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史記 / 蘇秦列伝

「兵傷於譙石,而遇敗於陽馬,而重魏,則以葉、蔡委於魏。已得講於趙,則劫魏,不為割。困則使太后弟穰侯為和,嬴則兼欺舅與母。「適燕者曰『以膠東』,適趙者曰『以濟西』,適魏者曰『以葉、蔡』,適楚者曰『以塞鄳阸』,適齊者曰『以宋』,此必令言如循環,用兵如刺蜚,母不能制,舅不能約。「龍賈之戰,岸門之戰,封陵之戰,高商之戰,趙莊之戰,秦之所殺三晉之民數百萬,今其生者皆死秦之孤也。西河之外,上雒之地,三川晉國之禍,三晉之半,秦禍如此其大也。而燕、趙之秦者,皆以爭事秦說其主,此臣之所大患也。」燕昭王不行。蘇代復重於燕。

新字:「兵傷於譙石,而遇敗於陽馬,而重魏,則以葉、蔡委於魏。已得講於趙,則劫魏,不為割。困則使太后弟穰侯為和,嬴則兼欺舅与母。「適燕者曰『以膠東』,適趙者曰『以済西』,適魏者曰『以葉、蔡』,適楚者曰『以塞鄳阸』,適斉者曰『以宋』,此必令言如循環,用兵如刺蜚,母不能制,舅不能約。「竜賈之戦,岸門之戦,封陵之戦,高商之戦,趙荘之戦,秦之所殺三晋之民数百万,今其生者皆死秦之孤也。西河之外,上雒之地,三川晋国之禍,三晋之半,秦禍如此其大也。而燕、趙之秦者,皆以争事秦説其主,此臣之所大患也。」燕昭王不行。蘇代復重於燕。

書き下し

兵譙石に傷つき、而して敗を陽馬に遇ひ、而して魏を重んず、則ち葉・蔡を以て魏に委ぬ。已に講を趙に得れば、則ち魏を劫し、為に割かず。困しめば則ち太后の弟穣侯をして和を為さしめ、嬴てば則ち兼ねて舅と母とを欺く。燕に適く者には『膠東を以てす』と曰ひ、趙に適く者には『済西を以てす』と曰ひ、魏に適く者には『葉・蔡を以てす』と曰ひ、楚に適く者には『鄳阸を塞ぐを以てす』と曰ひ、斉に適く者には『宋を以てす』と曰ふ、此れ必ず言をして循環するが如く、兵を用ふること蜚を刺すが如くならしむ、母も制する能はず、舅も約する能はず。竜賈の戦ひ、岸門の戦ひ、封陵の戦ひ、高商の戦ひ、趙荘の戦ひ、秦の殺す所の三晋の民数百万、今其の生くる者は皆秦に死せし者の孤なり。西河の外、上雒の地、三川晋国の禍、三晋の半ば、秦の禍此くの如く其れ大なり。而して燕・趙の秦に之く者は、皆争ひて秦に事ふるを以て其の主に説く、此れ臣の大いに患ふる所なり」と。燕の昭王行かず。蘇代復た燕に重んぜらる。

現代語訳

(蘇代は続けた。)「秦の兵が譙石で傷つき、陽馬で敗れると、今度は魏を重んじ、葉と蔡を魏に任せた。ところが趙と和睦すると、今度は魏を脅して、約束した土地を割き与えなかった。苦しくなると太后の弟の穣侯(じょうこう)に和睦をまとめさせ、勝つと叔父(穣侯)と母(太后)までも欺いた。燕へ行く使者には『膠東を与える』と言い、趙へ行く使者には『済西を与える』と言い、魏へ行く使者には『葉と蔡を与える』と言い、楚へ行く使者には『鄳阸を塞いでやる』と言い、斉へ行く使者には『宋を与える』と言う。こうして秦の言葉は輪のようにぐるぐる回り、兵の使い方は飛ぶ虫を刺すように素早く、母も抑えることができず、叔父も約束させることができない。竜賈の戦い、岸門の戦い、封陵の戦い、高商の戦い、趙荘の戦いで、秦が殺した韓・魏・趙の三晋の民は数百万に上り、いま生き残っている者はみな秦に殺された者の遺児である。西河の外、上雒の地、三川と晋の国の災いで、三晋の半分が失われた。秦の災いはこれほど大きい。それなのに燕や趙から秦へ行く者たちは、皆争って秦に仕えるよう自分の主君に説いている。これこそわたしが大いに憂えることである。」燕の昭王は秦へ行かなかった。蘇代は再び燕で重んじられた。

解説

蘇代の警告の結びです。秦は苦しい時には土地を約束して味方を集め、形勢がよくなると約束を反故にし、和睦を取り持った太后や叔父の穣侯さえ欺きます。燕には膠東、趙には済西、魏には葉と蔡、斉には宋と、相手ごとに違う餌を示して言葉を輪のように回し、その間に素早く兵を動かす、と秦の手口をまとめました。そして秦との戦いで三晋の民が数百万殺され、生き残った者はみな遺児だという惨状を挙げ、それでも秦に仕えよと説く者がいることこそ憂うべきだと結びます。燕の昭王はこの警告を受け入れて秦へ行かず、蘇代は再び燕で重用されました。相手ごとに違う約束をする者を見抜き、目先の約束より過去の行いで判断することの大切さを教える段です。

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