詩経 / 国風・斉風・鶏鳴
《雞鳴》,思賢妃也。哀公荒淫怠慢,故陳賢妃貞女夙夜警戒相成之道焉。 雞既鳴矣,朝既盈矣。匪雞則鳴,蒼蠅之聲。 東方明矣,朝既昌矣。匪東方則明,月出之光。 蟲飛薨薨,甘與子同夢。會且歸矣,無庶予子憎。
新字:《鶏鳴》,思賢妃也。哀公荒淫怠慢,故陳賢妃貞女夙夜警戒相成之道焉。 鶏既鳴矣,朝既盈矣。匪鶏則鳴,蒼蠅之声。 東方明矣,朝既昌矣。匪東方則明,月出之光。 虫飛薨薨,甘与子同夢。会且帰矣,無庶予子憎。
書き下し
雞鳴は、賢妃を思うなり。哀公荒淫怠慢なり、故に賢妃貞女の夙夜(しゅくや)警戒して相成すの道を陳(の)ぶ。 雞既に鳴けり、朝(ちょう)既に盈(み)てり。雞の則ち鳴くに匪(あら)ず、蒼蠅(そうよう)の声なり。 東方明けたり、朝既に昌(さか)んなり。東方の則ち明くるに匪ず、月出の光なり。 虫飛びて薨薨(こうこう)たり、子(し)と夢を同じくするを甘しとす。会(かい)且(まさ)に帰らんとす、庶(こいねが)わくは予(われ)を子に憎ましむること無かれ。
現代語訳
「雞鳴」の詩は、賢い妃を思ったものである。斉の哀公がみだらで怠け者だったので、賢い妃や貞淑な女が朝に夕に夫を戒めて、ともに徳を成し遂げる道を述べたのである。 「鶏がもう鳴きました、朝廷にはもう臣下が満ちています」。「あれは鶏が鳴いたのではない、青蠅の羽音だよ」。 「東の空が明るくなりました、朝廷はもう人でにぎわっています」。「あれは東の空が明けたのではない、月の光だよ」。 「虫がぶんぶん飛んでいます。あなたと同じ夢を見ていたいのはやまやまですが、朝会に集まった人々はもう帰ろうとしています。どうか、わたしのせいで、あなたが人に憎まれることのないように」。
解説
夜明け前の寝室で、妻が「鶏が鳴いた、朝廷に人が集まっている」と夫を起こそうとし、夫は「あれは蠅の羽音だ」「月の光だ」と言い逃れる。最後に妻は、「わたしのためにあなたが人から憎まれてはいけない」と諭す。夫婦の会話がそのまま詩になった、ユーモアのある一篇である。毛詩序は、斉の哀公が怠けて朝廷に遅れたので、昔の賢い妃が夫を戒めた道を歌って、今をそしった詩と読む。朱熹も、賢い妃が君主を早く起こして朝廷に出させようとする詩とし、その心の敬しさを評価した。ここでは序と詩の姿はおおむね重なる。身近な者の小さな戒めは、耳に痛いが、人を守る力を持つ。眠りたい気持ちに寄り添いつつ、言うべきことは言う妻の姿に、よい伴侶のあり方が見える。
この章句が説くこと
詩経斉夫婦戒め朝廷
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