詩経 / 国風・周南・兔罝
《兔罝》,后妃之化也。《關雎》之化行,則莫不好德,賢人眾多也。 肅肅兔罝,椓之丁丁。赳赳武夫,公侯干城。 肅肅兔罝,施于中逵。赳赳武夫,公侯好仇。 肅肅兔罝,施于中林。赳赳武夫,公侯腹心。
新字:《兔罝》,后妃之化也。《関雎》之化行,則莫不好徳,賢人衆多也。 粛粛兔罝,椓之丁丁。赳赳武夫,公侯干城。 粛粛兔罝,施于中逵。赳赳武夫,公侯好仇。 粛粛兔罝,施于中林。赳赳武夫,公侯腹心。
書き下し
兎罝(としゃ)は、后妃の化なり。関雎の化行わるれば、則ち徳を好まざる莫く、賢人衆多なるなり。 粛粛(しゅくしゅく)たる兎罝、これを椓(う)つこと丁丁(とうとう)たり。赳赳(きゅうきゅう)たる武夫は、公侯の干城(かんじょう)。 粛粛たる兎罝、中逵(ちゅうき)に施す。赳赳たる武夫は、公侯の好仇(こうきゅう)。 粛粛たる兎罝、中林に施す。赳赳たる武夫は、公侯の腹心。
現代語訳
「兎罝」の詩は、后妃の感化を歌ったものである。「関雎」に表された感化が行きわたると、誰もが徳を好むようになり、賢者が数多く現れる。 きっちりと張ったうさぎの網、その杭を打つ音がトントンと響く。勇ましく雄々しい武人は、殿さまを守る盾であり城である。 きっちりと張ったうさぎの網を、四方に通じる道の辻に仕掛ける。勇ましく雄々しい武人は、殿さまのよき相棒である。 きっちりと張ったうさぎの網を、林の奥に仕掛ける。勇ましく雄々しい武人は、殿さまの腹心である。
解説
うさぎを捕る網を張り、杭を打ち込む狩人の姿を歌い起こし、その勇ましい男たちを「公侯の干城」、主君を守る盾や城になぞらえてたたえる詩である。毛詩序は、関雎に表れた后妃の感化が広まった結果、網を張るような身分の低い者の中にまで賢人が多く現れたのだと読んだ。詩そのものからは、狩りの場で働く若者のたくましさを、主君の護りとして頼もしく思う讃歌として読める。「干城」は後世、国家を守る武人や重臣を指す語となり、「腹心」も信頼して事を任せる臣下を意味する言葉として今に残っている。『左伝』成公十二年には、この詩を引いて、治まった世の武人は民を守る干城となるが、乱れた世では君主の私欲を遂げる腹心となる、と論じた一節がある。有能な人材は、目立たない持ち場にこそ埋もれていることがある。人を見る目の大切さを思わせる一篇である。
この章句が説くこと
詩経武人干城腹心賢人
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