言志四録 / 言志耋録 第二百六十八条 訟を聴くの道
聽訟之道。仁以爲體。莊以涖之。智以察之。先聞其言而攷情僞。次觀顏色而辨眞贋。或寛或嚴以抑揚之。然後義以斷之。勇以行之。大抵如是而已。
新字:聴訟之道。仁以為体。荘以涖之。智以察之。先聞其言而攷情偽。次観顔色而弁真贋。或寛或厳以抑揚之。然後義以断之。勇以行之。大抵如是而已。
書き下し
訟を聴くの道は、仁以て体と為し、荘以て之に涖み、智以て之を察す。先づ其の言を聞きて情偽を攷へ、次に顔色を観て真贋を弁じ、或は寛、或は厳、以て之を抑揚す。然る後に義以て之を断じ、勇以て之を行ふ。大抵是くの如きのみ。
現代語訳
訴訟を聴いて裁く道は、仁を根本に据え、厳粛な態度でこれに臨み、知恵によって事情を見抜くことにある。まず当事者の言い分を聞いて、真実か偽りかを考え、次に顔色を観察して本当か嘘かを見分け、ときに寛大に、ときに厳しくして、相手の心を抑えたり引き出したりする。そのうえで義によって判断を下し、勇気をもってそれを実行する。おおよそこのようなものにすぎない。
解説
訴えを聴き裁く手順を、仁・荘・智・義・勇という徳目に沿って組み立てた一条です。根本に据えるのは仁、つまり当事者への思いやり。臨む態度は荘、おごそかさ。見抜く力は智。言葉を聞いて真偽を考え、顔色を見て真贋を弁じ、寛と厳を使い分けて本音を引き出す。最後に義で断じ、勇で実行する。論語の「荘以て之に涖む」を踏まえつつ、判断の過程を段階ごとに整理しているのが特色です。この後の数条も訴訟の聴き方を扱っており、晩年の一斎がこの主題を重く見ていたことがうかがえます。社内の揉め事や評価面談など、人の言い分を聞いて判断を下す場面での心得としても読めます。
この章句が説くこと
聴訟仁智義勇判断
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