覆莫臥兒提百兒、而殪度爾、如拉枯也、

新字:且自古病漢土者西羗北胡、前有五胡之乱、後有沙陀契丹女真蒙古、遂至践其地而称皇帝焉、今鄂羅既兼挟羗胡之勢、其勢不得不図清、然清猶強盛、未易間、故顧而涎於 神州、彼其勢欲得志於 神州然後駆我民以擾閩浙如往時海賊明人所称倭寇者、而罷弊清之東南、乗釁而取哈密満洲等地、直衝北京耳、如是則満清亦将不能支、虜能得満清之地、則覆莫臥児提百児、而殪度爾、如拉枯也、

書き下し

且つ古より漢土を病ましむる者は西羌・北胡、前に五胡の乱有り、後に沙陀・契丹・女真・蒙古有り、遂に其の地を践みて皇帝を称するに至る。今鄂羅既に羌胡の勢を兼ね挟めば、其の勢清を図らざるを得ず。然れども清猶強盛にして、未だ間し易からず、故に顧みて神州に涎す。彼其の勢、志を神州に得て、然る後に我が民を駆りて以て閩浙を擾すこと、往時の海賊の明人の倭寇と称する所の者の如くし、而して清の東南を罷弊せしめ、釁に乗じて哈密・満洲等の地を取り、直ちに北京を衝かんと欲するのみ。是くの如くなれば則ち満清も亦将に支ふること能はざらんとす。虜能く満清の地を得れば、則ち莫臥児を覆し百児を提げて、度爾を殪すこと、枯るるを拉くが如きなり。

現代語訳

そもそも昔から漢土(中国大陸)を苦しめてきたのは西の羌と北の胡であり、前には五胡の乱があり、後には沙陀・契丹・女真・蒙古があって、ついにはその地を踏みにじって皇帝を名乗るにまで至った。いまロシアは羌と胡の勢いをあわせもっているので、その勢いからして清を狙わずにはいられない。しかし清はなお強盛で、すきをうかがうのは容易ではない。そこで振り向いて神州によだれを垂らしているのである。その勢いからすれば、まず神州で思いを遂げ、そのうえでわが民を駆りたてて、かつて明の人が倭寇と呼んだ海賊のように閩浙(福建・浙江)を荒らさせ、清の東南を疲れさせ、そのすきに乗じてハミ(哈密)・満洲などの地を取り、まっすぐ北京を衝こうとするだけである。そうなれば清もまた持ちこたえられないだろう。ロシアが清の地を得れば、ムガルを覆し、ペルシアを引き連れてトルコを倒すことは、枯れ木をへし折るようにたやすい。

解説

正志斎は、歴代中国王朝を苦しめた北方・西方の勢力の系譜にロシアを位置づけ、その次の狙いを推測する。清が強いうちは日本を先に取り、日本の民を倭寇のように使って清の東南を疲弊させ、北京を衝くという筋書きである。これはロシアの実際の政策を示す史料に基づくものではなく、正志斎の推論であることに注意が要る。ただ、相手の立場に立って「自分ならどう攻めるか」を具体的に描き、自国がその道筋のどこに置かれるかを考える方法は兵法の基本であり、現代の競争戦略やリスク想定でもそのまま使える。

この章句が説くこと

形勢鄂羅推論危機兵法新論

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