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詩経 / 小雅・鴻鴈之什・鴻雁

《鴻雁》,美宣王也。萬民離散,不安其居,而能勞來還定安集之,至於矜寡,無不得其所焉。 鴻雁于飛,肅肅其羽。之子于征,劬勞于野。爰及矜人,哀此鰥寡。 鴻雁于飛,集于中澤。之子于垣,百堵皆作。雖則劬勞,其究安宅。 鴻雁于飛,哀鳴嗸嗸。維此哲人,謂我劬勞。維彼愚人,謂我宣驕。

新字:《鴻雁》,美宣王也。万民離散,不安其居,而能労来還定安集之,至於矜寡,無不得其所焉。 鴻雁于飛,粛粛其羽。之子于征,劬労于野。爰及矜人,哀此鰥寡。 鴻雁于飛,集于中沢。之子于垣,百堵皆作。雖則劬労,其究安宅。 鴻雁于飛,哀鳴嗸嗸。維此哲人,謂我劬労。維彼愚人,謂我宣驕。

書き下し

鴻雁(こうがん)は、宣王を美(ほ)むるなり。万民離散し、其の居に安んぜざるに、能く労来(ろうらい)し還定(かんてい)し安集し、矜寡(かんか)に至るまで、其の所を得ざる無し。 鴻雁于(ここ)に飛ぶ、粛粛(しゅくしゅく)たる其の羽。之(こ)の子于に征き、野に劬労(くろう)す。爰(ここ)に矜人(きょうじん)に及び、此の鰥寡(かんか)を哀れむ。 鴻雁于に飛び、中沢に集まる。之の子于に垣(かき)し、百堵(ひゃくと)皆作(おこ)る。劬労すと雖も、其れ究(つい)に安宅せん。 鴻雁于に飛び、哀鳴嗸嗸(ごうごう)たり。維(こ)れ此の哲人は、我を劬労すと謂う。維れ彼の愚人は、我を宣驕(せんきょう)すと謂う。

現代語訳

「鴻雁」の詩は、周の宣王をほめたたえたものである。万民が散り散りになって住まいに落ち着けずにいたのを、王はよくねぎらい招き寄せ、元の土地に戻して定住させ、安んじて集めた。身寄りのない人々に至るまで、居場所を得ない者はいなかったのである。 おおとりや雁が飛んでいく、さっさっと羽ばたく音がする。この人は出かけて行き、野に出て苦労して働く。気の毒な人々にまで心を配り、妻を亡くした男や夫を亡くした女を哀れむ。 おおとりや雁が飛んでいき、沢の中に降りて集まる。この人は土塀を築かせ、たくさんの塀が一斉に立ち上がる。苦労は多いけれども、ついには安らかな住まいが得られるだろう。 おおとりや雁が飛んでいき、悲しげにがあがあと鳴く。物の分かったあの賢い人は、わたしが苦労していると言ってくれる。物の分からないあの愚かな人は、わたしがおごり高ぶって見せびらかしていると言う。

解説

空を渡るおおとりや雁を歌い起こし、散り散りになった民を集め、塀を築いて住まいを定めさせる役人の苦労を歌った詩である。毛詩序は、厲王の乱で離散した民を、宣王が招き寄せて安住させ、身寄りのない者まで居場所を得させた、と中興の善政をたたえる詩と読む。一方、朱熹『詩集伝』は、流民自身が、自分たちを集めて住まわせてくれた使者の労を思って歌ったものとみる。どちらにしても、哀しく鳴く雁は住まいを失った人々の姿に重なり、後に「哀鴻遍野」(哀しく鳴く雁が野に満ちる)は、戦乱や災害で民が流浪するさまを言う成語となった。結びの章で、賢い人は苦労を分かってくれるが、愚かな人はおごりと見る、と嘆く一句は、人のために働く者がいつの世も抱える思いである。

この章句が説くこと

詩経宣王流民雁哀鴻

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