文武訓 / 武訓上
一凡武士となる者は、忠孝義理の志なくしては、武勇おろそかに節義闕けて、奉公の道たゝず。又武士の家に生れ、兵術武藝を知らず、武具をそなへず、軍用乏しくては、たとひ心たけくとも、武勇のつとめおろそかなるべし。故に武士の道、內には忠孝義理を以て本として兵法を知り、外には武藝をならひ、武備ともしからざるを以て助とす。武士として忠孝義理の道をしらず、兵法武藝にうとく、武備なくんば、武士の業を失へりといふべし。武藝は匹夫の勇のはたらきなり。其位に應じて學ぶべし。大人は、武藝に專一に心を用ふべからず。藝になづめば道行はれず。武備はかねて定め置くべし。平生無事の時心を用ひ、其分限に應じて、人馬、武具、家人の兵器、馬具、金銀、米錢等まで、かねてそなへ置き、籍にしるし、不足なく用意すべし。出陣の時にのぞみては、兼て定めし制法にしたがひ、何の用意もなく、何時も卽時に打立つやうにすべし。凡事豫則立とは是なり。何事もかねて用意なくしては、俄の時につまづくものなり。
新字:一凡武士となる者は、忠孝義理の志なくしては、武勇おろそかに節義闕けて、奉公の道たゝず。又武士の家に生れ、兵術武芸を知らず、武具をそなへず、軍用乏しくては、たとひ心たけくとも、武勇のつとめおろそかなるべし。故に武士の道、内には忠孝義理を以て本として兵法を知り、外には武芸をならひ、武備ともしからざるを以て助とす。武士として忠孝義理の道をしらず、兵法武芸にうとく、武備なくんば、武士の業を失へりといふべし。武芸は匹夫の勇のはたらきなり。其位に応じて学ぶべし。大人は、武芸に専一に心を用ふべからず。芸になづめば道行はれず。武備はかねて定め置くべし。平生無事の時心を用ひ、其分限に応じて、人馬、武具、家人の兵器、馬具、金銀、米銭等まで、かねてそなへ置き、籍にしるし、不足なく用意すべし。出陣の時にのぞみては、兼て定めし制法にしたがひ、何の用意もなく、何時も即時に打立つやうにすべし。凡事予則立とは是なり。何事もかねて用意なくしては、俄の時につまづくものなり。
書き下し
一凡武士となる者は、忠孝義理の志なくしては、武勇おろそかに節義闕けて、奉公の道たたず。又武士の家に生れ、兵術武芸を知らず、武具をそなへず、軍用乏しくては、たとひ心たけくとも、武勇のつとめおろそかなるべし。故に武士の道、内には忠孝義理を以て本として兵法を知り、外には武芸をならひ、武備ともしからざるを以て助とす。武士として忠孝義理の道をしらず、兵法武芸にうとく、武備なくんば、武士の業を失へりといふべし。武芸は匹夫の勇のはたらきなり。其位に応じて学ぶべし。大人は、武芸に専一に心を用ふべからず。芸になづめば道行はれず。武備はかねて定め置くべし。平生無事の時心を用ひ、其分限に応じて、人馬、武具、家人の兵器、馬具、金銀、米銭等まで、かねてそなへ置き、籍にしるし、不足なく用意すべし。出陣の時にのぞみては、兼て定めし制法にしたがひ、何の用意もなく、何時も即時に打立つやうにすべし。凡事予則立とは是なり。何事もかねて用意なくしては、俄の時につまづくものなり。
現代語訳
およそ武士となる者は、忠孝義理の志がなければ、武勇もおろそかになり節義も欠けて、奉公の道が立ちません。また武士の家に生まれても、兵術や武芸を知らず、武具を備えず、軍用が乏しくては、たとえ心は勇ましくても、武勇の務めはおろそかになるでしょう。ゆえに武士の道は、内には忠孝義理を本として兵法を知り、外には武芸を習い、武備に不足のないことを助けとします。武士として忠孝義理の道を知らず、兵法や武芸にうとく、武備がなければ、武士の本業を失ったといえます。武芸は一人の男の勇の働きです。その地位に応じて学ぶべきです。身分の高い人は、武芸にばかり心を用いてはいけません。芸にとらわれると道が行われません。武備はあらかじめ定めておくべきです。平生無事のときに心を用い、その身分に応じて、人馬・武具・家来の武器・馬具・金銀・米銭などまで、あらかじめ備えておき、帳簿に記して、不足なく用意すべきです。出陣のときになったら、かねて定めた制法に従って、何の用意もなく、いつでもすぐに出立できるようにすべきです。「凡そ事は予めすれば則ち立つ」とはこのことです。何事もかねて用意がなければ、急な時につまずくものです。
解説
この章句が説くこと
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司馬法・嚴位凡そ戦の道は、位は厳ならんことを欲し、政は栗(りつ)ならんことを欲し、力は窕(ゆとり)あらんことを欲し、気は閑(しずか)ならんことを欲し、心は一ならんことを欲す。
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うひ山ぶみ・第六段まことに然あるべきことにて、その学のしなを正し、まなびやうの法をも正して、ゆくさきよこさまなるあしき方に落チざるやう、又其業のはやく成るべきやう、すべて功多かるべきやうを、はじめよりよくしたゝめて、入らまほしきわざ也、
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