史記 / 日者列伝
五行家曰可,堪輿家曰不可,建除家曰不吉,叢辰家曰大凶,歷家曰小凶,天人家曰小吉,太一家曰大吉。辯訟不決,以狀聞。制曰:『避諸死忌,以五行爲主。』」人取於五行者也。
新字:五行家曰可,堪輿家曰不可,建除家曰不吉,叢辰家曰大凶,歴家曰小凶,天人家曰小吉,太一家曰大吉。弁訟不決,以状聞。制曰:『避諸死忌,以五行為主。』」人取於五行者也。
書き下し
五行家は可と曰ひ、堪輿家は不可と曰ひ、建除家は不吉と曰ひ、叢辰家は大凶と曰ひ、暦家は小凶と曰ひ、天人家は小吉と曰ひ、太一家は大吉と曰ふ。弁訟して決せず、状を以て聞す。制して曰く、『諸々の死忌を避け、五行を以て主と為せ』と」と。人は五行に取る者なり。
現代語訳
五行家はよいと言い、堪輿家(かんよか、風水の占い)はいけないと言い、建除家(けんじょか、暦の吉凶の占い)は不吉だと言い、叢辰家(そうしんか)は大凶だと言い、暦家は小凶だと言い、天人家は小吉だと言い、太一家は大吉だと言った。言い争って決まらなかったので、その様子を奏上した。すると帝は詔して『もろもろの死に関わる忌み日を避け、五行家の説を主とせよ』と言った」。こうして人々は五行の説を採るようになったのである。
解説
日者列伝の結びで、褚少孫が同僚から聞いた武帝の逸話です。ある日に嫁を迎えてよいかを七つの占いの流派に尋ねたところ、答えは大吉から大凶までばらばらでした。議論がまとまらず、武帝は死に関わる忌みを避けたうえで五行家の説を主とせよと裁定し、以後、世の人は五行説に従うようになったといいます。前の段まで占いの価値を説いていた日者列伝が、専門家同士の意見が真っ向から食い違う場面で閉じられるのは興味深いところです。占いの正しさよりも、最後は誰かが基準を決めなければならないという現実が描かれています。専門家の意見が割れたとき、全員の同意を待っていては何も決まりません。最低限避けるべき危険を押さえたうえで、よりどころとする基準を一つ定めて進む。それが決断する者の役目なのです。
関連する章句
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史記 亀策列伝君子謂ふ、夫れ卜筮を軽んじ、神明を無みする者は、悖なり。人道に背きて、禎祥を信ずる者は、鬼神も其の正を得ず。故に書に稽疑を建つ、五謀にして卜筮其の二に居り、五占其の多きに従ふ、明らかに有りて専らにせざるの道なり。
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史記 日者列伝古より命を受けて王たる、王者の興るや、何ぞ嘗て卜筮を以て天命に決せざらんや。其の周に於いて尤も甚だしく、秦に及びて見る可し。代王の入るや、卜者に任ず。太卜の起こるは、漢興るに由りて有り。司馬季主は楚の人なり。長安の東市に卜す。宋忠中大夫と為り、賈誼博士と為る。同日俱に出でて洗沐し、相従ひて論議し、易の先王聖人の道術を誦し、人情を究め遍くし、相視て嘆ず。賈誼曰く、「吾聞く、古の聖人は、朝廷に居らずんば、必ず卜医の中に在りと。今、吾已に三公九卿朝士大夫を見るに、皆知る可し。試みに之を卜数の中に之きて以て采を観ん」と。二人即ち輿を同じくして市に之き、卜肆の中に游ぶ。天新たに雨ふり、道に人少なし。司馬季主間坐し、弟子三四人侍し、方に天地の道、日月の運、陰陽吉凶の本を弁ず。二大夫再拝して謁す。司馬季主其の状貌を視るに、知有る者に類するが如し。即ち之を礼し、弟子をして之を延きて坐せしむ。坐定まり、司馬季主復た前語を理め、天地の終始、日月星辰の紀を分別し、仁義の際を差次し、吉凶の符を列し、語ること数千言、理に順はざる莫し。宋忠・賈誼瞿然として悟り、纓を猟め襟を正して危坐して曰く、「吾、先生の状を望み、先生の辞を聴くに、小子窃かに世を観るに、未だ嘗て見ざるなり。今何ぞ居の卑しく、何ぞ行ひの汚れたる」と。司馬季主腹を捧げて大笑して曰く、「大夫を観るに道術有る者に類す。今何ぞ言の陋しく、何ぞ辞の野なるや。今、夫子の賢とする所の者は何ぞや。高しとする所の者は誰ぞや。今何を以て長者を卑汚とする」と。
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史記 日者列伝太史公曰く、古者、卜人の載せざる所以の者は、多く篇に見えず。司馬季主に至るに及びて、余志して之を著す。褚先生曰く、臣郎為りし時、長安の中に游観し、卜筮の賢大夫を見る。其の起居行歩を観るに、坐起自ら動き、誓ひて其の衣冠を正して郷人に当たる。君子の風有り。性好く解する婦の来たりて卜するを見るに、之に対して顔色厳振し、未だ嘗て歯を見して笑はず。古より以来、賢者の世を避くるに、止まりて沢に舞ふに居る者有り、民間に居りて口を閉ぢて言はざる者有り、卜筮の間に隠居して以て身を全うする者有り。夫れ司馬季主は楚の賢大夫なり。長安に游学し、易経に通じ、黄帝・老子を術(まな)び、博聞遠見なり。其の二大夫貴人に対する談言を観るに、古の明王聖人の道を称引す。固より浅聞小数の能に非ず。卜筮を以て名声を千里に立つる者に及びては、各々往往にして在り。伝に曰く、「富を上と為し、貴之に次ぐ。既に貴ければ各々一伎能を学びて其の身を立つ」と。黄直は大夫なり。陳君夫は婦人なり。馬を相するを以て名を天下に立つ。斉の張仲・曲成侯は善く撃刺するを以て剣を用ふるを学び、名を天下に立つ。留長孺は彘を相するを以て名を立つ。滎陽の褚氏は牛を相するを以て名を立つ。能く伎能を以て名を立つる者甚だ多く、皆高世絶人の風有り。何ぞ言ふに勝ふ可けんや。故に曰く、「其の地に非ざれば、之を樹うるも生ぜず。其の意に非ざれば、之を教ふるも成らず」と。夫れ家の子孫を教ふるは、当に其の好む所以を視るべし。好みて苟くも生活の道を含まば、因りて之を成す。故に曰く、「宅を制し子に命ずるは、以て士を観るに足る。子に処る所有らば、賢人と謂ふ可し」と。臣郎為りし時、太卜の待詔して郎為る者と署を同じくす。言ひて曰く、「孝武帝の時、占家を聚会して之に問ふ、某日婦を取る可きか」と。
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史記 亀策列伝百僚蕩恐し、皆亀策能く言ふと曰ふ。後に事覚れ姦窮まり、亦三族を誅せらる。夫れ策を摓(かぞ)へ数を定め、亀を灼きて兆を観るに、変化窮まり無し。是を以て賢を択びて占を用ふ。聖人の事を重んずる者と謂ふ可きか。周公三亀を卜して、武王瘳ゆる有り。紂暴虐を為して、元亀占はず。晋の文、将に襄王の位を定めんとして、卜して黄帝の兆を得、卒に彤弓の命を受く。献公驪姫の色を貪り、卜して兆に口象有り、其の禍竟に五世に流る。楚の霊、将に周室に背かんとし、卜して亀逆らひ、終に乾谿の敗を被る。兆応は内に信誠にして、時人の明察は之を外に見る。両合する者と謂はざる可けんや。
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史記 亀策列伝蛮夷氐羌は君臣の序無しと雖も、亦疑ひを決するの卜有り。或いは金石を以てし、或いは草木を以てし、国俗を同じくせず。然れども皆以て戦伐攻撃し、兵を推して勝ちを求むる可く、各々其の神を信じて、以て来事を知る。略々聞く、夏殷の卜せんと欲する者は、乃ち蓍亀を取り、已めば則ち之を棄て去る。以為へらく、亀は蔵すれば則ち霊ならず、蓍は久しければ則ち神ならずと。周室の卜官に至りては、常に蓍亀を宝蔵す。又其の大小先後、各々尚ぶ所有るも、其の帰を要すれば等しきのみ。或いは以為へらく、聖王事に遭ひて定めざる無く、疑ひを決して見ざる無し。其の稽神求問の道を設くる者は、以為へらく、後世衰微し、愚は智を師とせず、人各々自ら安んじ、化分かれて百室と為り、道散じて垠無し。故に之を至微に推し帰し、精神に要絜するなりと。或いは以為へらく、昆虫の長ずる所は、聖人も与に争ふ能はず。其の吉凶に処し、然否を別つこと、多く人に中ると。高祖の時に至り、秦の太卜の官に因る。天下始めて定まり、兵革未だ息まず。孝恵の国を享くること日少なく、呂后は女主、孝文・孝景は掌故に因襲し、未だ講試するに遑あらず。父子官を疇(つ)ぎ、世々相伝ふと雖も、其の精微深妙は、遺失する所多し。今上即位するに至り、博く芸能の路を開き、悉く百端の学を延き、一伎に通ずるの士も咸自ら効すを得。絶倫超奇なる者を右と為し、阿私する所無し。数年の間に、太卜大いに集まる。会々上、匈奴を撃ち、西のかた大宛を攘ひ、南のかた百越を収めんと欲す。卜筮至りて預め表象を見、先づ其の利を図る。猛将の鋒を推し節を執り、勝ちを彼に獲るに及び、而して蓍亀時日も亦此に力有り。上尤も意を加へ、賞賜或いは数千万に至る。丘子明の属の如きは、富溢れ貴寵ありて、朝廷を傾く。卜筮を以て蠱道を射るに至り、巫蠱時に或いは頗る中る。素より眥睚の快からざる有れば、公に因りて誅を行ひ、意を恣にして傷つくる所、以て族を破り門を滅ぼす者、勝げて数ふ可からず。
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史記 日者列伝「述べて作らざるは、君子の義なり。今、夫の卜者は、必ず天地に法り、四時に象り、仁義に順ひ、策を分かち卦を定め、式を旋らし棋を正し、然る後に天地の利害、事の成敗を言ふ。昔、先王の国家を定むるや、必ず先づ亀策日月にして、而る後に乃ち敢へて代はる。時日を正して、乃ち後に家に入る。子を産めば必ず先づ吉凶を占ひ、後に乃ち之を有つ。伏羲の八卦を作り、周の文王の三百八十四爻を演べてより、天下治まる。越王句践、文王の八卦に放ひて以て敵国を破り、天下に覇たり。是に由りて之を言へば、卜筮何の負ふこと有らんや。且つ夫れ卜筮する者は、埽除して坐を設け、其の冠帯を正し、然る後に乃ち事を言ふ。此れ礼有るなり。言ひて鬼神或いは以て饗け、忠臣以て其の上に事へ、孝子以て其の親を養ひ、慈父以て其の子を畜ふ。此れ徳有る者なり。而して義を以て数十百銭を置けば、病者或いは以て愈え、且に死せんとするも或いは以て生き、患ひ或いは以て免れ、事或いは以て成り、子を嫁し婦を娶るも或いは以て生を養ふ。此の徳為る、豈に直だ数十百銭のみならんや。此れ夫の老子の所謂『上徳は徳とせず、是を以て徳有り』なり。
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