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詩経 / 大雅・蕩之什・桑柔一

《桑柔》,芮伯刺厲王也。 菀彼桑柔,其下侯旬。捋采其劉,瘼此下民。不殄心憂,倉兄填兮。倬彼昊天,寧不我矜! 四牡騤騤,旟旐有翩。亂生不夷,靡國不泯。民靡有黎,具禍以燼。於乎有哀,國步斯頻! 國步蔑資,天不我將。靡所止疑,云徂何往?君子實維,秉心無競。誰生厲階?至今為梗。 憂心慇慇,念我土宇。我生不辰,逢天僤怒。自西徂東,靡所定處。多我覯痻,孔棘我圉。 為謀為毖,亂況斯削。告爾憂恤,誨爾序爵。誰能執熱,逝不以濯?其何能淑,載胥及溺。 如彼溯風,亦孔之僾。民有肅心,荓云不逮。好是稼穡,力民代食,稼穡維寶,代食維好。 天降喪亂,滅我立王。降此蟊賊,稼穡卒痒。哀恫中國,具贅卒荒。靡有旅力,以念穹蒼。

新字:《桑柔》,芮伯刺厲王也。 菀彼桑柔,其下侯旬。捋采其劉,瘼此下民。不殄心憂,倉兄填兮。倬彼昊天,寧不我矜! 四牡騤騤,旟旐有翩。乱生不夷,靡国不泯。民靡有黎,具禍以燼。於乎有哀,国歩斯頻! 国歩蔑資,天不我将。靡所止疑,云徂何往?君子実維,秉心無競。誰生厲階?至今為梗。 憂心慇慇,念我土宇。我生不辰,逢天僤怒。自西徂東,靡所定処。多我覯痻,孔棘我圉。 為謀為毖,乱況斯削。告爾憂恤,誨爾序爵。誰能執熱,逝不以濯?其何能淑,載胥及溺。 如彼溯風,亦孔之僾。民有粛心,荓云不逮。好是稼穡,力民代食,稼穡維宝,代食維好。 天降喪乱,滅我立王。降此蟊賊,稼穡卒痒。哀恫中国,具贅卒荒。靡有旅力,以念穹蒼。

書き下し

桑柔(そうじゅう)は、芮伯(ぜいはく)厲王を刺るなり。 菀(うつ)たる彼の桑柔、其の下侯(こ)れ旬(あまね)し。捋(と)り采りて其れ劉(まば)らなり、此の下民を瘼(や)ましむ。心の憂いを殄(た)たず、倉兄(そうきょう)として填(ひさ)し。倬(たく)たる彼の昊天、寧ぞ我を矜(あわ)れまざる。 四牡騤騤(きき)として、旟旐(よちょう)翩(へん)たる有り。乱生じて夷(たいら)がず、国として泯(みだ)れざる靡し。民黎(くろかみ)有る靡く、具(とも)に禍いあって以て燼(もえのこり)となる。於乎(ああ)哀しい有り、国歩斯れ頻(せま)る。 国歩資(たすけ)蔑(な)く、天我を将(たす)けず。止まり疑(さだ)まる所靡し、云(ここ)に徂(ゆ)きて何くにか往かん。君子実に維(おも)う、心を秉ること競う無し。誰か厲階(れいかい)を生ぜし、今に至るまで梗(やまい)と為る。 憂心慇慇(いんいん)として、我が土宇を念う。我が生辰(とき)ならず、天の僤怒(たんど)に逢う。西より東に徂き、定まる処靡し。多く我痻(びん)を覯(み)、孔(はなは)だ我が圉(ぎょ)を棘(せ)む。 謀を為し毖(つつし)みを為せば、乱況(らんきょう)斯れ削られん。爾に憂恤(ゆうじゅつ)を告げ、爾に爵を序(つい)ずるを誨う。誰か能く熱を執りて、逝(ここ)に以て濯(すす)がざらん。其れ何ぞ能く淑(よ)からん、載(すなわ)ち胥(あい)及びて溺れん。 彼の風に溯(むか)うが如く、亦孔だ之れ僾(あい)す。民粛心有るも、荓(しめ)して逮(およ)ばずと云う。是の稼穡(かしょく)を好み、力民代わりて食む、稼穡維れ宝、代わりて食むこと維れ好し。 天喪乱を降し、我が立つる王を滅ぼす。此の蟊賊(ぼうぞく)を降し、稼穡卒(ことごと)く痒(や)む。哀恫(あいとう)す中国、具に贅(つら)なりて卒く荒る。旅力(りょりょく)有る靡く、以て穹蒼(きゅうそう)を念う。

現代語訳

「桑柔」の詩は、芮伯(芮の国の君、周の卿士)が厲王を諷刺したものである。 こんもりと茂ったあの柔らかな桑の木、その下には一面に影が広がっていた。ところが葉をむしり取られてまばらになり、下にいる民を苦しめている。心の憂いは絶えることなく、悲しみにくれて長く続く。はるかに明るいあの大空よ、どうしてわたしを哀れんでくださらないのか。 四頭立ての馬は勇ましく駆け、隼や亀蛇を描いた旗がひるがえる。乱が起こって平らがず、乱れていない国はない。民の中に黒髪の若者は残らず、みな災いにあって燃え残りのようになった。ああ、なんと哀しいことか、国の歩みはこれほどに差し迫っている。 国の歩みには頼る助けもなく、天はわたしたちを助けてくれない。とどまって落ち着く所もなく、どこへ行けばよいのか。君子はまことに思い悩むが、その心に争う気持ちはない。いったい誰がこの災いのきっかけを作ったのか、今に至るまで病となって苦しめている。 憂える心は痛み悲しみ、わが国土を思う。わたしは生まれ合わせた時が悪く、天の激しい怒りにあった。西から東へとさまよい、落ち着く所はどこにもない。わたしは多くの病苦にあい、国境の守りはまことに急を告げている。 よく謀り慎んで事に当たれば、乱の勢いは削られるはずだ。わたしはあなたに憂うべきことを告げ、官位を正しい順に授けるよう教える。誰が熱いものを握って、すぐに水で冷やさずにいられようか。そうしなければどうしてよくなろうか、皆そろって溺れてしまうだけだ。 向かい風に立ち向かうように、息もできないほどに苦しい。民にはつつしみ敬う心があっても、口を押さえられて何もできないと言う。王は収穫の取り立てを好み、力を尽くして働く民に代わって食らう者を重んじる。取り立てた穀物こそが宝だとし、民に代わって食らうことをよしとしている。 天は死と乱れを下し、わたしたちが立てた王を滅ぼそうとしている。害虫のような者を下して、作物はことごとく病みしおれた。哀れで痛ましい中原の国よ、皆つながるように荒れ果ててしまった。力を振り絞る者もなく、ただ大空を仰いで思うばかりである。

解説

厲王の暴政で国が乱れ、民が苦しむさまを、周の卿士である芮伯が嘆き、王を諫めた長篇の詩の前半である。冒頭では、こんもり茂って人々に木陰を与えていた桑の木が葉をむしられてまばらになったと歌い、かつての恵みが失われた国の姿をたとえる。続いて戦乱で若者が失われたこと、さまよって落ち着く所もない憂い、国境の危機、民から搾り取る政治、天が下す災いが順に語られる。毛詩序は芮伯が厲王を刺った詩とする。芮伯は名を良夫といい、『国語』周語上では、利を独り占めしようとする厲王を諫めた人物として登場する。「誰か能く熱を執りて、逝に以て濯がざらん」は、熱いものを握ればすぐ水で冷やすように、乱れた政治にはしかるべき手を打たねばならないという意味で、『孟子』離婁上では、仁を用いずに天下に敵なしを望むのは熱いものを握って水で冷やさないようなものだ、というたとえに引かれる。打つべき手を知りながら動かないことの愚かさを、この詩は問いかけている。

この章句が説くこと

詩経厲王芮伯乱世民

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