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甲陽軍鑑 / 品第十四

一上の剛强成る男の仕形は、平生も陣の時は猶ほ以て人にもかまはず働き、前にも我しはざを分別にて工夫し、其塲へ出ては機のきいたる才覺を以て手抦をせんと思ふより、人にも一圓搆はぬ者なり、二中の機のきいたる男は上の人に負けまじと機をきいて馳り廻り、上の人におとりて見へぬ者なり、三下の男は只の儀もなく上中の人がゆかば、我等もまいらんとて、ふたりの人に目をつけてつきそひまはる者なり、四其外の男は皆人なみと申すなり、上の男は侍百人の中にふたり、中の男は百人の內に六人、下の男は百人の中に十二人、殘て八十人は並なり、

新字:一上の剛強成る男の仕形は、平生も陣の時は猶ほ以て人にもかまはず働き、前にも我しはざを分別にて工夫し、其塲へ出ては機のきいたる才覚を以て手抦をせんと思ふより、人にも一円搆はぬ者なり、二中の機のきいたる男は上の人に負けまじと機をきいて馳り廻り、上の人におとりて見へぬ者なり、三下の男は只の儀もなく上中の人がゆかば、我等もまいらんとて、ふたりの人に目をつけてつきそひまはる者なり、四其外の男は皆人なみと申すなり、上の男は侍百人の中にふたり、中の男は百人の内に六人、下の男は百人の中に十二人、残て八十人は並なり、

書き下し

一上の剛强成る男の仕形は、平生も陣の時は猶ほ以て人にもかまはず働き、前にも我しはざを分別にて工夫し、其塲へ出ては機のきいたる才覚を以て手抦をせんと思ふより、人にも一円搆はぬ者なり、二中の機のきいたる男は上の人に負けまじと機をきいて馳り廻り、上の人におとりて見へぬ者なり、三下の男は只の儀もなく上中の人がゆかば、我等もまいらんとて、ふたりの人に目をつけてつきそひまはる者なり、四其外の男は皆人なみと申すなり、上の男は侍百人の中にふたり、中の男は百人の内に六人、下の男は百人の中に十二人、残て八十人は並なり、

現代語訳

一、上の剛強なる男の仕方は、平生も陣の時はなおさら、人にかまわず働き、前もって自分のすることを分別で工夫し、その場へ出ては機転の利いた才覚をもって手柄をしようと思うので、人には一切かまわない者である。二、中の機転の利いた男は、上の人に負けまいと機転を利かせて走り回り、上の人に劣っては見えない者である。三、下の男は格別のこともなく、上・中の人が行けば我らも参ろうと、二人の人に目をつけて付き添い回る者である。四、そのほかの男は皆人並と申すのである。上の男は侍百人の中に二人、中の男は百人の内に六人、下の男は百人の中に十二人、残って八十人は並である。

解説

上の男は人に構わず自分で工夫して働き、中は上に負けまいと走り、下は上中の二人に付いて回る。その割合は百人に二、六、十二、残り八十が並だという。組織の二割が動きを作り、八割は並だという見立ては、今の職場にも通じる。上の二人は人に構わないので目立たず、評価の仕組みから漏れやすい。人を見る側がこの型を知っておく意味は大きい。割合を知っておけば、全員に同じ働きを求める無理にも気づける。

この章句が説くこと

人材割合機転評価上中下侍

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