詩経 / 国風・鄭風・遵大路
《遵大路》,思君子也。莊公失道,君子去之,國人思望焉。 遵大路兮,摻執子之袪兮!無我惡兮,不寁故也。 遵大路兮,摻執子之手兮!無我魗兮,不寁好也!
新字:《遵大路》,思君子也。荘公失道,君子去之,国人思望焉。 遵大路兮,摻執子之袪兮!無我悪兮,不寁故也。 遵大路兮,摻執子之手兮!無我魗兮,不寁好也!
書き下し
遵大路(じゅんたいろ)は、君子を思うなり。荘公道を失い、君子これを去り、国人思い望むなり。 大路に遵(したが)い、摻(さん)として子(し)の袪(きょ)を執る。我を悪(にく)む無かれ、故(ふる)きを寁(すみ)やかにせざれ。 大路に遵い、摻として子の手を執る。我を魗(にく)む無かれ、好(よしみ)を寁やかにせざれ。
現代語訳
「遵大路」の詩は、君子を慕ったものである。鄭の荘公が道を失ったので、君子たちは国を去り、国の人々はその人たちを慕い、戻ってくれることを望んだのである。 大きな道をたどって追いかけ、あなたの袖口をしっかりとつかむ。私を嫌わないでほしい、昔からのよしみをそんなに急に断ち切らないでほしい。 大きな道をたどって追いかけ、あなたの手をしっかりとつかむ。私を疎まないでほしい、これまでの親しみをそんなに急に断ち切らないでほしい。
解説
大きな道を去ってゆく人を追いかけ、その袖や手をつかんで、私を嫌わないで、昔からの縁を急に断ち切らないで、と引き留める短い詩である。毛詩序は、鄭の荘公が道を失ったので君子たちが国を去り、国の人々がそれを引き留めようとした歌とする。これに対し朱熹は、女性が自分を捨てて去ろうとする男を引き留める淫奔の歌と読み直した。詩の言葉は短く、事情は何も語られないが、袖から手へと、つかむ場所がより強く近いものに移っていくところに、引き留める者の必死さがにじむ。去る人を責めるのではなく、「急がないで」と縁の断ち切り方を問題にしている点も印象深い。別れそのものは避けられなくても、長い関係を一瞬で断ち切られることの痛みは大きい。人との別れ方には、それまでの関係への敬意が表れるものである。
この章句が説くこと
詩経別れ引き留め鄭君子
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