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史記 / 五帝本紀

堯曰:「鯀負命毀族,不可。」嶽曰:「异哉,試不可用而已。」堯於是聽嶽用鯀。九載,功用不成。堯曰:「嗟!四嶽:朕在位七十載,汝能庸命,踐朕位?」嶽應曰:「鄙惪忝帝位。」堯曰:「悉舉貴戚及疏遠隱匿者。」衆皆言於堯曰:「有矜在民閒,曰虞舜。」堯曰:「然,朕聞之。其何如?」嶽曰:「盲者子。父頑,母嚚,弟傲,能和以孝,烝烝治,不至姦。」堯曰:「吾其試哉。」於是堯妻之二女,觀其德於二女。舜飭下二女於嬀汭,如婦禮。

新字:堯曰:「鯀負命毀族,不可。」嶽曰:「异哉,試不可用而已。」堯於是聴嶽用鯀。九載,功用不成。堯曰:「嗟!四嶽:朕在位七十載,汝能庸命,践朕位?」嶽応曰:「鄙惪忝帝位。」堯曰:「悉舉貴戚及疏遠隠匿者。」衆皆言於堯曰:「有矜在民閒,曰虞舜。」堯曰:「然,朕聞之。其何如?」嶽曰:「盲者子。父頑,母嚚,弟傲,能和以孝,烝烝治,不至姦。」堯曰:「吾其試哉。」於是堯妻之二女,観其徳於二女。舜飭下二女於嬀汭,如婦礼。

書き下し

堯曰く、「鯀は命に負き族を毀る、不可なり」と。嶽曰く、「异なるかな、試みて用ゐる可からずんば已まんのみ」と。堯是に於て嶽に聴きて鯀を用ゐる。九載にして、功用成らず。堯曰く、「嗟、四嶽、朕位に在ること七十載、汝能く命を庸ゐ、朕が位を践まんか」と。嶽応へて曰く、「鄙徳にして帝位を忝くせん」と。堯曰く、「悉く貴戚及び疏遠隠匿なる者を挙げよ」と。衆皆堯に言ひて曰く、「矜なる有りて民間に在り、虞舜と曰ふ」と。堯曰く、「然り、朕之を聞けり。其れ何如」と。嶽曰く、「盲者の子なり。父は頑、母は嚚、弟は傲なるも、能く和するに孝を以てし、烝烝として治め、姦に至らしめず」と。堯曰く、「吾其れ試みんかな」と。是に於て堯之に二女を妻はせ、其の徳を二女に観る。舜二女を嬀汭に飭め下し、婦の礼の如くせしむ。

現代語訳

堯は言った。「鯀(こん)は命令に背き、同族を損なう者だ。任せてはならない。」四嶽(四方の諸侯の長)は言った。「それは違いましょう。試してみて、使えなければやめればよいだけのこと。」堯はそこで四嶽の言葉を聞き入れて鯀を用いた。九年たっても、治水の功は上がらなかった。堯は言った。「ああ、四嶽よ。私は位について七十年になる。おまえたちのうち天命をよく用いて、私の位を継げる者はいないか。」四嶽は答えた。「私どもは徳が乏しく、帝位を汚すだけでしょう。」堯は言った。「身分の高い親族であれ、疎遠で世に隠れた者であれ、すべて推挙せよ。」人々はみな堯に申し上げた。「民間に独り身の男がおり、虞舜(ぐしゅん)という者が。」堯は言った。「そうか、私も聞いている。どのような人物か。」四嶽は言った。「盲人の子で、父はかたくなで、母は口汚く、弟は傲慢ですが、孝行によって家族を和らげ、次第に家を治めて、悪事に至らせませんでした。」堯は言った。「私はその者を試してみよう。」そこで堯は二人の娘を舜に嫁がせ、娘たちに対する態度でその徳を観察した。舜は二人の娘を嬀水(きすい)の曲がり角の地に下らせて身を慎ませ、妻としての礼に従わせた。

解説

堯が後継者を探す場面です。治水を任せた鯀が九年かけても成果を出せず、堯は在位七十年の自分の後を託せる人を求めます。重臣たちが辞退すると、堯は「身分の高い親族でも、疎遠で隠れた者でもよいから推挙せよ」と命じ、民間の舜が名指しされます。舜の評判は、かたくなな父、口汚い継母、傲慢な弟という難しい家庭を孝行で和らげたことでした。堯はすぐには決めず、自分の娘二人を嫁がせて、身近な関係の中でその徳を確かめようとします。ここには後継者選びの要点が詰まっています。任せて駄目なら改める、候補を身内に限らず広く探す、評判を鵜呑みにせず実地で試す。司馬遷はこの禅譲の過程を丁寧に描き、血筋ではなく徳と実績による継承を理想として示しました。事業承継や管理職登用でも、試す期間と観察の場を設けることの大切さを教えてくれます。

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