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史記 / 宋微子世家

恭作肅,從作治,明作智,聰作謀,睿作聖。「八政:一曰食,二曰貨,三曰祀,四曰司空,五曰司徒,六曰司寇,七曰賓,八曰師。「五紀:一曰歲,二曰月,三曰日,四曰星辰,五曰歷數。「皇極:皇建其有極,斂時五福,用傅錫其庶民,維時其庶民于女極,錫女保極。凡厥庶民,毋有淫朋,人毋有比德,維皇作極。凡厥庶民,有猷有爲有守,女則念之。不協于極,不離于咎,皇則受之。而安而色,曰予所好德,女則錫之福。時人斯其維皇之極。毋侮寡而畏髙明。人之有能有爲,使羞其行,而國其昌。凡厥正人,既富方穀。女不能使有好于而家,時人斯其辜。于其毋好,女雖錫之福,其作女用咎。毋偏毋頗,遵王之義。毋有作好,遵王之道。毋有作惡,遵王之路。毋偏毋黨,王道蕩蕩。毋黨毋偏,王道平平。毋反毋側,王道正直。會其有極,歸其有極。曰王極之傅言,是夷是訓,于帝其順。凡厥庶民,極之傅言,是順是行,以近天子之光。曰天子作民父母,以爲天下王。「三德:一曰正直,二曰剛克,三曰柔克。平康正直,彊不友剛克,內友柔克,沈漸剛克,髙明柔克。維辟作福,維辟作威,維辟玉食。臣无有作福作威玉食。臣有作福作威玉食,其害于而家,凶于而國,人用側頗辟,民用僭忒。

新字:恭作粛,従作治,明作智,聰作謀,睿作聖。「八政:一曰食,二曰貨,三曰祀,四曰司空,五曰司徒,六曰司寇,七曰賓,八曰師。「五紀:一曰歳,二曰月,三曰日,四曰星辰,五曰歴数。「皇極:皇建其有極,斂時五福,用傅錫其庶民,維時其庶民于女極,錫女保極。凡厥庶民,毋有淫朋,人毋有比徳,維皇作極。凡厥庶民,有猷有為有守,女則念之。不協于極,不離于咎,皇則受之。而安而色,曰予所好徳,女則錫之福。時人斯其維皇之極。毋侮寡而畏高明。人之有能有為,使羞其行,而国其昌。凡厥正人,既富方穀。女不能使有好于而家,時人斯其辜。于其毋好,女雖錫之福,其作女用咎。毋偏毋頗,遵王之義。毋有作好,遵王之道。毋有作悪,遵王之路。毋偏毋党,王道蕩蕩。毋党毋偏,王道平平。毋反毋側,王道正直。会其有極,帰其有極。曰王極之傅言,是夷是訓,于帝其順。凡厥庶民,極之傅言,是順是行,以近天子之光。曰天子作民父母,以為天下王。「三徳:一曰正直,二曰剛克,三曰柔克。平康正直,彊不友剛克,内友柔克,沈漸剛克,高明柔克。維辟作福,維辟作威,維辟玉食。臣无有作福作威玉食。臣有作福作威玉食,其害于而家,凶于而国,人用側頗辟,民用僭忒。

書き下し

恭は粛を作し、従は治を作し、明は智を作し、聡は謀を作し、睿は聖を作す。八政。一を食と曰ひ、二を貨と曰ひ、三を祀と曰ひ、四を司空と曰ひ、五を司徒と曰ひ、六を司寇と曰ひ、七を賓と曰ひ、八を師と曰ふ。五紀。一を歳と曰ひ、二を月と曰ひ、三を日と曰ひ、四を星辰と曰ひ、五を歴数と曰ふ。皇極。皇其の有極を建て、時の五福を斂めて、用て敷きて其の庶民に錫ふ。維れ時れ其の庶民女の極に于(おい)て、女に保極を錫ふ。凡そ厥の庶民は、淫朋有ること毋く、人比徳有ること毋く、維れ皇極を作す。凡そ厥の庶民、猷有り為有り守有るは、女則ち之を念へ。極に協はずとも、咎に離(かか)らざるは、皇則ち之を受けよ。而ち而の色を安んじて、予が好む所は徳なりと曰はば、女則ち之に福を錫へ。時の人斯れ其れ維れ皇の極とせん。寡を侮りて高明を畏るること毋かれ。人の能有り為有る、其の行ひを羞めしめば、而ち国其れ昌えん。凡そ厥の正人は、既に富ましめて方に穀(よ)くせよ。女、而の家に好有らしむること能はずんば、時の人斯れ其れ辜あらん。其の好むこと毋きに于ては、女之に福を錫ふと雖も、其れ女の用て咎を作さん。偏すること毋く頗すること毋く、王の義に遵へ。好を作すこと有る毋く、王の道に遵へ。悪を作すこと有る毋く、王の路に遵へ。偏すること毋く党すること毋くんば、王道蕩蕩たり。党すること毋く偏すること毋くんば、王道平平たり。反すること毋く側すること毋くんば、王道正直なり。其の有極に会し、其の有極に帰せよ。曰く、王極の敷言は、是れ夷(つね)是れ訓にして、帝に于て其れ順ふ。凡そ厥の庶民、極の敷言に、是れ順ひ是れ行はば、以て天子の光に近づかん。曰く、天子は民の父母と作りて、以て天下の王と為る。三徳。一を正直と曰ひ、二を剛克と曰ひ、三を柔克と曰ふ。平康なるは正直、彊にして友ならざるは剛克、内に友なるは柔克。沈漸なるは剛克、高明なるは柔克。維れ辟(きみ)のみ福を作し、維れ辟のみ威を作し、維れ辟のみ玉食す。臣は福を作し威を作し玉食すること有る无し。臣福を作し威を作し玉食すること有らば、其れ而の家に害あり、而の国に凶あり。人用て側頗辟(へき)し、民用て僭忒(せんとく)せん。

現代語訳

恭しさは厳粛さを生み、道理に従う言葉は治まりを生み、明らかに見ることは智恵を生み、聡く聴くことは良い謀りごとを生み、深く通じる思いは聖を生む。八政とは、一に食(食糧)、二に貨(財貨)、三に祀(祭祀)、四に司空(土木・住まいの官)、五に司徒(教化の官)、六に司寇(刑罰の官)、七に賓(賓客の接待)、八に師(軍隊)である。五紀とは、一に歳、二に月、三に日、四に星辰、五に暦数(暦の計算)である。皇極とは、君主がその最高の規範を打ち立て、五福を集めて、それを広く民に分け与えることである。そうすれば民はあなたの規範のもとで、あなたにその規範を守る力を返してくれる。およそ民が悪い仲間をつくらず、人々が私的に徒党を組まないのは、君主が規範を打ち立てているからである。民の中で、はかりごとがあり、行動力があり、節操を守る者を、あなたは心にかけよ。規範に完全には合わなくても、罪に陥ってはいない者は、君主が受け入れよ。穏やかな顔で「私が好むのは徳だ」と言う者には、福を与えよ。そうすれば人々は君主の規範を自らのものとするだろう。身寄りのない弱い者を侮らず、高い地位の者を恐れて媚びてはならない。能力があり行動力のある者にその行いを進めさせれば、国は栄える。およそ官職にある者は、まず生活を豊かにしてやり、そのうえで善をなさせよ。あなたが彼らを家で喜ばしく暮らせるようにできなければ、その人々は罪を犯すだろう。善を好まない者には、たとえ福を与えても、かえってあなたに災いをもたらすことになる。偏らず傾かず、王の正義に従え。私的な好みを持たず、王の道に従え。私的な憎しみを持たず、王の道筋に従え。偏らず徒党を組まなければ、王道は広々としている。徒党を組まず偏らなければ、王道は平らかである。道に背かず傾かなければ、王道は正しくまっすぐである。人々をその規範のもとに集め、その規範に帰らせよ。王の規範として広く告げる言葉は、常の道であり教えであって、天帝の心に従うものである。およそ民が、その規範として告げられた言葉に従い行えば、天子の光に近づくことができる。天子は民の父母となって、天下の王となるのだ。三徳とは、一に正直、二に剛克(剛によって治める)、三に柔克(柔によって治める)である。世が平和で安らかなときは正直で治め、強く逆らって従わない者には剛で治め、親しみ従う者には柔で治める。沈み込んで弱い者には剛で励まし、高ぶって明敏な者には柔で抑える。ただ君主だけが福を与え、ただ君主だけが威罰を下し、ただ君主だけが美食をする。臣下が福を与えたり、威罰を下したり、美食をしたりしてはならない。臣下がそのようなことをすれば、あなたの家に害をもたらし、あなたの国に災いをもたらす。役人はそれによって偏って邪になり、民はそれによって身分を越えて道を外れるだろう。

解説

箕子が武王に説く「洪範九疇」の続きで、五事の効用から八政・五紀・皇極・三徳までを述べる段です。五事は、恭しい態度が厳粛さを、よく聴くことが良い謀を生むというように、君主の身の振る舞いが政治の成果につながると説きます。八政は食糧・財貨・祭祀から土木・教化・刑罰・外交・軍事までの政務の一覧、五紀は暦の基準です。中心となる皇極は、君主が偏りのない規範を打ち立て、民に福を分け与えれば、民もその規範を守るようになるという考えで、「偏ること無く党すること無くんば、王道蕩蕩たり」の句は後世の政治思想に大きな影響を与えました。三徳は、相手や状況に応じて正直・剛・柔を使い分けることを説き、最後に賞罰の権限は君主だけが持つべきで、臣下が握れば国が乱れると戒めます。えこひいきや派閥をつくらず、人に応じて厳しさと柔らかさを使い分けるという教えは、今の管理職にもそのまま役立つでしょう。

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