司馬法 / 嚴位
故心中仁,行中義,堪物智也,堪大勇也,堪久信也。
書き下し
故に心は仁に中(あた)り、行いは義に中る、物に堪うるは智なり、大に堪うるは勇なり、久しきに堪うるは信なり。
現代語訳
(民は仁によって救い、義によって戦わせ、智によって決断させ、勇によって闘わせ、信によって心を一つにさせる……)だから、心は仁にかない、行いは義にかなう。事物に対処できるのは智であり、大事に耐えられるのは勇であり、長く耐えられるのは信である。
解説
民を仁で救い、義で戦わせ、智で決断させ、勇で闘わせ、信で心を一つにし、利で励まし、功で勝たせる、という列を受けて、それを人の徳目として言い直した句である。心は仁に、行いは義にかない、事に対処するのは智、大事に耐えるのは勇、長く持ちこたえるのは信だとする。仁本篇で古の戦い方に宿る徳として並べた礼・仁・信・義・勇・智が、ここでは兵一人ひとりの内面の力として語られている。孫子は将の条件として智・信・仁・勇・厳を挙げるが、司馬法は将だけでなく民全体の徳として説く点が特徴である。長く耐える力を信と結びつけているのは興味深い。仕事でも、一時の頑張りは勇で足りるが、何年も続く取り組みを支えるのは、互いに約束を守るという信頼なのである。
関連する章句
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司馬法・嚴位凡そ民は、仁を以て救い、義を以て戦い、智を以て決し、勇を以て闘い、信を以て専らにし、利を以て勧め、功を以て勝つ。
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司馬法・仁本故に仁は親しまるるに見(あら)われ、義は說(よろこ)ばるるに見われ、智は恃(たの)まるるに見われ、勇は身を以て見われ、信は信ぜらるるに見わる。
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司馬法・仁本又能く服するを舎(ゆる)す、是を以て其の勇を明らかにす。
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司馬法・定爵凡そ乱を治むるの道は、一に曰く仁、二に曰く信、三に曰く直、四に曰く一、五に曰く義、六に曰く変、七に曰く尊。
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孫子・始計篇将とは、智・信・仁・勇・厳なり。
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司馬法・定爵国に居りては和し、軍に在りては法あり、刃上には察す。国に居りては好を見し、軍に在りては方を見し、刃上には信を見す。凡そ陳は、行くには惟れ疏(そ)に、戦うには惟れ密に、兵は惟れ雑う。人の教え厚ければ、静かにして乃ち治まり、威利章(あき)らかなり。相守るに義あれば、則ち人勉め、慮多く成れば、則ち人服す。時中に服し、厥の次治まる。物既に章らかなれば、目乃ち明らかなり。慮既に定まれば、心乃ち強し。進退に疑い無く、敵を見て謀る無し。誅を聴きては、其の名を誰(と)うこと無く、其の旗を変うること無かれ。凡そ事は、善なれば則ち長く、古に因れば則ち行われ、誓い作(おこ)りて章らかなれば、人乃ち強く、厲祥を滅ぼす。厲を滅ぼすの道は、一に曰く義、之を被(おお)うに信を以てし、之に臨むに強を以てし、基を成し、天下の形を一にし、人説ばざる莫し、是れを兼ねて其の人を用うと謂う。一に曰く権、其の溢るるを成し、其の好むところを奪い、我は其の外よりし、自ら其の内よりせしむ。一に曰く人、二に曰く正、三に曰く辞、四に曰く巧、五に曰く火、六に曰く水、七に曰く兵、是れを七政と謂う。栄、利、恥、死、是れを四守と謂う。容色積威は、意を改むるに過ぎず、凡そ此れ道なり。唯だ仁のみ親しむ有り、仁有りて信無ければ、反って厥の身を敗る。人は人とし、正は正とし、辞は辞とし、火は火とす。凡そ戦いの道は、既に其の気を作し、因りて其の政を発し、之に仮すに色を以てし、之を道(みちび)くに辞を以てし、懼れに因りて戒め、欲に因りて事とし、敵を蹈み地を制し、職を以て之に命ず、是れを戦法と謂う。凡そ人の形は、衆の求むるに由り、試みるに名行を以てし、必ず善く之を行う。若し行わんとして行わざれば、身以て之を将い、若し行わんとして行えば、因りて忘るること勿からしめ、三たびして乃ち章を成す。人生の宜しき、之を法と謂う。
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