学問のすゝめ / 十二編・演説の法を勧むるの説・視察、推究、読書、談話、著書、演説
ゆえに学問の本趣意は読書のみにあらずして、精神の働きにあり。この働きを活用して実地に施すにはさまざまの工夫なかるべからず。オブセルウェーションとは事物を視察することなり。リーゾニングとは事物の道理を推究して自分の説を付くることなり。この二ヵ条にてはもとよりいまだ学問の方便を尽くしたりと言うべからず。なおこのほかに書を読まざるべからず、書を著わさざるべからず、人と談話せざるべからず、人に向かいて言を述べざるべからず、この諸件の術を用い尽くしてはじめて学問を勉強する人と言うべし。すなわち視察、推究、読書はもって智見を集め、談話はもって智見を交易し、著書、演説はもって智見を散ずるの術なり。然りしこうしてこの諸術のうちに、あるいは一人の私をもって能くすべきものありといえども、談話と演説とに至りては必ずしも人とともにせざるを得ず。演説会の要用なることもって知るべきなり。
書き下し
ゆえに学問の本趣意は読書のみにあらずして、精神の働きにあり。この働きを活用して実地に施すにはさまざまの工夫なかるべからず。オブセルウェーションとは事物を視察することなり。リーゾニングとは事物の道理を推究して自分の説を付くることなり。この二ヵ条にてはもとよりいまだ学問の方便を尽くしたりと言うべからず。なおこのほかに書を読まざるべからず、書を著わさざるべからず、人と談話せざるべからず、人に向かいて言を述べざるべからず、この諸件の術を用い尽くしてはじめて学問を勉強する人と言うべし。すなわち視察、推究、読書はもって智見を集め、談話はもって智見を交易し、著書、演説はもって智見を散ずるの術なり。然りしこうしてこの諸術のうちに、あるいは一人の私をもって能くすべきものありといえども、談話と演説とに至りては必ずしも人とともにせざるを得ず。演説会の要用なることもって知るべきなり。
現代語訳
ですから学問の本来の趣旨は読書だけではなく、精神の働きにあります。この働きを活用して実地に施すには、さまざまの工夫がなくてはなりません。オブザベーションとは事物を観察することです。リーズニングとは事物の道理を推し究めて自分の説を付けることです。この二か条だけではもとより学問の手立てを尽くしたとは言えません。なおこのほかに書を読まねばならず、書を著さねばならず、人と談話せねばならず、人に向かって述べねばならない。これらの術を用い尽くしてはじめて学問に勤める人と言うべきです。すなわち観察、推究、読書は知見を集め、談話は知見を交換し、著書と演説は知見を広める術です。そしてこれらの術のうち、一人でできるものもありますが、談話と演説に至っては必ず人とともにせざるを得ません。演説会が必要であることはこれで分かるでしょう。
解説
この章句が説くこと
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