史記 / 夏本紀
於是帝錫禹玄圭,。皋陶作士以理民。帝舜朝,禹、伯夷、皋陶相與語帝前。皋陶述其謀曰:「信其道德,謀明輔和。」禹曰:「然,如何?」皋陶曰:「於!慎其身脩,思長,敦序九族,近可遠在已。」禹拜美言,曰:「然。」
新字:於是帝錫禹玄圭,。皋陶作士以理民。帝舜朝,禹、伯夷、皋陶相与語帝前。皋陶述其謀曰:「信其道徳,謀明輔和。」禹曰:「然,如何?」皋陶曰:「於!慎其身脩,思長,敦序九族,近可遠在已。」禹拝美言,曰:「然。」
書き下し
是に於て帝禹に玄圭を錫ふ。皋陶士と作りて以て民を理む。帝舜朝し、禹・伯夷・皋陶相与に帝の前に語る。皋陶其の謀を述べて曰く、「信に其れ道徳にして、謀明らかに輔け和す」と。禹曰く、「然り、如何」と。皋陶曰く、「於、其の身の脩まるを慎み、長きを思ひ、九族を敦序すれば、近きより遠きに在る可き已」と。禹美言を拝して、曰く、「然り」と。
現代語訳
そこで帝舜は禹に黒い玉の圭(しるしの玉器)を賜った(治水の成功を天下に告げた)。皋陶は司法官となって民を治めた。帝舜が朝廷に臨むと、禹・伯夷・皋陶は帝の前で語り合った。皋陶は自分の考えを述べて言った。「まことに道徳に従って行えば、謀は明らかとなり、補佐する者は和合する。」禹は言った。「そのとおりだ。では、どのようにするのか。」皋陶は言った。「ああ、自らの身を修めることを慎み、長い先を見据えて考え、一族を厚く秩序立てれば、身近なところから遠くにまで及ぼすことができる。」禹はその立派な言葉に拝礼して言った。「そのとおりだ。」
解説
治水を成し遂げた禹に、帝舜が黒い玉の圭を賜る場面から始まり、『尚書』皋陶謨にもとづく君臣の対話に移ります。司法官の皋陶が、統治の要は道徳にあり、そうすれば謀は明らかになり補佐の臣も和合すると説きます。禹が具体的な方法を尋ねると、皋陶は「自分の身を修め、長い目で考え、一族を秩序立てれば、身近なところから遠くまで及ぶ」と答えました。修身から家、そして天下へと広げていく、後の儒教の考え方の原型とも言える発想です。大功を立てたばかりの禹が、同僚の言葉に拝礼して「そのとおりだ」と受け止めていることにも注目したい場面です。成果を上げた人ほど、他人の意見に耳を傾ける謙虚さが試されます。組織でも、まず自分の足元と身近なチームを整え、そこから影響を広げていく順序を忘れると、大きな改革も空回りしがちです。
関連する章句
-
尚書・皐陶謨曰若(ここ)に古(いにしへ)の皐陶(かうえう)を稽(かんが)ふるに、曰く、「允(まこと)に厥(そ)の徳を迪(ふ)めば、謨(はかりごと)明らかに弼(たす)け諧(かな)ふ」と。禹曰く、「俞(しか)り、如何」と。皐陶曰く、「都(ああ)、厥の身を慎み、修めて永きを思ふ。九族を惇(あつ)く敘(つい)で、庶明(しよめい)励み翼(たす)くれば、邇(ちか)きより遠きに可なるは茲(ここ)に在り」と。禹昌言を拝して曰く、「俞り」と。皐陶曰く、「都、
-
史記 夏本紀天有辠を討ずれば、五刑五つながら用ゐんかな。吾が言厎に行ふ可きか」と。禹曰く、「女の言は致して績行す可し」と。皋陶曰く、「余未だ知ること有らず、道を賛けんことを思ふのみ」と。帝舜禹に謂ひて曰く、「女も亦昌言せよ」と。禹拝して曰く、「於、予何をか言はん。予日に孳孳たらんことを思ふ」と。皋陶禹を難じて曰く、「何をか孳孳と謂ふ」と。禹曰く、「鴻水天に滔り、浩浩として山を懐き陵に襄り、下民皆水に服す。予陸行には車に乗り、水行には舟に乗り、泥行には橇に乗り、山行には檋に乗り、山を行きて木を栞る。益と衆庶に稲と鮮食とを予ふ。以て九川を決して四海に致し、畎澮を浚ひて之を川に致す。稷と衆庶に得難きの食を予ふ。食少なければ、有余を調へて不足を補ひ、居を徙す。衆民乃ち定まり、万国治を為す」と。皋陶曰く、「然り、此れ而の美なり」と。禹曰く、「於、帝、乃の位に在るを慎み、爾の止まるを安んぜよ。徳を輔くれば、天下大いに応ぜん。意を清くして以て昭らかに上帝の命を待たば、天其れ重ねて命ずるに休を用てせん」と。帝曰く、「吁、臣なるかな、臣なるかな。臣は朕が股肱耳目と作る。予民を左右に有たんと欲す、女之を輔けよ。余古人の象、日月星辰を観て、文繡の服色を作らんと欲す、女之を明らかにせよ。予六律・五声・八音を聞き、来たりて滑を始め、以て五言を出入せんと欲す、女聴け。予即し辟ならば、女匡し拂せ。女面諛して、退きて予を謗ること無かれ。四輔の臣を敬せよ。諸衆の讒嬖の臣も、君の徳誠に施さば皆清からん」と。禹曰く、「然り。帝即し時ならずして、善悪を布同すれば則ち功毋からん」と。帝曰く、「丹朱の傲なるが若く、維れ慢游を是れ好み、水毋きに舟を行り、家に朋淫して、用て其の世を絶つこと毋かれ。予是に順ふ能はず」と。禹曰く、「啓を生むも、予子とせず。故を以て能く水土の功を成せり。輔けて五服を成し、五千里に至り、州に十二師、外は四海に薄り、咸五長を建て、各道びきて功有り。苗は頑にして功に即かず、帝其れ念へ」と。帝曰く、「吾が徳を道くは、乃ち女の功之を序づるなり」と。皋陶是に於て禹の徳を敬し、民をして皆禹に則らしむ。
-
尚書・大禹謨水・火・金・木・土・穀、惟れ修まり、正徳・利用・厚生、惟れ和す。九功惟れ敘(つい)で、九敘惟れ歌ふ。之を戒むるに休(よろこび)を用ひ、之を董(ただ)すに威を用ひ、之を勧むるに九歌を以てし、壊(やぶ)ること勿(な)からしめよ」と。帝曰く、「俞(しか)り。地平らかに天成り、六府三事允(まこと)に治まり、万世永く頼る、時(こ)れ乃(なんぢ)の功なり」と。帝曰く、「格(きた)れ、汝禹。朕帝位に宅(を)ること三十有三載、耄期(ばうき)にして勤むるに倦む。汝惟れ怠らず、朕が師を総(す)べよ」と。禹曰く、「朕が徳克(よ)くせず、民依らず。皐陶は邁(つと)めて徳を種(し)き、徳乃ち降り、黎民之に懐(なつ)く。帝念へや。茲(これ)を念ふも茲に在り、茲を釈(す)つるも茲に在り、名言するも茲に在り、允に出だすも茲に在り。惟れ帝功を念へ」と。帝曰く、「皐陶よ、惟れ茲の臣庶、予が正を干(をか)すこと或る罔(な)し。汝士と作りて、五刑に明らかにし、以て五教を弼(たす)け、予が治に期す。
-
尚書・皐陶謨上下に達す。敬まんかな有土」と。皐陶曰く、「朕が言恵(したが)ひて厎(いた)し行ふべきか」と。禹曰く、「俞(しか)り、乃(なんぢ)の言、績を可(な)すを厎す」と。皐陶曰く、「予未だ知る有らず、思ひて曰に賛賛して襄(たす)けんかな」と。
-
史記 夏本紀皋陶曰く、「於、人を知るに在り、民を安んずるに在り」と。禹曰く、「吁、皆是くのごとくならば、惟れ帝も其れ之を難しとせん。人を知れば則ち智にして、能く人を官にす。能く民を安んずれば則ち恵にして、黎民之を懐ふ。能く知り能く恵まば、何ぞ驩兜を憂へ、何ぞ有苗を遷し、何ぞ巧言善色の佞人を畏れんや」と。
-
尚書・大禹謨民中に協(かな)ふ、時(こ)れ乃(なんぢ)の功なり。懋(つと)めんかな」と。皐陶曰く、「帝の徳愆(あやま)つ罔(な)し。下に臨むに簡を以てし、衆を御するに寛を以てす。罰は嗣(し)に及ばず、賞は世に延(ひ)く。過(あやま)ちを宥(ゆる)すに大無く、故(ことさら)を刑するに小無し。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る