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史記 / 天官書

軫南衆星曰天庫樓;庫有五車。車星角若益衆,及不具,無處車馬。西宮咸池,曰天五潢。五潢,五帝車舍。火入,旱;金,兵;水,水。中有三柱;柱不具,兵起。奎曰封豕,爲溝瀆。婁爲聚衆。胃爲天倉。其南衆星曰廥積。昴曰髦頭,胡星也,爲白衣會。畢曰罕車,爲邊兵,主弋獵。其大星旁小星爲附耳。附耳搖動,有讒亂臣在側。昴、畢間爲天街。其陰,陰國;陽,陽國。參爲白虎。三星直者,是爲衡石。下有三星,兌,曰罰,爲斬艾事。其外四星,左右肩股也。小三星隅置,曰觜觿,爲虎首,主葆旅事。其南有四星,曰天厠。厠下一星,曰天矢。矢黃則吉靑、白、黑,凶。其西有句曲九星,三處羅:一曰天旗,二曰天苑,三曰九遊。其東有大星曰狼。下有四星曰弧,直狼。狼比地有大星,曰南極老人。老人見,治安;不見,兵起。常以秋分時候之於南郊。附耳入畢中,兵起。北宮玄武,虚、危。危爲蓋屋;虚爲哭泣之事。其南有衆星,曰羽林天軍。軍西爲壘,或曰鉞。旁有一大星爲北落。北落若微亡,軍星動角益希,及五星犯北落,入軍,軍起。火、金、水尤甚:火,軍憂;水,患;木、土,軍吉。危東六星,兩兩相比,曰司空。營室爲淸廟,曰離宮、閣道。漢中四星,曰天駟。旁一星,曰王良。王良策馬,車騎滿野。

新字:軫南衆星曰天庫楼;庫有五車。車星角若益衆,及不具,無処車馬。西宮咸池,曰天五潢。五潢,五帝車舎。火入,旱;金,兵;水,水。中有三柱;柱不具,兵起。奎曰封豕,為溝瀆。婁為聚衆。胃為天倉。其南衆星曰廥積。昴曰髦頭,胡星也,為白衣会。畢曰罕車,為辺兵,主弋猟。其大星旁小星為附耳。附耳揺動,有讒乱臣在側。昴、畢間為天街。其陰,陰国;陽,陽国。参為白虎。三星直者,是為衡石。下有三星,兌,曰罰,為斬艾事。其外四星,左右肩股也。小三星隅置,曰觜觿,為虎首,主葆旅事。其南有四星,曰天厠。厠下一星,曰天矢。矢黄則吉青、白、黒,凶。其西有句曲九星,三処羅:一曰天旗,二曰天苑,三曰九遊。其東有大星曰狼。下有四星曰弧,直狼。狼比地有大星,曰南極老人。老人見,治安;不見,兵起。常以秋分時候之於南郊。附耳入畢中,兵起。北宮玄武,虚、危。危為蓋屋;虚為哭泣之事。其南有衆星,曰羽林天軍。軍西為塁,或曰鉞。旁有一大星為北落。北落若微亡,軍星動角益希,及五星犯北落,入軍,軍起。火、金、水尤甚:火,軍憂;水,患;木、土,軍吉。危東六星,両両相比,曰司空。営室為清廟,曰離宮、閣道。漢中四星,曰天駟。旁一星,曰王良。王良策馬,車騎満野。

書き下し

軫の南の衆星を天庫楼と曰ふ。庫に五車有り。車星の角若し益々衆く、及び具はらざれば、車馬を処く無し。西宮は咸池、天五潢と曰ふ。五潢は、五帝の車舎なり。火入れば、旱。金は、兵。水は、水。中に三柱有り。柱具はらざれば、兵起こる。奎を封豕と曰ひ、溝瀆と為す。婁は聚衆と為す。胃は天倉と為す。其の南の衆星を廥積と曰ふ。昴を髦頭と曰ふ、胡星なり、白衣の会と為す。畢を罕車と曰ひ、辺兵と為し、弋猟を主る。其の大星の旁らの小星を附耳と為す。附耳揺動すれば、讒乱の臣側らに在る有り。昴・畢の間を天街と為す。其の陰は、陰国。陽は、陽国。参は白虎と為す。三星の直なる者は、是を衡石と為す。下に三星有り、兌くして、罰と曰ひ、斬艾の事と為す。其の外の四星は、左右の肩股なり。小さき三星の隅に置かるるを、觜觿と曰ひ、虎の首と為し、葆旅の事を主る。其の南に四星有り、天厠と曰ふ。厠の下の一星を、天矢と曰ふ。矢黄なれば則ち吉、青・白・黒は、凶。其の西に句曲せる九星有り、三処に羅なる。一を天旗と曰ひ、二を天苑と曰ひ、三を九遊と曰ふ。其の東に大星有りて狼と曰ふ。下に四星有りて弧と曰ひ、狼に直る。狼の地に比する所に大星有り、南極老人と曰ふ。老人見ゆれば、治安し。見えざれば、兵起こる。常に秋分の時を以て之を南郊に候ふ。附耳畢中に入れば、兵起こる。北宮は玄武、虚・危なり。危は蓋屋と為す。虚は哭泣の事と為す。其の南に衆星有り、羽林天軍と曰ふ。軍の西を塁と為し、或いは鉞と曰ふ。旁らに一大星有りて北落と為す。北落若し微かにして亡く、軍星動きて角益々希に、及び五星北落を犯し、軍に入れば、軍起こる。火・金・水尤も甚だし。火は、軍憂ふ。水は、患ふ。木・土は、軍吉なり。危の東の六星、両両相比ぶるを、司空と曰ふ。営室は清廟為り、離宮・閣道と曰ふ。漢中の四星を、天駟と曰ふ。旁らの一星を、王良と曰ふ。王良馬に策うてば、車騎野に満つ。

現代語訳

軫宿の南の多くの星を天庫楼という。その庫には五つの車(五車)がある。車の星の光芒がますます多くなったり、欠けてそろわなかったりすれば、車馬を置くところがなくなる。西宮は咸池で、天の五潢(五つの池)という。五潢は五帝の車庫である。火星が入れば日照り、金星なら戦、水星なら洪水となる。その中に三つの柱があり、柱がそろわなければ戦が起こる。奎宿を封豕(大いのしし)といい、溝渠をつかさどる。婁宿は人々を集めることをつかさどる。胃宿は天の倉である。その南の多くの星を廥積(まぐさの蓄え)という。昴宿を髦頭(騎兵の先駆け)といい、胡(北方民族)の星であり、白衣の会(喪の集まり)をつかさどる。畢宿を罕車(狩りの網車)といい、辺境の兵であり、狩猟をつかさどる。その大きな星の傍らの小さな星を附耳という。附耳が揺れ動けば、讒言して乱す臣が君主の側にいる。昴宿と畢宿の間を天街という。その北は陰の国(北方の異民族)、南は陽の国(中国)である。参宿は白虎である。三つの星がまっすぐ並ぶものを衡石(はかり)という。その下に三つの星があり、先が尖っていて、罰という。刑罰の事をつかさどる。その外側の四星は(虎の)左右の肩と股である。小さな三星が隅に置かれたものを觜觿といい、虎の首で、軍需物資の事をつかさどる。その南に四星があり、天厠(天の便所)という。厠の下の一星を天矢という。天矢が黄色ならば吉で、青・白・黒ならば凶である。その西に曲がって連なる九星があり、三か所に並んでいる。一を天旗、二を天苑、三を九遊という。その東に大きな星があり、狼(天狼星)という。その下に四星があり、弧(弓)といい、狼に向かっている。狼の南、地平に近いところに大きな星があり、南極老人という。老人星が見えれば世は治まり安らかで、見えなければ戦が起こる。いつも秋分の時に南の郊外でこれを観測する。附耳が畢宿の中に入れば戦が起こる。北宮は玄武で、虚宿・危宿である。危宿は屋根で覆った家であり、虚宿は泣き悲しむ事をつかさどる。その南に多くの星があり、羽林天軍という。天軍の西は塁(とりで)であり、あるいは鉞という。傍らに一つの大きな星があり、北落という。北落がかすかになって見えなくなったり、天軍の星が揺れ動いて光芒がますますまばらになったり、五星が北落を犯して天軍に入ったりすれば、軍が起こる。火星・金星・水星の場合はとりわけ甚だしい。火星なら軍に憂いがあり、水星なら災いがあり、木星・土星なら軍に吉である。危宿の東の六星で、二つずつ並ぶものを司空という。営室宿は清廟(宗廟)であり、離宮・閣道ともいう。天の川の中の四星を天駟という。傍らの一星を王良という。王良が馬に鞭打てば、車馬が野に満ちる(大きな戦がある)。

解説

天官書の続きで、南宮の残り、西宮の白虎、北宮の玄武の星々が紹介されます。西宮では、奎・婁・胃・昴・畢・觜・参の星宿がそれぞれ溝渠・人の集まり・倉・北方民族・辺境の兵・刑罰などになぞらえられています。畢宿の傍らの附耳が揺れれば讒言する臣が君主の側にいる、という占いは、天文と人事を直結させる考え方の典型です。また、南極老人星(カノープス)が見えれば世が治まり、見えなければ戦が起こるとされ、秋分に南の郊外で観測したと記されています。この星は長寿の象徴として、のちに日本にも寿老人の信仰として伝わりました。北宮では羽林天軍や北落など、軍事に関わる星が多く並びます。側近の讒言を天の異変として警告する発想は、身近な人の言葉をこそ慎重に聞き分けるべきだという戒めとしても読めます。

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