導師導古典を学びたいすべての人に 法人向けワークシート法人向けワークシート

士道要論 / 士氣・恥を知り欲を忘れる気力の根

身をころしても辱しめをとらじと思へり、されば、罪ありて殺さるゝも、切腹をゆるさるゝをもて榮とし、繩にかゝるをもて戸の上の辱といひてきらふことなり、おほよそ、罪かふむるほどの人はよからぬ者なれば、榮辱の沙汰あるまじきに、かくけなひなるは、いにしへ士と名づくる程の人は、善惡をいはず、恥をしらず、武道のきつかけなきものはなきしるべし、それ國は士あるをもてたち、士は氣あるをもてたつ、士の氣强からざれば薑の辛からざるごとし、何の味かあらん、かゝる士のみにては士なきこと同じ、國何をもて立んや、さてその氣は、恥をしると慾をわするゝことより生ず、これいわゆる廉恥の心なり、慾をわすれば身のためあしゝといへども、いとわず、恥をしれば身をころしてもかへり見ず、かくありなば、世におそろしと思ふことはあるまじ、つよきことむべならずや、孟子に志士不忘在溝壑。勇士不忘喪其元。といへり、士たるもの常々此要文を護身符としてわすれずば、廉恥の心を失ふまじ、廉恥のこゝろを失はずして禮義の心にもなるべし、

新字:身をころしても辱しめをとらじと思へり、されば、罪ありて殺さるゝも、切腹をゆるさるゝをもて栄とし、縄にかゝるをもて戸の上の辱といひてきらふことなり、おほよそ、罪かふむるほどの人はよからぬ者なれば、栄辱の沙汰あるまじきに、かくけなひなるは、いにしへ士と名づくる程の人は、善悪をいはず、恥をしらず、武道のきつかけなきものはなきしるべし、それ国は士あるをもてたち、士は気あるをもてたつ、士の気強からざれば薑の辛からざるごとし、何の味かあらん、かゝる士のみにては士なきこと同じ、国何をもて立んや、さてその気は、恥をしると慾をわするゝことより生ず、これいわゆる廉恥の心なり、慾をわすれば身のためあしゝといへども、いとわず、恥をしれば身をころしてもかへり見ず、かくありなば、世におそろしと思ふことはあるまじ、つよきことむべならずや、孟子に志士不忘在溝壑。勇士不忘喪其元。といへり、士たるもの常々此要文を護身符としてわすれずば、廉恥の心を失ふまじ、廉恥のこゝろを失はずして礼義の心にもなるべし、

書き下し

身をころしても辱しめをとらじと思へり、されば、罪ありて殺さるゝも、切腹をゆるさるゝをもて榮とし、繩にかゝるをもて戸の上の辱といひてきらふことなり、おほよそ、罪かふむるほどの人はよからぬ者なれば、榮辱の沙汰あるまじきに、かくけなひなるは、いにしへ士と名づくる程の人は、善惡をいはず、恥をしらず、武道のきつかけなきものはなきしるべし、それ國は士あるをもてたち、士は氣あるをもてたつ、士の氣强からざれば薑の辛からざるごとし、何の味かあらん、かゝる士のみにては士なきこと同じ、國何をもて立んや、さてその氣は、恥をしると慾をわするゝことより生ず、これいわゆる廉恥の心なり、慾をわすれば身のためあしゝといへども、いとわず、恥をしれば身をころしてもかへり見ず、かくありなば、世におそろしと思ふことはあるまじ、つよきことむべならずや、孟子に志士不忘在溝壑。勇士不忘喪其元。といへり、士たるもの常々此要文を護身符としてわすれずば、廉恥の心を失ふまじ、廉恥のこゝろを失はずして禮義の心にもなるべし、

現代語訳

身を殺しても辱めを受けまいと思ったのです。ですから、罪があって殺される場合でも、切腹を許されるのを栄誉とし、縄にかかるのを家の戸の上の恥だといって嫌いました。そもそも罪を被るほどの人は善からぬ者なので、栄辱の沙汰などあるはずもないのに、このようにけなげなのは、昔、士と名のつく人は、善悪はともかく、恥を知らず、武道のきっかけをもたない者はいなかったからだと知るべきです。そもそも国は士があることで立ち、士は気があることで立ちます。士の気が強くなければ、生姜が辛くないようなもので、何の味がありましょうか。こうした士ばかりでは士がいないのと同じで、国は何によって立つのでしょうか。さて、その気は、恥を知ることと欲を忘れることから生まれます。これがいわゆる廉恥の心です。欲を忘れれば、わが身のために悪くなるとしてもいとわず、恥を知れば、身を殺しても顧みません。こうであれば、世の中に恐ろしいと思うことはなくなるでしょう。強いのも当然ではありませんか。孟子に「志士は溝壑に在るを忘れず、勇士はその元(首)を喪うを忘れず」(志ある士はいつ野垂れ死にしてもよいと覚悟し、勇士はいつ首を失ってもよいと覚悟している)とあります。士たる者がいつもこの要文を護身符として忘れなければ、廉恥の心を失うことはありません。廉恥の心を失わなければ、礼義の心にもなるでしょう。

解説

気力は、恥を知る心と欲を手放す心から生まれる、と述べています。生姜が辛くなければ味がないように、気の弱い人材ばかりでは組織は立たない、という喩えも印象的です。本文には死をもって恥を避ける昔の価値観が出ていますが、現代では命を賭ける話ではなく、不正や保身に流れないという覚悟に置き換えて読みます。管理職にとっては、評価や立場を失うことを恐れず、正しいと信じることを行う姿勢が、組織の信頼と強さの根になります。

この章句が説くこと

士道要論斎藤拙堂廉恥気力孟子欲

関連する章句

『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。

本の中身を見る
本2冊(人生の方程式・人生の教科書)+師導1か月=700円本を見る