司馬法 / 仁本
天下既平,天子大愷,春蒐秋獮;諸侯春振旅,秋治兵。所以不忘戰也。古者:逐奔不過百步,縱綏不過三舍,是以明其禮也;不窮不能而哀憐傷病,是以明其義也;成列而皷,是以明其信也;
新字:天下既平,天子大愷,春蒐秋獮;諸侯春振旅,秋治兵。所以不忘戦也。古者:逐奔不過百歩,縦綏不過三舎,是以明其礼也;不窮不能而哀憐傷病,是以明其義也;成列而鼓,是以明其信也;
書き下し
天下既に平らぎ、天子大いに愷(がい)し、春は蒐(しゅう)し秋は獮(せん)す。諸侯は春に旅を振い、秋に兵を治む。戦を忘れざる所以なり。古は、奔るを逐うこと百歩を過ぎず、綏(すい)を縦(お)うこと三舎を過ぎず、是を以て其の礼を明らかにす。不能を窮めずして傷病を哀憐す、是を以て其の義を明らかにす。列を成して皷(こ)す、是を以て其の信を明らかにす。
現代語訳
天下が平定されると、天子は凱旋の楽を大いに奏し、春には蒐(しゅう、春の狩りを兼ねた軍事演習)、秋には獮(せん、秋の狩りを兼ねた演習)を行う。諸侯は春に軍を整えて引き揚げる訓練をし、秋に兵を治める訓練をする。これは戦を忘れないためである。昔は、逃げる敵を追うのは百歩を超えず、退く敵を追撃するのは三舎(一舎は三十里)を超えなかった。こうしてその礼を明らかにした。もはや戦えない者を追い詰めず、傷ついた者や病人を哀れんだ。こうしてその義を明らかにした。敵が隊列を整えるのを待ってから太鼓を打って攻めた。こうしてその信を明らかにした。
解説
前半は、天下が治まっても季節ごとの狩猟を兼ねた演習で備えを保つことを説き、後半は古の戦い方に宿る徳を数え上げる。逃げる者を深追いしない礼、戦えない者を追い詰めず傷病者を哀れむ義、相手が陣を整えるのを待って太鼓を打つ信である。この後に勇・智が続き、六徳として民を教える綱紀になる。春秋時代、宋の襄公が敵の布陣を待って敗れた話は愚直さの例として語られるが、司馬法はむしろその背後にある周の軍礼を理想として掲げている。平時に備えを忘れず、戦うときには節度を守るという二つは、一見逆向きでいて同じ規律の表と裏である。仕事でも、勝負の場での振る舞いが、その人や組織の品格としていつまでも記憶される。
関連する章句
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司馬法・天子之義兵を交え刃を致すと雖も、徒は趨(はし)らず、車は馳せず、奔るを逐うに列を踰えず、是を以て乱れず。軍旅の固きは、行列の政を失わず、人馬の力を絶たず、遅速誡命を過ぎず。古は、国容は軍に入らず、軍容は国に入らず。軍容国に入れば則ち民の徳廃れ、国容軍に入れば則ち民の徳弱し。故に
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司馬法・天子之義軍に在りては抗して立ち、行に在りては遂(すす)みて果たし、介者は拝せず、兵車は式せず、城上は趨らず、危事は歯(よわい)せず。故に礼と法とは表裏なり。文と武とは左右なり。古は、賢王民の徳を明らかにし、民の善を尽くす、故に廃徳無く、簡民無く、賞は生ずる所無く、罰は試みる所無し。有虞氏は賞せず罰せずして民用うべし、至徳なり。夏は賞して罰せず、至教なり。殷は罰して賞せず、至威なり。周は賞罰を以てす、徳衰うるなり。
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司馬法・定爵国に居りては和し、軍に在りては法あり、刃上には察す。国に居りては好を見し、軍に在りては方を見し、刃上には信を見す。凡そ陳は、行くには惟れ疏(そ)に、戦うには惟れ密に、兵は惟れ雑う。人の教え厚ければ、静かにして乃ち治まり、威利章(あき)らかなり。相守るに義あれば、則ち人勉め、慮多く成れば、則ち人服す。時中に服し、厥の次治まる。物既に章らかなれば、目乃ち明らかなり。慮既に定まれば、心乃ち強し。進退に疑い無く、敵を見て謀る無し。誅を聴きては、其の名を誰(と)うこと無く、其の旗を変うること無かれ。凡そ事は、善なれば則ち長く、古に因れば則ち行われ、誓い作(おこ)りて章らかなれば、人乃ち強く、厲祥を滅ぼす。厲を滅ぼすの道は、一に曰く義、之を被(おお)うに信を以てし、之に臨むに強を以てし、基を成し、天下の形を一にし、人説ばざる莫し、是れを兼ねて其の人を用うと謂う。一に曰く権、其の溢るるを成し、其の好むところを奪い、我は其の外よりし、自ら其の内よりせしむ。一に曰く人、二に曰く正、三に曰く辞、四に曰く巧、五に曰く火、六に曰く水、七に曰く兵、是れを七政と謂う。栄、利、恥、死、是れを四守と謂う。容色積威は、意を改むるに過ぎず、凡そ此れ道なり。唯だ仁のみ親しむ有り、仁有りて信無ければ、反って厥の身を敗る。人は人とし、正は正とし、辞は辞とし、火は火とす。凡そ戦いの道は、既に其の気を作し、因りて其の政を発し、之に仮すに色を以てし、之を道(みちび)くに辞を以てし、懼れに因りて戒め、欲に因りて事とし、敵を蹈み地を制し、職を以て之に命ず、是れを戦法と謂う。凡そ人の形は、衆の求むるに由り、試みるに名行を以てし、必ず善く之を行う。若し行わんとして行わざれば、身以て之を将い、若し行わんとして行えば、因りて忘るること勿からしめ、三たびして乃ち章を成す。人生の宜しき、之を法と謂う。
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司馬法・仁本戦は、春は東に征せず、秋は西に伐たず、月食すれば師を班(かえ)す。戦を省く所以なり。
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