詩経 / 国風・周南・螽斯
《螽斯》,后妃子孫眾多也。言若螽斯不妬忌,則子孫眾多也。 螽斯羽,詵詵兮。宜爾子孫,振振兮。 螽斯羽,薨薨兮。宜爾子孫,繩繩兮。 螽斯羽,揖揖兮。宜爾子孫,蟄蟄兮。
新字:《螽斯》,后妃子孫衆多也。言若螽斯不妬忌,則子孫衆多也。 螽斯羽,詵詵兮。宜爾子孫,振振兮。 螽斯羽,薨薨兮。宜爾子孫,縄縄兮。 螽斯羽,揖揖兮。宜爾子孫,蟄蟄兮。
書き下し
螽斯(しゅうし)は、后妃の子孫衆多なるなり。螽斯の妬忌(とき)せざるが若(ごと)くなれば、則ち子孫衆多なるを言うなり。 螽斯の羽、詵詵(しんしん)たり。宜(うべ)なり爾(なんじ)の子孫、振振(しんしん)たり。 螽斯の羽、薨薨(こうこう)たり。宜なり爾の子孫、縄縄(じょうじょう)たり。 螽斯の羽、揖揖(しゅうしゅう)たり。宜なり爾の子孫、蟄蟄(ちつちつ)たり。
現代語訳
「螽斯」の詩は、后妃の子孫が多いことを歌ったものである。いなごが互いにねたみ合わないように、后妃が嫉妬しなければ、子孫が多く栄えることをいう。 いなごの羽が、群がって音を立てる。なるほどお前の子や孫は、盛んに栄えることだろう。 いなごの羽が、ぶんぶんと響き合う。なるほどお前の子や孫は、絶えることなく続くことだろう。 いなごの羽が、寄り集まってひしめく。なるほどお前の子や孫は、むつまじく群れ集うことだろう。
解説
群がって飛ぶいなご(螽斯)の羽音を歌い、それになぞらえて子孫の繁栄を祝う三章の短い詩である。現代の感覚では虫の群れを祝いに用いるのは意外だが、一度に多くの卵を産み群れをなす虫は、古代には多産と繁栄の象徴であった。毛詩序は、いなごが互いにねたまず群れて暮らすように、后妃が嫉妬しなければ多くの子孫に恵まれると読み、ここでも后妃の徳に結びつけた。朱熹『詩集伝』も妾たちが后妃をたたえる比の詩とするが、詩そのものは家の繁栄を願う素朴な祝い歌として読める。「詵詵」「薨薨」「揖揖」という擬態語が、羽音のにぎわいを耳に響かせる。子孫が「縄縄」、縄のように絶えず続くことを願う気持ちは、家を継ぐことを重んじた古代社会の切実な願いであった。家族が続いていくことを願う心は、形を変えて今も変わらない。
この章句が説くこと
詩経子孫繁栄祝福比
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