詩経 / 国風・召南・小星
《小星》,惠及下也。夫人無妒忌之行,惠及賤妾,進御於君,知其命有貴賤,能盡其心矣。 嘒彼小星,三五在東。肅肅宵征,夙夜在公。寔命不同! 嘒彼小星,維參與昴。肅肅宵征,抱衾與裯。寔命不猶!
新字:《小星》,恵及下也。夫人無妬忌之行,恵及賤妾,進御於君,知其命有貴賤,能尽其心矣。 嘒彼小星,三五在東。粛粛宵征,夙夜在公。寔命不同! 嘒彼小星,維参与昴。粛粛宵征,抱衾与裯。寔命不猶!
書き下し
小星は、恵み下に及ぶなり。夫人に妒忌の行い無く、恵み賤妾に及び、君に進御(しんぎょ)す。其の命に貴賤有るを知りて、能く其の心を尽くすなり。 嘒(けい)たる彼の小星、三五、東に在り。粛粛として宵に征(ゆ)き、夙夜公に在り。寔(まこと)に命同じからず。 嘒たる彼の小星、維れ参(しん)と昴(ぼう)と。粛粛として宵に征き、衾(きん)と裯(ちゅう)とを抱く。寔に命猶(おな)じからず。
現代語訳
「小星」の詩は、夫人の恵みが下の者にまで及んだことを歌ったものである。夫人は嫉妬する振る舞いがなく、その恵みが身分の低い妾たちにも及び、妾たちは君主のもとに仕えることができた。妾たちは自分の運命に貴賤の別があることをわきまえ、心を尽くして仕えたのである。 かすかにまたたくあの小さな星、三つ五つと東の空にある。慌ただしく夜道を行き、朝早くから夜遅くまで公のもとに仕える。まことに運命は人それぞれ違うものだ。 かすかにまたたくあの小さな星、参(オリオン座の三つ星)と昴(すばる)。慌ただしく夜道を行き、掛け布団と寝具を抱えていく。まことに運命は人と同じではない。
解説
夜空にかすかにまたたく小さな星を見上げながら、夜道を急ぎ、朝早くから夜遅くまで公の務めに追われる者が、「寔に命同じからず」と自らの運命を嘆く短い詩である。毛詩序はこれを、夫人が嫉妬せず恵みを下に及ぼしたので、妾たちが夜に君主のもとへ進み、身分の違いをわきまえて心を尽くした詩と読んだ。第二章の「衾と裯とを抱く」を、寝具を抱えて君のもとへ通う妾の姿と解したのである。これに対し、近代以降には、夜を日に継いで公務に駆け回る下級の役人の嘆きの歌と読む説も広く行われている。後世、「小星」は妾を指す雅語としても使われるようになった。いずれに読むにせよ、満天の星の下で、自分の立場のままならなさを見つめる心がそこにある。与えられた境遇を受け入れつつも、それを嘆く言葉を持てることは、人にとって一つの救いである。
この章句が説くこと
詩経星運命召南妾
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