史記 / 袁盎鼂錯列伝
宦者趙同以數幸,常害袁盎,袁盎患之。盎兄子種為常侍騎,持節夾乘,說盎曰:「君與鬬,廷辱之,使其毀不用。」孝文帝出,趙同參乘,袁盎伏車前曰:「臣聞天子所與共六尺輿者,皆天下豪英。今漢雖乏人,陛下獨奈何與刀鋸餘人載!」於是上笑,下趙同。趙同泣下車。
新字:宦者趙同以数幸,常害袁盎,袁盎患之。盎兄子種為常侍騎,持節夾乗,説盎曰:「君与闘,廷辱之,使其毀不用。」孝文帝出,趙同参乗,袁盎伏車前曰:「臣聞天子所与共六尺輿者,皆天下豪英。今漢雖乏人,陛下独奈何与刀鋸余人載!」於是上笑,下趙同。趙同泣下車。
書き下し
宦者趙同、数(しばしば)幸せらるるを以て、常に袁盎を害す。袁盎之を患ふ。盎の兄の子種、常侍騎と為り、節を持して乗を夾む。盎に説きて曰く、「君之と鬭ひ、廷に之を辱めて、其の毀りをして用ひられざらしめよ」と。孝文帝出づるに、趙同参乗す。袁盎車前に伏して曰く、「臣聞く、天子の与に六尺の輿を共にする所の者は、皆天下の豪英なりと。今漢人に乏しと雖も、陛下独り奈何ぞ刀鋸の余人と載するや」と。是に於て上笑ひ、趙同を下す。趙同泣きて車を下る。
現代語訳
宦官の趙同は、たびたび寵愛を受けていることを笠に着て、いつも袁盎を陥れようとしていた。袁盎はこれに悩んでいた。袁盎の兄の子の袁種は常侍騎(皇帝の騎馬の侍従)となり、節を持って皇帝の車の脇を固めていたが、袁盎に説いて言った。「あなたは彼と争い、朝廷で恥をかかせて、彼の中傷が用いられないようにすべきだ。」孝文帝が外出するとき、趙同が同乗した。袁盎は車の前にひれ伏して言った。「天子とともに六尺の車に乗る者は、皆天下の英傑だと聞いている。いま漢に人材が乏しいとはいえ、陛下はどうして刑罰で身を損なった者などと同じ車に乗られるのか。」すると文帝は笑って、趙同を車から降ろした。趙同は泣きながら車を降りた。
解説
関連する章句
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史記 袁盎鼂錯列伝袁盎(えんおう)は楚人なり、字は絲。父は故(もと)群盗たり、徙りて安陵に処る。高后の時、盎嘗て呂禄の舎人と為る。孝文帝即位するに及び、盎の兄噲、盎を任じて中郎と為す。
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史記 袁盎鼂錯列伝盎素より鼂錯(ちょうそ)を好まず。鼂錯の居坐する所、盎去り、盎坐すれば、錯も亦去る。両人未だ嘗て堂を同じくして語らず。孝文帝崩じ、孝景帝即位するに及び、鼂錯御史大夫と為り、吏をして袁盎の呉王の財物を受くるを案ぜしめ、罪に抵(あ)て、詔して赦して以て庶人と為す。呉楚反す。聞こゆるや、鼂錯丞史に謂ひて曰く、「夫れ袁盎多く呉王の金銭を受け、専ら為に蔽匿し、反せずと言ふ。今果して反す、請ひて盎を治めんと欲す、宜しく計謀を知るべし」と。丞史曰く、「事未だ発せざるに、之を治むれば絶つこと有り。今兵西に郷かふ、之を治むるも何の益かあらん。且つ袁盎宜しく謀有るべからず」と。鼂錯猶与して未だ決せず。人袁盎に告ぐる者有り。袁盎恐れ、夜竇嬰に見え、為に呉の反する所以の者を言ひ、上の前に至りて口づから状を対へんと願ふ。竇嬰入りて上に言ひ、上乃ち袁盎を召して入れ見ゆ。鼂錯前に在り。盎の人を辟け閒を賜はんことを請ふに及び、錯去り、固より恨むこと甚だし。袁盎具さに呉の反する所以の状を言ひ、錯の故を以てなれば、独り急ぎ錯を斬りて以て呉に謝せば、呉の兵乃ち罷むべしとす。其の語具さに呉の事の中に在り。袁盎をして太常と為し、竇嬰を大将軍と為す。両人素より相与に善し。呉の反するに逮(およ)び、諸陵の長者、長安中の賢大夫争ひて両人に附き、車の随ふ者日に数百乗。鼂錯已に誅せらるるに及び、袁盎太常を以て呉に使ひす。呉王将と為さんと欲するも、肯へてせず。之を殺さんと欲し、一都尉をして五百人を以て盎を軍中に囲守せしむ。袁盎其の呉の相たりし時より、(嘗)従史の嘗て盎の侍児を盗愛する有り。盎之を知るも、泄らさず、之を遇すること故の如し。人従史に告ぐる有り、「君爾の侍者と通ずるを知る」と言ふ。乃ち亡げ帰る。袁盎駆りて自ら之を追ひ、遂に侍者を以て之に賜ひ、復た従史と為す。
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史記 袁盎鼂錯列伝袁盎の呉に使ひして守らるるに及び、従史適(たまたま)盎を守る校尉司馬と為る。乃ち悉く其の装齎を以て二石の醇醪を置ふ。会(たまたま)天寒く、士卒飢渇し、酒を飲みて酔ひ、西南の陬の卒皆臥す。司馬夜袁盎を引きて起たしめて曰く、「君以て去るべし、呉王旦日君を斬らんと期す」と。盎信ぜず、曰く、「公は何為る者ぞ」と。司馬曰く、「臣は故の従史にして君の侍児を盗みし者なり」と。盎乃ち驚き謝して曰く、「公幸ひに親有り、吾以て公を累はすに足らず」と。司馬曰く、「君弟(ただ)去れ、臣も亦且に亡げて、吾が親を辟けんとす、君何ぞ患へん」と。乃ち刀を以て張(とばり)を決し、道して酔卒の隧より直ちに出づ。司馬与に分かれて背く。袁盎節の毛を解きて之を懐にし、杖つきて、歩行すること七八里、明けて、梁の騎を見る。騎馳せ去り、遂に帰りて報ず。呉楚已に破れ、上更めて元王の子平陸侯礼を以て楚王と為し、袁盎を楚の相と為す。嘗て上書して言ふ所有るも、用ひられず。袁盎病みて免ぜられ家に居り、閭里と浮沈し、相随ひて行き、鶏を闘はせ狗を走らす。雒陽の劇孟嘗て袁盎に過る、盎善く之を待す。安陵の富人に盎に謂ふ者有りて曰く、「吾聞く劇孟は博徒なりと、将軍何ぞ自ら之に通ずる」と。盎曰く、「劇孟は博徒なりと雖も、然れども母死して、客の葬を送る車千余乗、此れ亦人に過ぐる者有り。且つ緩急は人の有る所なり。夫れ一旦急有りて門を叩かば、親を以て解と為さず、存亡を以て辞と為さず、天下の望む所の者は、独り季心・劇孟のみ。今公常に数騎を従ふるも、一旦緩急有らば、寧んぞ恃むに足らんや」と。富人を罵り、与に通ぜず。諸公之を聞き、皆袁盎を多とす。袁盎家居すと雖も、景帝時時人をして籌策を問はしむ。梁王嗣と為らんことを求めんと欲す。袁盎進みて説き、其の後語塞がる。梁王此を以て盎を怨み、曾て人をして盎を刺さしむ。刺す者関中に至り、袁盎を問ふに、諸君之を誉めて皆口を容れず。乃ち袁盎に見えて曰く、「臣梁王の金を受けて来たりて君を刺さんとす。君は長者なり、君を刺すに忍びず。
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説苑・復恩孝景の時、呉楚反す、袁盎太常を以て呉に使ひす、呉王将たらしめんと欲するも肯んぜず、之を殺さんと欲し、一都尉をして五百人を以て盎を囲守せしむ、盎呉の相為りし時、従史盎の侍児と私通す、盎之を知りて泄らさず、之に遇すること故人の如し、告ぐる者従史に有り、従史懼れて亡げ帰る、盎自ら之を追ひ、遂に侍児を以て之に賄す、復た従史と為る。盎の呉に使ひして囲守せらるるに及び、従史適々盎を守るの校司馬為り、夜盎を引きて起して曰く、「君以て去るべし、呉王旦日を期して君を斬らんとす」と。盎信ぜず、曰く、「公何為る者ぞや」と。司馬曰く、「臣は故に君の従史にして侍児を盗みし者なり」と。盎乃ち敬みて対へて曰く、「公親有り、吾以て公に累はすに足らず」と。司馬曰く、「君去れ、臣も亦た且に亡げて避けんとす、吾君に親しむ、何ぞ患へん」と。乃ち刀を以て帳を決り、徒卒を率ゐて道より出で、皆をして去らしめ、盎遂に帰り報ず。
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史記 袁盎鼂錯列伝上上林に幸し、皇后・慎夫人従ふ。其の禁中に在るや、常に席を同じくして坐す。坐するに及び、郎署長席を布くに、袁盎慎夫人の坐を引き卻く。慎夫人怒り、坐するを肯んぜず。上も亦た怒り、起ちて禁中に入る。盎因りて前みて説きて曰く、「臣聞く、尊卑序有れば則ち上下和すと。今陛下既に已に后を立つ、慎夫人は乃ち妾なり、妾主豈だ与に坐を同じくす可けんや。適ま尊卑を失ふ所以なり。且つ陛下之を幸せば、即ち厚く之に賜へ。陛下の慎夫人の為にする所以、適ま之を禍する所以なり。陛下独り人彘を見ざるか」と。是に於て上乃ち説び、召して慎夫人に語る。慎夫人盎に金五十斤を賜ふ。
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史記 袁盎鼂錯列伝然れども袁盎も亦数(しばしば)直諫するを以て、久しく中に居るを得ず、調されて隴西の都尉と為る。士卒を仁愛し、士卒皆争ひて為に死す。遷りて斉の相と為る。徙りて呉の相と為る。辞して行くに、種盎に謂ひて曰く、「呉王驕ること日久しく、国に姦多し。今苟も劾治せんと欲せば、彼上書して君を告げずんば、即ち利剣もて君を刺さん。南方は卑湿なり、君能く日に飲み、何もする毋く、時に王に説きて反する毋かれと曰ふのみ。此の如くせば幸ひに脱るるを得ん」と。盎種の計を用ひ、呉王厚く盎を遇す。盎告帰し、道に丞相申屠嘉に逢ひ、車を下りて拝謁す。丞相車上より袁盎に謝す。袁盎還りて、其の吏に愧ぢ、乃ち丞相の舎に之きて上謁し、丞相に見えんことを求む。丞相良久しくして之を見る。盎因りて跪きて曰く、「願はくは閒を請はん」と。丞相曰く、「使君の言ふ所公事ならば、曹に之きて長史掾と議せよ、吾且に之を奏せんとす。即し私ならば、吾私語を受けず」と。袁盎即ち跪きて説きて曰く、「君丞相と為り、自ら度るに陳平・絳侯と孰れぞ」と。丞相曰く、「吾如かず」と。袁盎曰く、「善し、君即ち自ら如かずと謂ふ。夫れ陳平・絳侯は高帝を輔翼して天下を定め、将相と為りて、諸呂を誅し、劉氏を存す。君は乃ち材官蹶張(けっちょう)為りて、遷りて隊率と為り、功を積みて淮陽の守に至る。奇計攻城野戦の功有るに非ず。且つ陛下代より来たり、朝する毎に、郎官書疏を上れば、未だ嘗て輦を止めて其の言を受けずんばあらず。言用ふべからざれば之を置き、言受くべければ之を採り、未だ嘗て善しと称せずんばあらず。何ぞや。則ち以て天下の賢士大夫を致さんと欲すればなり。上は日に聞かざる所を聞き、知らざる所を明らかにし、日に益ます聖智なり。君今自ら天下の口を閉鉗して日に益ます愚なり。夫れ聖主を以て愚相を責む、君禍を受くること久しからず」と。丞相乃ち再拝して曰く、「嘉は鄙野の人、乃ち知らず、将軍幸ひに教へよ」と。引き入れて与に坐し、上客と為す。
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