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史記 / 天官書

江、淮之間,氣皆白。徒氣白。土功氣黃。車氣乍髙乍下,往往而聚。騎氣卑而布。卒氣摶。前卑而後髙者,疾;前方而後髙者,兌;後兌而卑者,卻。其氣平者其行徐。前髙而後卑者,不止而反。氣相遇者,卑勝髙,兌勝方。氣來卑而循車通者,不過三四日,去之五六里見。氣來髙七八尺者,不過五六日,去之十餘里見。氣來髙丈餘二丈者,不過三四十日,去之五六十里見。稍雲精白者,其將悍,其士怯。其大根而前絶遠者,當戰。靑白,其前低者,戰勝;其前赤而仰者,戰不勝。陣雲如立垣。杼雲類杼。軸雲摶兩端兌。杓雲居前互天,其半半天。其蛪者類闕旗故。鈎雲句曲。諸此雲見,以五色合占。而澤摶密,其見動人,乃有占;兵必起,合鬭其直。王朔所候,決於日旁。日旁雲氣,人主象。皆如其形以占。故北夷之氣如群畜穹閭,南夷之氣類舟船幡旗。大水處,敗軍塲,破國之虚,下有積錢,金寶之上,皆有氣,不可不察。海旁蜄氣象樓臺;廣野氣成宮闕然。雲氣各象其山川人民所聚積。故候息秏者,入國邑,視封疆田疇之正治,城郭室屋門戸之潤澤,次至車服畜産精華。實息者,吉;虚秏者,凶。若煙非煙,若雲非雲,鬱鬱紛紛,蕭索輪囷,是謂卿雲。卿雲,喜氣也。

新字:江、淮之間,気皆白。徒気白。土功気黄。車気乍高乍下,往往而聚。騎気卑而布。卒気摶。前卑而後高者,疾;前方而後高者,兌;後兌而卑者,却。其気平者其行徐。前高而後卑者,不止而反。気相遇者,卑勝高,兌勝方。気来卑而循車通者,不過三四日,去之五六里見。気来高七八尺者,不過五六日,去之十余里見。気来高丈余二丈者,不過三四十日,去之五六十里見。稍雲精白者,其将悍,其士怯。其大根而前絶遠者,当戦。青白,其前低者,戦勝;其前赤而仰者,戦不勝。陣雲如立垣。杼雲類杼。軸雲摶両端兌。杓雲居前互天,其半半天。其蛪者類闕旗故。鈎雲句曲。諸此雲見,以五色合占。而沢摶密,其見動人,乃有占;兵必起,合闘其直。王朔所候,決於日旁。日旁雲気,人主象。皆如其形以占。故北夷之気如群畜穹閭,南夷之気類舟船幡旗。大水処,敗軍塲,破国之虚,下有積銭,金宝之上,皆有気,不可不察。海旁蜄気象楼台;広野気成宮闕然。雲気各象其山川人民所聚積。故候息秏者,入国邑,視封疆田疇之正治,城郭室屋門戸之潤沢,次至車服畜産精華。実息者,吉;虚秏者,凶。若煙非煙,若雲非雲,鬱鬱紛紛,蕭索輪囷,是謂卿雲。卿雲,喜気也。

書き下し

江・淮の間は、気皆白し。徒の気は白し。土功の気は黄なり。車の気は乍ち高く乍ち下り、往往にして聚まる。騎の気は卑くして布く。卒の気は摶まる。前卑くして後高き者は、疾し。前方にして後高き者は、兌し。後兌くして卑き者は、卻く。其の気平らかなる者は其の行徐なり。前高くして後卑き者は、止まらずして反る。気相遇ふ者は、卑きは高きに勝ち、兌きは方なるに勝つ。気来たること卑くして車の通を循る者は、三四日を過ぎず、之を去ること五六里にして見ゆ。気来たること高さ七八尺なる者は、五六日を過ぎず、之を去ること十余里にして見ゆ。気来たること高さ丈余二丈なる者は、三四十日を過ぎず、之を去ること五六十里にして見ゆ。稍雲精白なる者は、其の将悍く、其の士怯なり。其の大根にして前絶遠なる者は、当に戦ふべし。青白にして、其の前低き者は、戦ひ勝つ。其の前赤くして仰ぐ者は、戦ひ勝たず。陣雲は立垣の如し。杼雲は杼に類す。軸雲は摶まりて両端兌し。杓雲は前に居りて天に互り、其の半ばは天に半ばす。其の蛪なる者は闕旗に類す故なり。鈎雲は句曲す。諸々此の雲見はるれば、五色を以て合はせ占ふ。而して沢くして摶密に、其の見はるること人を動かせば、乃ち占有り。兵必ず起こり、其の直る所に合闘す。王朔の候ふ所は、日の旁らに決す。日の旁らの雲気は、人主の象なり。皆其の形の如くにして以て占ふ。故に北夷の気は群畜穹閭の如く、南夷の気は舟船幡旗に類す。大水の処、敗軍の場、破国の虚、下に積銭有るもの、金宝の上には、皆気有り、察せざるべからず。海の旁らの蜄気は楼台に象る。広野の気は宮闕を成すが然り。雲気は各々其の山川人民の聚積する所に象る。故に息秏を候ふ者は、国邑に入りて、封疆田疇の正治、城郭室屋門戸の潤沢を視、次いで車服畜産の精華に至る。実ちて息む者は、吉なり。虚しくして秏る者は、凶なり。煙の若くして煙に非ず、雲の若くして雲に非ず、鬱鬱紛紛、蕭索輪囷たる、是を卿雲と謂ふ。卿雲は、喜気なり。

現代語訳

長江と淮水の間では、雲気はみな白い。労役の人々(徒)の気は白い。土木工事の気は黄色い。車の気は急に高くなったり低くなったりし、ところどころで集まる。騎兵の気は低く広がる。歩兵の気は丸く固まる。前が低く後ろが高いものは速い。前が四角く後ろが高いものは鋭い。後ろが尖って低いものは退く。気が平らなものはその進みがゆっくりである。前が高く後ろが低いものは、止まらずに引き返す。気が出会うときは、低いものが高いものに勝ち、尖ったものが四角いものに勝つ。気がやって来て低く、車の通り道に沿うものは、三、四日を過ぎず、五、六里離れたところで見える。気がやって来て高さ七、八尺のものは、五、六日を過ぎず、十余里離れたところで見える。気がやって来て高さ一丈余りから二丈のものは、三、四十日を過ぎず、五、六十里離れたところで見える。細い雲が白く澄んでいるものは、その将は勇猛だが兵は臆病である。根元が大きく前方が遠く途切れているものは、戦になる。青白くて前が低いものは戦に勝つ。前が赤くて仰ぎ上がっているものは戦に勝てない。陣雲は垣根を立てたようである。杼雲は機織りの杼に似る。軸雲は丸く固まって両端が尖る。杓雲は前方にあって天にかかり、その半分は天の半ばに及ぶ。そのうち虹のようなものは、門の旗に似ているからである。鈎雲はかぎのように曲がる。これらの雲が現れれば、五色と合わせて占う。そして潤いがあって密に固まり、人の心を動かすように現れるときに、はじめて占いがある。兵は必ず起こり、その当たる方角で戦い合う。王朔の観測法は、太陽の傍らで判断するものである。太陽の傍らの雲気は君主の象である。すべてその形に従って占う。だから北方の異民族の気は家畜の群れやテント(穹廬)のようであり、南方の異民族の気は舟や旗に似ている。大洪水のあった所、敗軍の戦場、滅びた国の跡、地下に銭が蓄えられている所、金銀財宝の上には、みな気がある。よく観察しなければならない。海のほとりの蜃気楼は楼閣のようであり、広い野の気は宮殿の門をなすようである。雲気はそれぞれ、その山川や人々が集まり積み重なっているものの姿をかたどる。だから(国の)盛衰をうかがう者は、国や町に入って、境界や田畑がきちんと治められているか、城壁や家屋や門戸に潤いがあるかを見、次に車や衣服や家畜の見事さにまで及ぶ。満ちて増えていれば吉であり、虚しく減っていれば凶である。煙のようで煙でなく、雲のようで雲でなく、盛んに入り乱れ、ひっそりと渦を巻くものを卿雲という。卿雲は喜びの気である。

解説

雲気による占いの続きです。車の気は高低を繰り返し、騎兵の気は低く広がり、歩兵の気は丸く固まるなど、軍勢の種類によって立ち昇る気の形が違うとされています。実際には大軍の移動が巻き上げる砂ぼこりを観察していた面もあると考えられ、気の高さから相手がどのくらいの距離、何日先にいるかを推し量る記述は、きわめて実用的です。北方の異民族の気は家畜やテントの形、南方の異民族の気は舟や旗の形に似るといい、海辺の蜃気楼にも触れています。特に注目したいのは後半で、国の盛衰を知りたければ、その国に入って田畑の手入れ、家屋の潤い、車や衣服や家畜の様子を見よと述べている点です。空の気を占う前に、現場の実態を自分の目で確かめよという教えは、今の経営判断にもそのまま通じます。

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