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士道心得書 / 死を常に心に置く

常に勝負の氣を備ゆべし、忘る時は不慮の變に臨て大におくれを取る事有り。士としては死を常に心に疊むべし。生ずるものに於ては、死るは大事成る事何事か是にしかん。然共士として死を常に明らめをらざれば義にせまり、不死ば不可叶塲に於ては、命を惜て臆病を働き、兼ての人品一時にすたり、惡名を後世に殘す事有り、去ば節に臨て身を捨て命を鴻毛より輕んずる事、兼て自得する事肝要也。

新字:常に勝負の気を備ゆべし、忘る時は不慮の変に臨て大におくれを取る事有り。士としては死を常に心に畳むべし。生ずるものに於ては、死るは大事成る事何事か是にしかん。然共士として死を常に明らめをらざれば義にせまり、不死ば不可叶塲に於ては、命を惜て臆病を働き、兼ての人品一時にすたり、悪名を後世に残す事有り、去ば節に臨て身を捨て命を鴻毛より軽んずる事、兼て自得する事肝要也。

書き下し

常に勝負の氣を備ふべし、忘るる時は不慮の變に臨みて大に後れを取る事有り。士としては死を常に心に疊むべし。生ずるものに於ては、死するは大事成る事何事か是に如かん。然れ共士として死を常に明らめ居らざれば義に迫り、死なずば叶ふべからざる塲に於ては、命を惜しみて臆病を働き、兼ての人品一時に廢れ、惡名を後世に殘す事有り、去れば節に臨みて身を捨て命を鴻毛より輕んずる事、兼ねて自得する事肝要なり。

現代語訳

常に勝負の気を備えておきなさい。それを忘れると、思いがけない変事に臨んで大きく後れを取ります。士としては、死を常に心に畳んでおくべきです。生きている者にとって、死ぬことは何より大きな事柄です。しかし士として、普段から死を明らかに見定めていなければ、義に迫られ、死なねばならない場面で命を惜しんで臆病にふるまい、日頃の人品も一瞬で廃れて、悪名を後世に残すこともあります。ですから、節義に臨んでは身を捨て、命を鴻毛(鳥の羽)より軽く扱うことを、前もって自分のものとしておくことが肝要です。

解説

常に勝負の気を備え、死を常に心に置けと説く章です。死を恐れて臆病になれば、義の場面で一瞬にして人品を失うという戒めです。これは死を美化するというより、覚悟をあらかじめ固めておく心構えとして読めます。現代の管理職にとっては、責任を取る場面、評判や地位を失うかもしれない決断の場面で逃げないための準備にあたります。最悪の事態を事前に想定し、自分は何を守り何を手放すかを決めておくことが、土壇場の判断を支えます。

この章句が説くこと

死生観覚悟勝負の気節義鴻毛事前の準備

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