導師導古典を学びたいすべての人に

詩経 / 小雅・鹿鳴之什・杕杜

《杕杜》,勞還役也。 有杕之杜,有睆其實。王事靡盬,繼嗣我日。日月陽止,女心傷止,征夫遑止! 有杕之杜,其葉萋萋。王事靡盬,我心傷悲。卉木萋止,女心悲止,征夫歸止! 陟彼北山,言采其杞。王事靡盬,憂我父母。檀車幝幝,四牡痯痯,征夫不遠! 匪載匪來,憂心孔疚。期逝不至,而多為恤。卜筮偕止,會言近止,征夫邇止!

新字:《杕杜》,労還役也。 有杕之杜,有睆其実。王事靡盬,継嗣我日。日月陽止,女心傷止,征夫遑止! 有杕之杜,其葉萋萋。王事靡盬,我心傷悲。卉木萋止,女心悲止,征夫帰止! 陟彼北山,言采其杞。王事靡盬,憂我父母。檀車幝幝,四牡痯痯,征夫不遠! 匪載匪来,憂心孔疚。期逝不至,而多為恤。卜筮偕止,会言近止,征夫邇止!

書き下し

杕杜(ていと)は、役(えき)より還るを労(ねぎら)うなり。 杕(てい)たる杜(やまなし)有り、睆(かん)たる其の実有り。王事盬(もろ)きこと靡(な)し、我が日を継嗣(けいし)す。日月陽(よう)なり、女(じょ)の心傷めり、征夫遑(いとま)あらん。 杕たる杜有り、其の葉萋萋(せいせい)たり。王事盬きこと靡し、我が心傷悲す。卉木(きぼく)萋たり、女の心悲しめり、征夫帰らん。 彼の北山に陟(のぼ)り、言(ここ)に其の杞(くこ)を采る。王事盬きこと靡し、我が父母を憂えしむ。檀車(たんしゃ)幝幝(せんせん)たり、四牡(しぼ)痯痯(かんかん)たり、征夫遠からず。 載せず来たらず、憂心孔(はなは)だ疚(や)む。期逝きて至らず、而して多く恤(うれ)いを為す。卜筮(ぼくぜい)偕(とも)にし、会(あ)わせて近しと言う、征夫邇(ちか)し。

現代語訳

「杕杜」の詩は、戦役から帰ってきた兵士をねぎらったものである。 ぽつんと一本立つやまなしの木に、まるまるとした実がなった。王のお役目は手を抜くことが許されず、夫の出征は日を継いでなお続く。月日はめぐってもう十月、妻の心は痛む。出征した夫も、そろそろ暇をもらえるだろうか。 ぽつんと一本立つやまなしの木は、葉がこんもりと茂っている。王のお役目は手を抜くことが許されず、わたしの心は痛み悲しむ。草木は青々と茂り、妻の心は悲しむ。出征した夫も、そろそろ帰ってくるだろうか。 あの北の山に登って、くこの実を摘む。王のお役目は手を抜くことが許されず、夫の父母にまで心配をかけている。まゆみの木で作った兵車はすり切れ、四頭の牡馬は疲れ果てている。出征した夫は、もう遠くないところまで来ているはずだ。 車に乗っても来ず、姿も見えない。心配で心がひどく病む。約束の時期が過ぎても帰らないので、あれこれと憂いが募る。亀の甲の占いと筮竹の占いを両方立てると、どちらも合わせて「近い」と告げる。出征した夫は、もうすぐそこまで来ている。

解説

戦役に出た夫を待つ妻の思いを、四章にわたって歌った詩である。ぽつんと立つやまなしの実や茂る葉で季節の移ろいを示し、約束の時期を過ぎても帰らない夫を案じ、ついには占いにすがって「近い」という答えを得る。毛詩序は「還役を労う」とし、采薇・出車と並べて、戦役から帰った兵士を慰労する宴で歌われた詩と読んだ。朱熹『詩集伝』も同じく還役を労う詩とするが、ことばそのものは留守を守る家族の側から歌われており、兵士を迎える側の心情を借りてその苦労をねぎらう形になっている。国家の務めである「王事」を正面から否定せず、それでも家族の痛みを隠さないところに、小雅の兵役詩の誠実さがある。遠く離れた者を待つ不安は、占いにすがる気持ちも含めて今も変わらない。

この章句が説くこと

詩経戦役帰還妻小雅

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る