洗心洞箚記 / 卷下・第百一條
小程子曰、一人之心、卽天地之心、一物之理、卽萬物之理、一日之運、卽一歲之運、吾雖奉姚江致良知之敎、以二程子之說爲徵焉也、而於伊川先生此語、所賜甚不少矣、人如能了心性、則理與運亦心而已矣、非別物也、先生分別說之、爲童蒙耳、
新字:小程子曰、一人之心、即天地之心、一物之理、即万物之理、一日之運、即一歳之運、吾雖奉姚江致良知之教、以二程子之説為徴焉也、而於伊川先生此語、所賜甚不少矣、人如能了心性、則理与運亦心而已矣、非別物也、先生分別説之、為童蒙耳、
書き下し
小程子曰く、一人の心は、即ち天地の心なり。一物の理は、即ち万物の理なり。一日の運は、即ち一歳の運なり、と。吾姚江致良知の教を奉ずと雖も、二程子の説を以て徴と為すなり。而して伊川先生の此の語に於て、賜はる所甚だ少なからず。人如し能く心性を了すれば、則ち理と運も亦た心のみ、別物に非ざるなり。先生分別して之を説くは、童蒙の為のみ。
現代語訳
小程子(程頤)は言う。「一人の心は天地の心である。一つの物の理は万物の理である。一日のめぐりは一年のめぐりである」。私は姚江(王守仁)の致良知の教えを奉じているが、二程子の説をその証拠としている。そして伊川先生(程頤)のこの言葉からは、授かったものがたいへん多い。人がもし心と性を会得できれば、理も運(めぐり)もまた心にすぎず、別のものではない。先生が三つに分けて説いたのは、初学の者のためにすぎない。
解説
一人の心が天地の心であり、一物の理が万物の理であるという程頤の言葉を、中斎は致良知の裏づけとして大切にする。心・理・運と三つに分けたのは初学者への配慮で、心性を会得すれば理も運も心の内にあるという。陽明学を奉じながら程子を証拠にするという姿勢は、学派の看板より中身の一致を重んじる中斎らしさである。現代でいえば、一日の過ごし方が一年の成果を決め、一人の心構えが組織全体の空気をつくるという、小さな単位に全体が宿るという見方に通じる。
この章句が説くこと
心良知致良知天地理程子
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