尚書 / 堯典
帝曰:「咨!四岳!湯湯洪水方割,蕩蕩懷山襄陵,浩浩滔天。下民其咨,有能俾乂?」僉曰:「於,鯀哉!」帝曰:「吁!咈哉!方命圮族。」岳曰:「异哉,試可乃已。」帝曰:「往,欽哉!」九載,績用弗成。帝曰:「咨!四岳!朕在位七十載,汝能庸命,巽朕位?」岳曰:「否德忝帝位。」曰:「明明揚側陋。」師錫帝曰:「有鰥在下,曰虞舜。」帝曰:「俞,予聞。如何?」岳曰:「瞽子,父頑,母嚚,象傲;克諧,以孝烝烝,乂不格姦。」帝曰:「我其試哉。」女于時,觀厥刑于二女。釐降二女于嬀汭,嬪于虞。帝曰:「欽哉!」
新字:帝曰:「咨!四岳!湯湯洪水方割,蕩蕩懐山襄陵,浩浩滔天。下民其咨,有能俾乂?」僉曰:「於,鯀哉!」帝曰:「吁!咈哉!方命圮族。」岳曰:「异哉,試可乃已。」帝曰:「往,欽哉!」九載,績用弗成。帝曰:「咨!四岳!朕在位七十載,汝能庸命,巽朕位?」岳曰:「否徳忝帝位。」曰:「明明揚側陋。」師錫帝曰:「有鰥在下,曰虞舜。」帝曰:「兪,予聞。如何?」岳曰:「瞽子,父頑,母嚚,象傲;克諧,以孝烝烝,乂不格姦。」帝曰:「我其試哉。」女于時,観厥刑于二女。釐降二女于嬀汭,嬪于虞。帝曰:「欽哉!」
書き下し
帝曰く、「咨(ああ)、四岳。湯湯(しやうしやう)たる洪水方(まさ)に割(そこな)ひ、蕩蕩として山を懐(つつ)み陵に襄(のぼ)り、浩浩として天に滔(はびこ)る。下民其れ咨(なげ)く。能く乂(をさ)めしむる有らんか」と。僉(みな)曰く、「於(ああ)、鯀(こん)なるかな」と。帝曰く、「吁(ああ)、咈(もと)れるかな。命に方(さか)らひ族を圮(やぶ)る」と。岳曰く、「异(や)めんかな。試みて可なれば乃ち已(や)まん」と。帝曰く、「往け、欽(つつし)まんかな」と。九載、績用(もつ)て成らず。帝曰く、「咨、四岳。朕位に在ること七十載。汝能く命を庸(もち)ゐる、朕が位を巽(ゆづ)らん」と。岳曰く、「否徳、帝位を忝(はづかし)めん」と。曰く、「明明を明らかにし、側陋を揚げよ」と。師錫(あた)へて帝に曰く、「鰥(やもを)の下に在る有り、虞舜と曰ふ」と。帝曰く、「俞(しか)り、予聞けり。如何」と。岳曰く、「瞽(こ)の子なり。父は頑(かたくな)に、母は嚚(おろか)に、象は傲(おご)る。克く諧(やはら)ぐるに孝を以てし、烝烝(じようじよう)として乂(をさ)め、姦に格(いた)らしめず」と。帝曰く、「我其れ試みんかな」と。時(これ)に女(めあは)せ、厥(そ)の刑(のり)を二女に観る。二女を嬀汭(きぜい)に釐降(りかう)し、虞に嬪(よめ)せしむ。帝曰く、「欽まんかな」と。
現代語訳
帝(堯)は言った。「ああ、四岳(しがく、四方の諸侯の長)よ。みなぎる洪水が今まさに害をなし、広々と山を包み丘の上までのぼり、果てしなく天にまであふれている。下々の民は嘆いている。これを治められる者はいないか。」皆が言った。「ああ、鯀(こん、禹の父)がいる。」帝は言った。「ああ、それはいけない。あの男は命令に逆らい、仲間を損なう。」四岳は言った。「(ほかに人がいないので)やめるにしても、ひとまず試してみて、だめならやめればよかろう。」帝は言った。「行け。つつしんで務めよ。」九年たっても、治水の功は成らなかった。帝は言った。「ああ、四岳よ。私が位にあって七十年になる。そなたはよく命令を果たしてきた。わが位を譲ろう。」四岳は言った。「徳のない私では、帝位を汚すことになる。」帝は言った。「高い地位の者でも、身分の低い者でも、賢い者を明らかにして取り立てよ。」皆が帝に申し上げた。「民の中に独り身の者がいる。虞舜という。」帝は言った。「そうだ、私も聞いている。どのような人物か。」四岳は言った。「盲人の子だ。父は頑固で、母は愚かで、弟の象(しょう)は傲慢だ。それでも孝行によって家族を和らげ、次第に正しい方へ導いて、悪事に至らせずにいる。」帝は言った。「私が試してみよう。」そこで娘を嫁がせ、二人の娘に対する舜のふるまいを見た。二人の娘を嬀水(きすい)の曲がり角へ下らせて、虞の家に嫁がせた。帝は(娘たちに)言った。「つつしんで仕えよ。」
解説
関連する章句
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史記 五帝本紀堯曰く、「鯀は命に負き族を毀る、不可なり」と。嶽曰く、「异なるかな、試みて用ゐる可からずんば已まんのみ」と。堯是に於て嶽に聴きて鯀を用ゐる。九載にして、功用成らず。堯曰く、「嗟、四嶽、朕位に在ること七十載、汝能く命を庸ゐ、朕が位を践まんか」と。嶽応へて曰く、「鄙徳にして帝位を忝くせん」と。堯曰く、「悉く貴戚及び疏遠隠匿なる者を挙げよ」と。衆皆堯に言ひて曰く、「矜なる有りて民間に在り、虞舜と曰ふ」と。堯曰く、「然り、朕之を聞けり。其れ何如」と。嶽曰く、「盲者の子なり。父は頑、母は嚚、弟は傲なるも、能く和するに孝を以てし、烝烝として治め、姦に至らしめず」と。堯曰く、「吾其れ試みんかな」と。是に於て堯之に二女を妻はせ、其の徳を二女に観る。舜二女を嬀汭に飭め下し、婦の礼の如くせしむ。
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史記 五帝本紀堯曰く、「誰か此の事に順ふ可き」と。放齊曰く、「嗣子丹朱開明なり」と。堯曰く、「吁、頑凶なり、用ゐず」と。堯又曰く、「誰か可なる者ぞ」と。讙兜曰く、「共工旁く功を聚布す、用ゐる可し」と。堯曰く、「共工は言を善くするも、其の用は僻なり、恭に似て天を漫る、不可なり」と。四嶽鯀を挙げて鴻水を治めしむ、堯以て不可と為すも、嶽彊ひて之を試みんことを請ふ、試みるも功成らず。
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史記 五帝本紀堯之を善しとし、乃ち舜をして五典を慎和せしむ、五典能く従ふ。乃ち遍く百官に入れ、百官時に序づ。四門に賓せしむ、四門穆穆たり。堯舜をして山林川澤に入らしむ、暴風雷雨するも、舜行きて迷はず。堯以て聖と為し、舜を召して曰く、「女の事を謀ること至りて言の績す可きこと、三年なり。女帝位に登れ」と。舜徳に譲りて懌ばず。
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『淮南子』泰族訓然れども其の人を得れば則ち舉がり、其の人を失えば則ち廢る。堯 天下を治め、政教 平らかに、德潤 洽し。位に在ること七十載、乃ち天下の統を屬する所を求む。四嶽をして側陋を揚げしむ。四嶽 舜を舉げて之を堯に薦む。堯 乃ち妻わすに二女を以てし、以て其の內を觀、任ずるに百官を以てし、以て其の外を觀る。既に大麓に入り、烈風雷雨するも迷わず。乃ち屬するに九子を以てし、贈るに昭華の玉を以てして、天下を傳う。以爲えらく、法度有りと雖も、朱は統ぶる能わざるなり、と。
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史記 夏本紀夏禹は、名を文命と曰ふ。禹の父を鯀と曰ひ、鯀の父を帝顓頊と曰ひ、顓頊の父を昌意と曰ひ、昌意の父を黄帝と曰ふ。禹は、黄帝の玄孫にして帝顓頊の孫なり。禹の曾大父昌意及び父鯀は皆帝位に在るを得ず、人臣と為る。帝堯の時に当たり、鴻水天に滔り、浩浩として山を懐き陵に襄り、下民其れ憂ふ。堯能く水を治むる者を求むるに、羣臣四嶽皆鯀可なりと曰ふ。堯曰く、「鯀は人と為り命に負き族を毀る、不可なり」と。四嶽曰く、「之を等しくするに未だ鯀より賢なる者有らず。願はくは帝之を試みよ」と。是に於て堯四嶽に聴き、鯀を用ゐて水を治めしむ。九年にして水息まず、功用成らず。是に於て帝堯乃ち人を求め、更に舜を得たり。舜登用せられ、天子の政を摂行し、巡狩す。行きて鯀の治水の状無きを視、乃ち鯀を羽山に殛して以て死せしむ。天下皆舜の誅を以て是と為す。是に於て舜鯀の子禹を挙げて、鯀の業を続がしむ。堯崩じ、帝舜四嶽に問ひて曰く、「能く堯の事を成美する者有らば官に居らしめん」と。皆曰く、「伯禹司空と為らば、堯の功を成美す可し」と。舜曰く、「嗟、然り」と。禹に命ず、「女水土を平らげよ、維れ是れ之を勉めよ」と。禹拝稽首し、契・后稷・皋陶に譲る。舜曰く、「女其れ往きて爾の事を視よ」と。
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史記 五帝本紀象曰く、「本謀る者は象なり」と。象其の父母と分かち、是に於て曰く、「舜の妻、堯の二女と琴とは、象之を取らん。牛羊倉廩は、父母に予へん」と。象乃ち舜の宮に止まりて居り、其の琴を鼓す。舜往きて之を見る。象鄂きて懌ばず、曰く、「我舜を思ひて正に鬱陶たり」と。舜曰く、「然り、爾其れ庶からんか」と。舜復た瞽叟に事へ、弟を愛すること彌謹む。是に於て堯乃ち舜を五典百官に試むるに、皆治まる。昔高陽氏に才子八人有り、世其の利を得、之を八愷と謂ふ。高辛氏に才子八人有り、世之を八元と謂ふ。此の十六族は、世其の美を済し、其の名を隕さず。堯に至るまで、堯未だ挙ぐる能はず。舜八愷を挙げ、后土を主らしめ、以て百事を揆らしむるに、時序せざる莫し。八元を挙げ、五教を四方に布かしむ。父は義、母は慈、兄は友、弟は恭、子は孝にして、内平らかに外成る。昔帝鴻氏に不才の子有り、義を掩ひ賊を隠し、好んで凶慝を行ふ。天下之を渾沌と謂ふ。少暤氏に不才の子有り、信を毀り忠を悪み、悪言を崇飾す。天下之を窮奇と謂ふ。顓頊氏に不才の子有り、教訓す可からず、話言を知らず。天下之を檮杌と謂ふ。此の三族は世之を憂ふ。堯に至るまで、堯未だ去る能はず。縉雲氏に不才の子有り、飲食を貪り、貨賄を冒す。天下之を饕餮と謂ふ。天下之を悪み、之を三凶に比す。舜四門に賓し、乃ち四凶族を流し、四裔に遷し、以て螭魅を御がしむ。是に於て四門辟き、凶人毋きを言ふなり。舜大麓に入り、烈風雷雨にも迷はず。堯乃ち舜の天下を授くるに足るを知る。堯老い、舜をして天子の政を摂行し、巡狩せしむ。舜挙げられ、事を用ゐること二十年にして、堯摂政せしむ。摂政すること八年にして堯崩ず。三年の喪畢はり、丹朱に譲るも、天下舜に帰す。而して禹・皋陶・契・后稷・伯夷・夔・龍・倕・益・彭祖は堯の時より皆挙用せらるるも、未だ職を分かつこと有らず。
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