洗心洞箚記 / 卷上・第百七十一條
周官之正、卽在六官各恪守其職、而其神乃在六職互聯助其事矣、各恪守其職、雖衰季猶能焉、至聯助其事、則非成周之純臣、孰能相和神其用哉、
新字:周官之正、即在六官各恪守其職、而其神乃在六職互聯助其事矣、各恪守其職、雖衰季猶能焉、至聯助其事、則非成周之純臣、孰能相和神其用哉、
書き下し
周官の正しきは、即ち六官各其の職を恪守するに在り。而して其の神は乃ち六職互ひに聯なりて其の事を助くるに在り。各其の職を恪守するは、衰季と雖も猶能くす。其の事を聯助するに至りては、則ち成周の純臣に非ずんば、孰か能く相和して其の用を神にせんや。
現代語訳
『周官』(周礼)の正しさは、六つの官がそれぞれ自分の職を謹んで守ることにある。そしてその霊妙さは、六つの職が互いに連なってその事を助け合うことにある。それぞれが職を謹んで守ることは、衰えた末の世でもまだできる。事を連なって助け合うことになると、周の盛時の純一な臣でなければ、誰が互いに和してその働きを霊妙にできようか。
解説
本条は短いが、組織論として鋭い。『周礼』の六官の制度の正しさは各官が職分を守ることにあり、その妙は六職が互いに連携して助け合うことにあるという。職分を守るのは衰えた時代でもできるが、連携して働きを生かすのは周の盛時の純臣でなければできない。縦割りの規律は形として保てても、横の協力は私心のない臣の和があって初めて成り立つ、ということである。各自が持ち場を守るだけでなく、互いに補い合う組織をどう作るかという問いは、部門間の壁に悩む今の企業や役所にもそのまま当てはまる。
この章句が説くこと
職分連携和組織周礼帝王学
関連する章句
-
孫子・九地篇所謂る古の善く兵を用うる者は、能く敵人をして前後相及ばず、衆寡相恃まず、貴賤相救わず、上下相収めず、卒離れて集まらず、兵合して斉わざらしむ。
-
言志四録・南洲手抄三軍和せずば、以て戦を言ひ難し。百官和せずば、以て治を言ひ難し。書に云ふ、寅を同じうし恭を協せ和衷せよやと。唯だ一の和字、治乱を一串す。
-
『文武訓』武訓下一いにしへの勇猛人にすぐれたる将、よく武功を立て、草創の業をなすといへども、智なければ、守文の功を成して、長くたもちて子孫に伝ふることかたし。故に武将は智を先とす、勇は其次なり。一師に克つこと、和にあり、衆にあらずと古人いへり。いふ意は、軍に勝つには、士卒将に和順にして、其下知にそむかず、一同にちからを合せて、身ををしまずして戦ふにあり。大軍なりとてたのむべからず。若士卒の心、将に思ひつかず、そむきはなれて、其力を同じくせずして一に和せずんば、百万の衆ありても軍に勝ちがたし。和とは和合なり。天地和合すれば、万物生ず、九族和合すれば家道行はる。君臣和合すれば国家平かなり。
-
『弁名』中庸和衷周礼の六徳の和の如きは、徳の名なり。人学びて以て徳を成すに、此の六徳の別有るを言ふなり。柳下恵の和の如きも、亦た同じ。皆其の物と相和順して忤違せざるを謂ふなり。以て司空の材と為す者は、司空は水土百工の事を掌る。百工は皆金木皮革百物の性に順ひて以て其の器を作る。故に巽順相入りて、能く物の性に和するに非ずんば、則ち其の事を掌ること能はざるなり。「允に其の中を執れ」と曰ふが如きは、天子の事を行ふを謂ふなり。古は中を執るを以て人君の道と為す。故に亦た天子の事を行ふを称して中を執ると為す。爾らずんば、堯曰・禹謨、文意皆協はず。
-
『弁名』中庸和衷中和は礼楽の徳なり。周礼に「礼を以て中を教へ、楽を以て和を教ふ」と。和は和順の謂なり。先王の礼を制する、賢者をして俯して之に就き、不肖をして企てて之に及ばしむ。是れ中なり。其の楽を制する、八音五声、相和して以て相済すこと、猶ほ五味の和のごとし。以て人の徳を養ひ、以て天地の和気を感召す。亦た人情の悦ぶ所に率ひて、和順して以て之を導き、以て天下の人をして、道徳に和順して以て其の俗を成さしむ。是れ和なり。周礼に又た楽の六徳有り、孝・友・祇・庸・中・和。是れ楽も復た兼ねて中和有り。蓋し八音五声、相和し相済せば、則ち自然に過不及の病無きなり。
-
『政談』諸役人職分支配を分つ事御老中は大名を支配し、若老中は御旗本を支配すれは、大名御旗本の官位の昇進役禄の增减参勤交替のこと縁組養子家督等のことは各々月番にても取捌くへきことなり、品々御政務の筋まで一つにして月番に受込み一月切に取捌くことゆゑ、御用繁多にして勤め方粗末なりと見えたり、周礼にも六官を分け、後世にも六部を分けたること古来の良制なり、御老中若老中にも役筋を分けて司とらせたきことなり、その分けやうは禁裡堂上方御門跡等のすぢは高家を下た司と云ふへし、礼儀作法殿中御規式のすぢは奏者物番を属官とすへし、寺社のすぢは今までの寺社奉行属官たるべし、町方のすぢは町奉行属官たるへし、御入毛のすぢは地方奉行相違なくたゞし、三奉行いつれも公事訴訟ともに掌とること故御用繁多にして粗末のことゝも多し、町奉行は御城下を三つにも四つにも仕切りて別々に分ち掌らせて、町方の治めを第一とし、訴訟までを受さすへし、地かたも治めを第一として訴訟迄を掌さしむへし、寺社も此通りなり、
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る