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洗心洞箚記 / 卷上・第七十七條

存心有二、自聖賢已下、存心於理、固不可無也、存心於欲、決不可有也、然存心於欲卽易、而存心於理乃難矣、古人詩所云、呼起十年心上事、春風樓下賣花聲、是亦庶乎存心於欲者也、故學者省察之工夫、不可時刻廢、以此也、

新字:存心有二、自聖賢已下、存心於理、固不可無也、存心於欲、決不可有也、然存心於欲即易、而存心於理乃難矣、古人詩所云、呼起十年心上事、春風楼下売花声、是亦庶乎存心於欲者也、故学者省察之工夫、不可時刻廃、以此也、

書き下し

存心に二有り。聖賢より已下、心を理に存するは、固より無かるべからず。心を欲に存するは、決して有るべからず。然れども心を欲に存するは即ち易く、心を理に存するは乃ち難し。古人の詩に云ふ所の「呼び起す十年心上の事、春風楼下花を売る声」、是れ亦心を欲に存する者に庶し。故に学者省察の工夫、時刻も廃すべからざるは、此を以てなり。

現代語訳

心を存する(心に保つ)ことには二通りある。聖賢をはじめ誰であっても、心を理に保つことはもとよりなくてはならない。心を欲に保つことは決してあってはならない。しかし心を欲に保つのはたやすく、心を理に保つのは難しい。古人の詩に「呼び起こされる十年来胸にしまっていた事、春風の吹く楼の下に花売りの声」とあるのは、まさに心を欲に保っている者に近い。だから学ぶ者が省察の工夫を一刻もやめてはならないのは、このためである。

解説

心に何を保ち続けるかを、理と欲の二つに分ける。欲はたやすく心に居座り、花売りの声一つで十年来の思いが呼び起こされる、と古人の詩を引いて示す。心を理に保つのが難しいからこそ、省察の工夫を片時も怠るなと戒める。省察は自分の念の起こりを点検する、宋明の儒学に共通する工夫であり、中斎は特にこれを重んじた。現代でも、ふとした広告や通知で欲や執着が呼び覚まされ、心は簡単に持っていかれる。何に心を明け渡しているかを日々点検したい。

この章句が説くこと

存心理欲省察修己心

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