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士道心得書 / 士の道は文と武

士の道は則武也。以理導之、是を文と云て。以刑罰導之、是を武と云云。常を治るを文と云て、變を治るを武と云。乍然武は變に計り用るものにあらず。變は治中に起るものなれば、常に武を不備時は、禍亂をなす、故に君として德を不脩、民を不敎、守護とならざる時は、三民流亡す。士として武道を能せざる時は、士も亦遊民也。

新字:士の道は則武也。以理導之、是を文と云て。以刑罰導之、是を武と云云。常を治るを文と云て、変を治るを武と云。乍然武は変に計り用るものにあらず。変は治中に起るものなれば、常に武を不備時は、禍乱をなす、故に君として徳を不脩、民を不教、守護とならざる時は、三民流亡す。士として武道を能せざる時は、士も亦遊民也。

書き下し

士の道は則ち武なり。理を以て之を導く、是を文と云ひて、刑罰を以て之を導く、是を武と云ふ、云云。常を治むるを文と云ひて、變を治むるを武と云ふ。然り乍ら武は變にのみ用ゐるものにあらず。變は治中に起こるものなれば、常に武を備へざる時は、禍亂をなす、故に君として德を脩めず、民を敎へず、守護とならざる時は、三民流亡す。士として武道を能くせざる時は、士も亦遊民なり。

現代語訳

士の道とはつまり武のことです。道理で人を導くのを文といい、刑罰で人を導くのを武といいます。平常を治めるのを文、異変を治めるのを武といいます。しかし、武は異変のときだけ使うものではありません。異変は平穏の最中に起こるものですから、普段から武を備えていなければ、禍や乱をまねきます。ですから君主として徳を修めず、民を教え導かず、守る者とならなければ、農工商の三民は離散してしまいます。士として武道に通じていなければ、士もまた遊民(無用の者)にすぎません。

解説

本書は士の道を武とし、文と武を、常を治めるか変を治めるかで分けます。大切なのは、変は平時の中から起こるので、普段から武を備えよという点です。戦のない時代に武士の存在意義を問い直す言葉でした。現代の組織でも、危機対応の力は危機の前にしか育ちません。管理職は、平時の運営と有事の備えを別物とせず、日常の業務の中で判断力や守る力を鍛え、自分の役割が現場にとって何の価値かを説明できるようにしておくことが求められます。

この章句が説くこと

士の道文と武常と変平時の備え遊民守護

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