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新論 / 國體中

進退疾徐、歩伐止齊、因敵轉化、相地制變、臨陣之用也、武夫不出城市、所論則婦女酒食、俳優雜劇、種樹插花、羅鳥釣魚之事、習撃刺者、不過以爲私鬪之用、學弓銃者、不過充演場之具、調馬徒以供儀容、甲冑槍槊、以爲觀美、衣糧器械、不辨其所以適用、遠近險易、廣狹死生、不知其爲何物、武夫以筋力爲用、馳驅跳騰、輕險阻冒風雪、菲衣惡食、忍飢堪渇、固武夫之事也、故兵家選兵、郷野老實、有土作之色者爲第一、而城市游滑、形動伶便者、其所切忌也、武夫與市人並長、風習偸薄、以靡麗相尚、飲醇茹鮮、身體豐滿、手足軟弱、可以周旋筵席間、而未可以臨危險堪艱苦、是兵家所切忌、而緩急不可用、

新字:進退疾徐、歩伐止斉、因敵転化、相地制変、臨陣之用也、武夫不出城市、所論則婦女酒食、俳優雑劇、種樹挿花、羅鳥釣魚之事、習撃刺者、不過以為私闘之用、学弓銃者、不過充演場之具、調馬徒以供儀容、甲冑槍槊、以為観美、衣糧器械、不弁其所以適用、遠近険易、広狭死生、不知其為何物、武夫以筋力為用、馳駆跳騰、軽険阻冒風雪、菲衣悪食、忍飢堪渇、固武夫之事也、故兵家選兵、郷野老実、有土作之色者為第一、而城市游滑、形動伶便者、其所切忌也、武夫与市人並長、風習偸薄、以靡麗相尚、飲醇茹鮮、身体豊満、手足軟弱、可以周旋筵席間、而未可以臨危険堪艱苦、是兵家所切忌、而緩急不可用、

書き下し

進退疾徐、歩伐止斉、敵に因りて転化し、地を相て変を制するは、陣に臨むの用なり。武夫城市を出でず、論ずる所は則ち婦女酒食、俳優雑劇、種樹挿花、羅鳥釣魚の事なり。撃刺を習ふ者は、以て私闘の用と為すに過ぎず、弓銃を学ぶ者は、演場の具に充つるに過ぎず。馬を調ふるは徒に以て儀容に供し、甲冑槍槊は以て観美と為し、衣糧器械は其の用に適する所以を弁ぜず、遠近険易、広狭死生は、其の何物為るかを知らず。武夫は筋力を以て用と為し、馳駆跳騰し、険阻を軽んじ風雪を冒し、菲衣悪食し、飢ゑを忍び渇きに堪ふるは、固より武夫の事なり。故に兵家の兵を選ぶや、郷野の老実にして土作の色有る者を第一と為し、城市の游滑にして形動伶便なる者は、其の切に忌む所なり。武夫市人と並び長じ、風習偸薄にして、靡麗を以て相尚び、醇を飲み鮮を茹ひ、身体豊満にして手足軟弱、以て筵席の間に周旋すべくして、未だ以て危険に臨み艱苦に堪ふべからず。是れ兵家の切に忌む所にして、緩急用ゐるべからず。

現代語訳

進むか退くか、速くか遅くか、歩みと攻撃をそろえて止まり整え、敵に応じて陣形を変え、地形を見て変化に対処するのが、戦陣に臨むときの働きである。ところが武士は城下を出ず、話すことといえば女や酒食、役者や芝居、植木や生け花、鳥網や釣りのことばかりである。剣や槍を習う者も私闘に使う程度にすぎず、弓や鉄砲を学ぶ者も稽古場の見世物にすぎない。馬を調えるのはただ儀式の体裁のためで、甲冑や槍は見た目の美しさのためのものとなり、衣服・兵糧・器械は実用に適うかどうかをわきまえず、遠近・険しさ平らかさ・広さ狭さ・死地と生地といった地形の区別が何なのかも知らない。武士は筋力を働きとし、馬を駆け跳び回り、険しい地をものともせず風雪を冒し、粗末な衣服と食事で飢えや渇きに堪えるのが、もとより武士の務めである。だから兵法家が兵を選ぶときは、田舎の実直で土仕事の日焼けをした者を第一とし、都会の遊び慣れて身のこなしの軽い者を強く忌み嫌う。ところが武士は町人と一緒に育ち、風習は軽薄になって、華やかさを競い、上等な酒を飲み新鮮な肴を食べ、体は肥えて手足は弱く、宴席の間を立ち回ることはできても、危険に臨み艱難に堪えることはできない。これは兵法家が強く忌み嫌うところで、いざというときに役に立たない。

解説

正志斎は城下に住む武士の実態を描き出す。武芸は私闘や見世物の道具となり、甲冑は見た目の飾りとなり、地形の区別も知らず、体は肥えて手足は弱い。兵は田舎の実直な者から選び、都会の遊び慣れた者を忌むという「兵家」の説は、明の戚継光『紀效新書』の言葉を踏まえたものとみられる。太平の世に戦闘者としての武士が形骸化していたことへの痛烈な批判である。現代に置き換えれば、本来の役割の訓練を忘れ、肩書きや体裁だけが残った専門職や管理職の姿を省みる材料となる。

この章句が説くこと

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