導師導古典を学びたいすべての人に

春秋左氏伝 / 哀公十一年 艾陵の戦い

吳髮短。東郭書曰。三戰必死。於此三矣。使問弦多以琴。曰。吾不復見子矣。陳書曰。此行也。吾聞鼓而已。不聞金矣。甲戌。戰于艾陵。展如敗高子。國子敗胥門巢。王卒助之。大敗齊師。獲國書。公孫夏。閭丘明。陳書。東郭書。革車八百乘。甲首三千。以獻于公。將戰。吳子呼叔孫曰。而事何也。對曰。從司馬。王賜之甲劍鈹。曰。奉爾君事。敬無廢命。叔孫未能對。衛賜進曰。州仇奉甲從君而拜。公使大史固。歸國子之元。寘之新篋。褽之以玄纁。加組帶焉。寘書于其上。曰。天若不識不衷。何以使下國。吳將伐齊。

新字:呉髪短。東郭書曰。三戦必死。於此三矣。使問弦多以琴。曰。吾不復見子矣。陳書曰。此行也。吾聞鼓而已。不聞金矣。甲戌。戦于艾陵。展如敗高子。国子敗胥門巣。王卒助之。大敗斉師。獲国書。公孫夏。閭丘明。陳書。東郭書。革車八百乗。甲首三千。以献于公。将戦。呉子呼叔孫曰。而事何也。対曰。従司馬。王賜之甲剣鈹。曰。奉爾君事。敬無廃命。叔孫未能対。衛賜進曰。州仇奉甲従君而拝。公使大史固。帰国子之元。寘之新篋。褽之以玄纁。加組帯焉。寘書于其上。曰。天若不識不衷。何以使下国。呉将伐斉。

書き下し

吳は髮短し」と。東郭書曰く、「三たび戰へば必ず死す。此に於て三たびなり」と。弦多に問はしむるに琴を以てして曰く、「吾復た子を見ざらん」と。陳書曰く、「此の行や、吾鼓を聞くのみ、金を聞かず」と。甲戌、艾陵に戰ふ。展如高子を敗り、國子胥門巢を敗る。王卒之を助け、大いに齊の師を敗り、國書・公孫夏・閭丘明・陳書・東郭書、革車八百乘、甲首三千を獲て、以て公に獻ず。將に戰はんとするとき、吳子叔孫を呼びて曰く、「而(なんぢ)の事は何ぞや」と。對へて曰く、「司馬に從ふ」と。王之に甲・劍・鈹を賜ひて曰く、「爾の君の事を奉じ、敬みて命を廢すること無かれ」と。叔孫未だ對ふる能はず。衛賜進みて曰く、「州仇甲を奉じて君に從ひて拜す」と。公大史固をして國子の元を歸さしむ。之を新篋に寘き、之に褽(し)くに玄纁を以てし、組帶を加へ、書を其の上に寘きて曰く、「天若し衷ならざるを識らずんば、何を以て下國を使はんや」と。吳將に齊を伐たんとす。

現代語訳

呉の兵は髪が短いから(首を持ち帰るには縄で結ぶしかない)」。東郭書は言った。「三度戦えば必ず死ぬという。これで三度目だ」。そして人に琴を持たせて弦多のもとへ贈り、「もう二度とあなたに会うことはないだろう」と伝えさせた。陳書は言った。「このたびの出陣では、私は進軍の太鼓を聞くだけで、退却の鉦(かね)は聞かないつもりだ」。甲戌の日、艾陵で戦った。呉の展如が斉の高子(高無丕)を破り、斉の国子(国書)は呉の胥門巣を破った。しかし呉王の親衛軍が胥門巣を助けて斉軍を大いに破り、国書・公孫夏・閭丘明・陳書・東郭書を捕らえ、兵車八百乗、甲士の首三千を得て、哀公に献じた。戦いの前、呉子(夫差)は叔孫(叔孫武叔、名は州仇)を呼んで「そなたの務めは何か」と尋ねた。叔孫は「司馬に従っております」と答えた。王は彼に鎧・剣・鈹(ほこ)を賜って言った。「そなたの君の務めを奉じ、謹んで命令を怠ることのないように」。叔孫は(呉の流儀に戸惑って)答えられなかった。衛賜(子貢)が進み出て言った。「州仇は鎧を奉じて君に従い、拝礼いたします」。哀公は大史の固に命じて、国子の首を斉に返させた。新しい箱に納め、黒と浅紅の絹を敷き、組み紐の帯を掛け、その上に書を置いて言った。「天がもし斉の心が正しくないことを見抜かなかったなら、どうして下国(魯)に勝たせたであろうか」。呉は(さらに)斉を伐とうとした。

解説

呉が斉を大破した艾陵の戦いである。前の句から続く斉の将たちの言葉は悲壮で、東郭書が琴を友に贈って別れを告げ、陳書が「鼓を聞くのみ、金を聞かず」、つまり退却の合図は聞かないと言い切る。しかし覚悟は勝敗を決めず、呉王の親衛軍が加わると、斉は将帥五人と兵車八百乗を失った。夫差の生涯で最大の勝利である。戦いの前の小さな場面にも読みどころがある。夫差から武具を賜った叔孫武叔が返答に窮すると、子貢(衛賜)が進み出て「州仇甲を奉じて君に從ひて拜す」と、賜り物を受ける礼の形に整えた。『論語』で言語に長じると評された子貢の機転である。戦後、哀公は国書の首を丁重に箱に収めて返した。勝者としての礼を尽くしたのである。ただし、この絶頂こそが伍子胥の警告の前提となる。上役が言葉に詰まったとき、その場を礼にかなう形でおさめる一言がどれほど助けになるかも、この場面は伝えている。

この章句が説くこと

覚悟機転礼勝利外交

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る