弁名 / 中庸和衷
中和者。禮樂之德也。周禮以禮敎中。以樂敎和。和者和順之謂也。先王之制禮。使賢者俯而就之。不肖企而及之。是中也。其制樂。八音五聲。相和以相濟。猶五味之和。以養人之德。以感召天地之和氣。亦率人情所悅。而和順以導之。以俾天下之人。和順道德以成其俗。是和也。周禮又有樂六德。孝友祇庸中和。是樂復兼有中和。蓋八音五聲。相和相濟。則自然無過不及之病也。
新字:中和者。礼楽之徳也。周礼以礼教中。以楽教和。和者和順之謂也。先王之制礼。使賢者俯而就之。不肖企而及之。是中也。其制楽。八音五声。相和以相済。猶五味之和。以養人之徳。以感召天地之和気。亦率人情所悦。而和順以導之。以俾天下之人。和順道徳以成其俗。是和也。周礼又有楽六徳。孝友祇庸中和。是楽復兼有中和。蓋八音五声。相和相済。則自然無過不及之病也。
書き下し
中和は礼楽の徳なり。周礼に「礼を以て中を教へ、楽を以て和を教ふ」と。和は和順の謂なり。先王の礼を制する、賢者をして俯して之に就き、不肖をして企てて之に及ばしむ。是れ中なり。其の楽を制する、八音五声、相和して以て相済すこと、猶ほ五味の和のごとし。以て人の徳を養ひ、以て天地の和気を感召す。亦た人情の悦ぶ所に率ひて、和順して以て之を導き、以て天下の人をして、道徳に和順して以て其の俗を成さしむ。是れ和なり。周礼に又た楽の六徳有り、孝・友・祇・庸・中・和。是れ楽も復た兼ねて中和有り。蓋し八音五声、相和し相済せば、則ち自然に過不及の病無きなり。
現代語訳
中和とは礼楽の徳である。周礼に「礼によって中を教え、楽によって和を教える」とある。和とは和やかに従うことをいう。先王が礼を制定したのは、賢い者には身をかがめて就かせ、至らない者にはつま先立ちして及ばせるためであった。これが中である。楽を制定したのは、八音(八種の楽器の音)と五声(五つの音階)が互いに和して補い合うことが、五味の調和のようであり、それによって人の徳を養い、天地の和やかな気を呼び寄せるためであった。また人情が喜ぶところに従って和やかに導き、天下の人が道徳に和順して風俗を成すようにした。これが和である。周礼にはまた楽の六徳として孝・友・祇・庸・中・和がある。つまり楽はさらに中と和を兼ねている。思うに八音五声が互いに和し補い合えば、自然に過不及の病がなくなるのである。
解説
この章句が説くこと
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『弁名』中庸和衷周礼の六徳の和の如きは、徳の名なり。人学びて以て徳を成すに、此の六徳の別有るを言ふなり。柳下恵の和の如きも、亦た同じ。皆其の物と相和順して忤違せざるを謂ふなり。以て司空の材と為す者は、司空は水土百工の事を掌る。百工は皆金木皮革百物の性に順ひて以て其の器を作る。故に巽順相入りて、能く物の性に和するに非ずんば、則ち其の事を掌ること能はざるなり。「允に其の中を執れ」と曰ふが如きは、天子の事を行ふを謂ふなり。古は中を執るを以て人君の道と為す。故に亦た天子の事を行ふを称して中を執ると為す。爾らずんば、堯曰・禹謨、文意皆協はず。
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論語・学而篇有子曰く、「礼の用は和を貴しと為す。先王の道も斯を美と為す。小大之に由れども、行われざる所有り。和を知りて和すれども、礼を以て之を節せざれば、亦行う可からざるなり。」
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『十七条憲法』第一条一に曰わく、和(わ)を以(も)って貴(たっと)しと為(な)し、忤(さから)うこと無きを宗(むね)と為(せ)よ。人は皆(みな)党(たむら)有り、亦(また)達(さと)れる者少なし。是(ここ)を以て、或(あるい)は君父(くんぷ)に順(したが)わず、乍(あるいは)隣里(りんり)に違(たが)う。然(しか)れども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事(こと)を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、則(すなわ)ち事理(じり)自(おのずか)ら通(つう)ず。何事(なにごと)か成らざらん。
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『呻吟語』内篇・倫理・惟だ和のみ妙と為し、深と為し、速と為し、難と為す人子の和氣・愉色・婉容、發し得て深き時、養ひ得て定まる時、父母の冷面寒鐵、雷霆震怒に任せて、只だ是れ這の一腔の溫意、一面の春風なれば、則ち自ら回らざるの天無く、自ら屢〻變ずるの天無し。讒譖何に由りてか入らん、嫌隙何に由りてか作らん。其の次は敬慎に如くは莫し。夔夔齋栗は、敬慎の至りなり、故に瞽瞍も亦た允に若へり。溫和は人に示すに愛す可きを以てし、父母の惡怒を消融す。敬慎は人に示すに矜れむ可きを以てし、父母の悲憐を激發す。所謂誠意を積みて以て之を感動する者は、和を養ひ敬を致すの謂ひなり。蓋し親を格すの功は、惟だ和のみ妙と為し、深と為し、速と為し、難と為す。至性純孝の者に非ざれば能はず。敬慎は猶ほ勉強す可きのみ。而今の人子は涼薄の色、惰慢の身、驕蹇の性を以てし、父母の怒りを犯すに及びて、既に挽回するを肯んぜず、又倨傲にして以て之を甚だしくす。此れ其の人は孝弟の外に在り、故に論ずるに足らず。即ち平日溫愉の子有るも、父母の悅ばざるに當たりて亦た慍見し、或いは疑ひを生じて怒りを遷す者、或いは意に遷怒無くして嫌を避けざる者、或いは善く嫌を避けずして愈〻避けて愈〻嫌を冒す者あり。隙を積みて釁を成し、遂に不祥を致す。豈に父母の慈ならざらんや。此れ孤臣孽子の法戒、志を堅くし仁に熟するの妙道なり。
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