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史記 / 宋微子世家

「稽疑:擇建立卜筮人。乃命卜筮,曰雨,曰濟,曰涕,曰霧,曰克,曰貞,曰悔,凡七。卜五,占之用二,衍貣。立時人爲卜筮,三人占則從二人之言。女則有大疑,謀及女心,謀及卿士,謀及庶人,謀及卜筮。女則從,龜從,筮從,卿士從,庶民從,是之謂大同,而身其康彊,而子孫其逢吉。女則從,龜從,筮從,卿士逆,庶民逆,吉。卿士從,龜從,筮從,女則逆,庶民逆,吉。庶民從,龜從,筮從,女則逆,卿士逆,吉。女則從,龜從,筮逆,卿士逆,庶民逆,作內吉,作外凶。龜筮共違于人,用靜吉,用作凶。「庶徵:曰雨,曰陽,曰奧,曰寒,曰風,曰時。五者來備,各以其序,庶草繁廡。一極備,凶。一極亡,凶。曰休徵:曰肅,時雨若,曰治,時暘若;曰知,時奧若;曰謀,時寒若;曰聖,時風若。曰咎徵:曰狂,常雨若;曰僭,常暘若;曰舒,常奧若;曰急,常寒若;曰霧,常風若。王眚維歲,卿士維月,師尹維日。歲月日時毋易,百穀用成,治用明,畯民用章,家用平康。日月歲時既易,百穀用不成,治用昏不明,畯民用微,家用不寧。庶民維星,星有好風,星有好雨。日月之行,有冬有夏。月之從星,則以風雨。「五福:一曰壽,二曰富,三曰康寧,四曰攸好德,五曰考終命。六極:一曰凶短折,二曰疾,三曰憂,四曰貧,五曰惡,六曰弱。」

新字:「稽疑:択建立卜筮人。乃命卜筮,曰雨,曰済,曰涕,曰霧,曰克,曰貞,曰悔,凡七。卜五,占之用二,衍貣。立時人為卜筮,三人占則従二人之言。女則有大疑,謀及女心,謀及卿士,謀及庶人,謀及卜筮。女則従,亀従,筮従,卿士従,庶民従,是之謂大同,而身其康彊,而子孫其逢吉。女則従,亀従,筮従,卿士逆,庶民逆,吉。卿士従,亀従,筮従,女則逆,庶民逆,吉。庶民従,亀従,筮従,女則逆,卿士逆,吉。女則従,亀従,筮逆,卿士逆,庶民逆,作内吉,作外凶。亀筮共違于人,用静吉,用作凶。「庶徴:曰雨,曰陽,曰奥,曰寒,曰風,曰時。五者来備,各以其序,庶草繁廡。一極備,凶。一極亡,凶。曰休徴:曰粛,時雨若,曰治,時暘若;曰知,時奥若;曰謀,時寒若;曰聖,時風若。曰咎徴:曰狂,常雨若;曰僭,常暘若;曰舒,常奥若;曰急,常寒若;曰霧,常風若。王眚維歳,卿士維月,師尹維日。歳月日時毋易,百穀用成,治用明,畯民用章,家用平康。日月歳時既易,百穀用不成,治用昏不明,畯民用微,家用不寧。庶民維星,星有好風,星有好雨。日月之行,有冬有夏。月之従星,則以風雨。「五福:一曰寿,二曰富,三曰康寧,四曰攸好徳,五曰考終命。六極:一曰凶短折,二曰疾,三曰憂,四曰貧,五曰悪,六曰弱。」

書き下し

稽疑。択びて卜筮の人を建立す。乃ち卜筮に命ず。雨と曰ひ、済と曰ひ、涕と曰ひ、霧と曰ひ、克と曰ひ、貞と曰ひ、悔と曰ふ、凡そ七。卜は五、占は二を用ひ、衍貣(えんとく)す。時の人を立てて卜筮を為さしめ、三人占はば則ち二人の言に従ふ。女則ち大疑有らば、謀ること女の心に及ぼし、謀ること卿士に及ぼし、謀ること庶人に及ぼし、謀ること卜筮に及ぼせ。女則ち従ひ、亀従ひ、筮従ひ、卿士従ひ、庶民従ふ、是を之れ大同と謂ふ。而の身其れ康彊にして、而の子孫其れ吉に逢はん。女則ち従ひ、亀従ひ、筮従ひ、卿士逆らひ、庶民逆らふも、吉。卿士従ひ、亀従ひ、筮従ひ、女則ち逆らひ、庶民逆らふも、吉。庶民従ひ、亀従ひ、筮従ひ、女則ち逆らひ、卿士逆らふも、吉。女則ち従ひ、亀従ひ、筮逆らひ、卿士逆らひ、庶民逆らはば、内に作せば吉、外に作せば凶。亀筮共に人に違はば、静を用ふれば吉、作を用ふれば凶。庶徴。雨と曰ひ、陽と曰ひ、奥と曰ひ、寒と曰ひ、風と曰ひ、時と曰ふ。五者来たりて備はり、各々其の序を以てせば、庶草繁廡す。一極めて備はるも、凶。一極めて亡きも、凶。休徴を曰ふ。粛と曰へば、時雨若(したが)ふ。治と曰へば、時暘若ふ。知と曰へば、時奥若ふ。謀と曰へば、時寒若ふ。聖と曰へば、時風若ふ。咎徴を曰ふ。狂と曰へば、常雨若ふ。僭と曰へば、常暘若ふ。舒と曰へば、常奥若ふ。急と曰へば、常寒若ふ。霧と曰へば、常風若ふ。王の眚(み)るは維れ歳、卿士は維れ月、師尹は維れ日。歳月日時易はること毋くんば、百穀用て成り、治用て明らかに、畯民用て章(あら)はれ、家用て平康なり。日月歳時既に易はらば、百穀用て成らず、治用て昏くして明らかならず、畯民用て微(かく)れ、家用て寧からず。庶民は維れ星、星に風を好むもの有り、星に雨を好むもの有り。日月の行、冬有り夏有り。月の星に従へば、則ち以て風雨あり。五福。一を寿と曰ひ、二を富と曰ひ、三を康寧と曰ひ、四を攸好徳と曰ひ、五を考終命と曰ふ。六極。一を凶短折と曰ひ、二を疾と曰ひ、三を憂と曰ひ、四を貧と曰ひ、五を悪と曰ひ、六を弱と曰ふ」と。

現代語訳

稽疑とは、占いを行う人を選んで任命することである。そして卜(亀甲の占い)と筮(筮竹の占い)を行わせる。卜の兆しには、雨(雨のような形)、済(雨が上がったような形)、涕(ぼんやりした形)、霧(霧のような形)、克(ひびが交わる形)があり、筮の卦には貞(内卦)と悔(外卦)があって、合わせて七つである。卜は五つ、筮の占断には二つを用い、その変化を推し量って判断する。この任にある者を立てて占いをさせ、三人が占ったときは二人の言うことに従う。あなたに大きな迷いがあるときは、まず自分の心に問い、次に卿士(高官)に問い、民にも問い、そして卜筮に問え。あなた自身が賛成し、亀卜も筮も賛成し、卿士も民も賛成する。これを大同(大いなる一致)といい、あなたの身は安らかで強く、子孫も吉に恵まれる。あなたが賛成し、亀卜も筮も賛成し、卿士と民が反対しても、吉である。卿士が賛成し、亀卜も筮も賛成し、あなたと民が反対しても、吉である。民が賛成し、亀卜も筮も賛成し、あなたと卿士が反対しても、吉である。あなたが賛成し、亀卜が賛成しても、筮が反対し、卿士も民も反対するなら、内の事を行えば吉、外の事を行えば凶である。亀卜と筮がともに人の意見に反するなら、じっとしていれば吉、事を起こせば凶である。庶徴とは、雨、晴れ、暖かさ、寒さ、風、そしてそれらが時にかなうことである。五つがそろって訪れ、それぞれが順序どおりであれば、草木はよく茂る。どれか一つが極端に多すぎても凶であり、どれか一つがまったくなくても凶である。良い兆し(休徴)とは次のとおりである。君主が厳粛であれば、雨が時にかなって降る。政治が治まっていれば、晴れが時にかなう。智恵があれば、暖かさが時にかなう。謀りごとがよければ、寒さが時にかなう。聖であれば、風が時にかなう。悪い兆し(咎徴)とは次のとおりである。君主が狂ったように振る舞えば、雨が降り続く。身分を越えた振る舞いをすれば、日照りが続く。怠ければ、暖かさが続く。性急であれば、寒さが続く。道理に暗ければ、風が吹き続く。王が見るべきは一年の兆し、卿士が見るべきは一月の兆し、師尹(諸官の長)が見るべきは一日の兆しである。年・月・日・季節がその秩序を乱さなければ、穀物は実り、政治は明らかになり、優れた民は世に現れ、家々は平和で安らかになる。年・月・日・季節の秩序が乱れれば、穀物は実らず、政治は暗く、優れた民は隠れ、家々は落ち着かない。民は星のようなもので、星には風を好むものもあれば、雨を好むものもある。日と月の運行によって冬と夏がある。月が星の方へ進めば、風雨となる。五福とは、一に長寿、二に富、三に心身の安らかさ、四に徳を好むこと、五に天寿を全うすることである。六極(六つの不幸)とは、一に若死に、二に病、三に憂い、四に貧しさ、五に醜悪、六に弱さである」。

解説

箕子が説く洪範九疇の後半、稽疑・庶徴・五福・六極の部分です。稽疑は、大きな迷いがあるとき、自分の心、高官、民、亀卜、筮の五つに問うという意思決定の手順を示しています。すべてが一致すれば「大同」で最上ですが、占いが賛成し、君主・高官・民の三者のうち一つでも賛成すれば吉とし、占いが割れたり人の意見に反したりすれば慎重に控えよと説きます。独断を避け、複数の立場の意見を重ねて判断するという考え方は、古代の占いの形を取りながらも、現代の合意形成に通じるところがあります。庶徴は、君主の振る舞いの善し悪しが天候の順・不順となって現れるという天人相関の思想で、のちの漢代の災異説の源となりました。最後の五福と六極は、人が求める幸福と避けるべき不幸を並べたものです。重大な決定の前に、自分以外のさまざまな立場から意見を集めることの大切さを、この段は教えてくれます。

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