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尉繚子 / 武議

起兵直使甲胄生蟣蝨者,必為吾所効用也。鷙鳥逐雀,有襲人之懷、入人之室者,非出生也,後有憚也。太公望年七十,屠牛朝歌,賣食盟津,過七十餘而主不聽,人人謂之狂夫也。及遇文王,則提三萬之衆,一戰而天下定,非武議安能此合也?故曰:

新字:起兵直使甲胄生蟣蝨者,必為吾所効用也。鷙鳥逐雀,有襲人之懐、入人之室者,非出生也,後有憚也。太公望年七十,屠牛朝歌,売食盟津,過七十余而主不聴,人人謂之狂夫也。及遇文王,則提三万之衆,一戦而天下定,非武議安能此合也?故曰:

書き下し

兵を起こして直ちに甲冑をして蟣蝨(きしつ)を生ぜしむる者は、必ず吾が効用を為す所なり。鷙鳥の雀を逐ふに、人の懐を襲ひ、人の室に入る者有るは、生を出だすに非ざるなり、後ろに憚る有ればなり。太公望、年七十にして、牛を朝歌に屠り、食を盟津に売り、七十余を過ぐるも主聴かず、人人之を狂夫と謂ふなり。文王に遇ふに及びては、則ち三万の衆を提げ、一戦して天下定まる、武議に非ずんば安くんぞ能く此に合はんや。故に曰く、

現代語訳

兵を起こして、そのまま鎧兜に虱(しらみ)がわくほど長く戦場にとどまる者は、必ずわがために働いてくれる者である。猛禽に追われた雀が、人の懐に飛び込んだり、人の部屋に入り込んだりするのは、命を捨てて出てくるのではなく、後ろに恐ろしいものがいるからである。太公望(たいこうぼう、周の文王・武王を助けた軍師の呂尚)は七十歳で、朝歌(殷の都)で牛を屠り、盟津(黄河の渡し場)で食べ物を売っていたが、七十を過ぎても君主に用いられず、人々はみな彼を狂人だと言った。ところが文王に出会うと、三万の兵を率いて、一戦で天下を定めた。武の正しい判断(武議)がなければ、どうしてこのように君臣がぴたりと合うことができただろうか。だから言う、

解説

武議篇の中ほどで、三つの話を並べる。まず、鎧兜に虱がわくほど長く陣中にある兵こそ役に立つ兵だという。次に、鷹に追われた雀が人の懐に飛び込むのは死を恐れないからではなく、後ろにもっと怖いものがあるからだと言う。兵が前に進むのも、後ろに厳しい軍令があるからだという、尉繚子らしい冷静な人間観である。最後に太公望の話で、七十を過ぎて牛を屠り飯を売り、狂人と笑われた男が、文王に出会って一戦で天下を定めた。人を見抜いて用いる判断こそ武議の要だというのである。組織でも、評価されずにくすぶっている人材はいる。その人を見抜き、ふさわしい場を与えられるかどうかが、上に立つ者の力量を示す。

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