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新論 / 國體上

夫萬物原於天人本於祖、承體於父祖、稟氣於天地、故言苟及天地鬼神、雖愚夫愚婦、不能無悚動於其心、而政敎禁令一出於奉天報祖之義、則民心安得不一乎、人者天地之心、心專則氣壯、故億兆一心、則天地之心專、而其氣以壯、其氣壯、則人所以稟元氣者得其全、天下之人、生而皆稟全氣、則國之風氣頼以厚、是謂天人之合也、是以民不忘古、而其俗淳厚、能報其本反其始、久而不變、

新字:夫万物原於天人本於祖、承体於父祖、稟気於天地、故言苟及天地鬼神、雖愚夫愚婦、不能無悚動於其心、而政教禁令一出於奉天報祖之義、則民心安得不一乎、人者天地之心、心専則気壮、故億兆一心、則天地之心専、而其気以壮、其気壮、則人所以稟元気者得其全、天下之人、生而皆稟全気、則国之風気頼以厚、是謂天人之合也、是以民不忘古、而其俗淳厚、能報其本反其始、久而不変、

書き下し

夫れ万物は天に原づき、人は祖に本づく。体を父祖に承け、気を天地に稟く。故に言苟くも天地鬼神に及べば、愚夫愚婦と雖も、其の心に悚動する無き能はず。而して政教禁令、一に天を奉じ祖に報ゆるの義に出づれば、則ち民心安んぞ一ならざるを得んや。人は天地の心なり。心専らなれば則ち気壮んなり。故に億兆心を一にすれば、則ち天地の心専らにして、其の気以て壮んなり。其の気壮んなれば、則ち人の元気を稟くる所以の者、其の全きを得。天下の人、生れながらにして皆全気を稟くれば、則ち国の風気頼りて以て厚し。是を天人の合と謂ふなり。是を以て民古を忘れず、而して其の俗淳厚、能く其の本に報い其の始めに反り、久しくして変ぜず。

現代語訳

そもそも万物は天にもとづき、人は祖先にもとづく。身体を父や祖父から受け継ぎ、気を天地から授かる。だから話がひとたび天地や鬼神に及べば、愚かな男女でも、心に恐れ動くものがないわけにはいかない。そして政治・教化・禁令がすべて天を奉じ祖先に報いる意義から出ていれば、民の心がどうして一つにならないことがあろうか。人は天地の心である。心が一つに集中すれば気が盛んになる。だから億兆の民が心を一つにすれば、天地の心が集中して、その気が盛んになる。その気が盛んなら、人が元気を授かるにあたって、その全体を得る。天下の人が生まれながらにみな完全な気を授かれば、国の気風もそれによって厚くなる。これを天と人との合一という。こうして民は昔を忘れず、風俗は素朴で厚く、根本に報い始めに立ち返ることができ、長く変わらない。

解説

正志斎は、人の身体は祖先から、気は天地から受けるという儒学の気の思想を用いて、天を奉じ祖に報いる政治が民心を一つにすると説く。「人は天地の心」は『礼記』礼運篇の語で、民の心が一つになれば天地の気も盛んになり、国の気風が厚くなるという。「報本反始」(本に報い始めに反る)も『礼記』郊特牲に由来する語で、本書全体の要となる。人々の心のまとまりが組織の活力そのものを左右するという見方は、気風や雰囲気が成果を生むという、現代の組織論の直観とも重なる。

この章句が説くこと

民心報本天人気風一心水戸学

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