詩経 / 国風・魏風・葛屨
《葛屨》,刺褊也。魏地陿隘,其民機巧趨利,其君儉嗇褊急,而無德以將之。 糾糾葛屨,可以履霜?摻摻女手,可以縫裳?要之襋之,好人服之。 好人提提,宛然左辟,佩其象揥。維是褊心,是以為刺。
新字:《葛屨》,刺褊也。魏地陿隘,其民機巧趨利,其君倹嗇褊急,而無徳以将之。 糾糾葛屨,可以履霜?摻摻女手,可以縫裳?要之襋之,好人服之。 好人提提,宛然左辟,佩其象揥。維是褊心,是以為刺。
書き下し
葛屨(かっく)は、褊(へん)を刺るなり。魏の地は陿隘(きょうあい)にして、其の民機巧にして利に趨(はし)り、其の君倹嗇(けんしょく)褊急にして、徳の以てこれを将(ひき)いる無し。 糾糾(きゅうきゅう)たる葛屨、以て霜を履(ふ)むべけんや。摻摻(さんさん)たる女手、以て裳を縫うべけんや。これを要(こし)にしこれを襋(えり)にし、好人これを服す。 好人提提(していし)たり、宛然として左に辟(さ)け、其の象揥(しょうてい)を佩ぶ。維(こ)れ是の褊心(へんしん)、是を以て刺ると為す。
現代語訳
「葛屨」の詩は、心の狭さをそしったものである。魏の土地は狭く、民は小ざかしく利に走り、君主はけちで気短かで、徳をもって民を導くことがなかった。 縄のように編んだ粗末な葛のくつで、霜の上を歩けるだろうか。か細い娘の手に、裳を縫わせてよいものだろうか。腰帯を付け、襟を付けて仕立てたものを、奥方が身に着ける。 奥方はゆったりと落ち着いて、しとやかに左へ身をよけ、象牙のかんざしを髪に挿している。ただその心の狭さゆえに、この詩を作ってそしるのだ。
解説
冬の霜の上を夏の葛のくつで歩かされ、か細い手の若い女が裳を縫わされる。その着物を着る奥方は、ゆったりと身をよけ、象牙のかんざしを挿して澄ましている。仕える者の目から、主人のけちで狭い心をそしった詩である。毛詩序は、魏の土地が狭く、民は利にさとく、君主はけちで気短かで徳がないことをそしる詩とし、魏風全体の基調をここに置いた。毛伝は、「女手」を嫁いで三か月たたない新婦と解し、まだ家事に就く時期でない者に縫い物をさせたと読む。朱熹も、魏の俗が倹約に過ぎて狭いことをそしる詩と見る。倹約は美徳だが、それが人への思いやりを欠く吝嗇に変わると、周りの者は凍えた足で霜を踏むことになる。節約の名の下に誰が寒さを負っているかを、この詩は問いかける。
この章句が説くこと
詩経魏倹約吝嗇毛詩序
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