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政談 / 諸役人職分支配を分つ事

御老中は大名を支配し、若老中は御旗本を支配すれは、大名御旗本の官位の昇進役祿の增减參勤交替のこと緣組養子家督等のことは各々月番にても取捌くへきことなり、品々御政務の筋まで一つにして月番に受込み一月切に取捌くことゆゑ、御用繁多にして勤め方粗末なりと見えたり、周禮にも六官を分け、後世にも六部を分けたること古來の良制なり、御老中若老中にも役筋を分けて司とらせたきことなり、その分けやうは禁裡堂上方御門跡等のすぢは高家を下た司と云ふへし、禮儀作法殿中御規式のすぢは奏者物番を屬官とすへし、寺社のすぢは今までの寺社奉行屬官たるべし、町方のすぢは町奉行屬官たるへし、御入毛のすぢは地方奉行相違なくたゞし、三奉行いつれも公事訴訟ともに掌とること故御用繁多にして粗末のことゝも多し、町奉行は御城下を三つにも四つにも仕切りて別々に分ち掌らせて、町方の治めを第一とし、訴訟までを受さすへし、地かたも治めを第一として訴訟迄を掌さしむへし、寺社も此通りなり、

新字:御老中は大名を支配し、若老中は御旗本を支配すれは、大名御旗本の官位の昇進役禄の增减参勤交替のこと縁組養子家督等のことは各々月番にても取捌くへきことなり、品々御政務の筋まで一つにして月番に受込み一月切に取捌くことゆゑ、御用繁多にして勤め方粗末なりと見えたり、周礼にも六官を分け、後世にも六部を分けたること古来の良制なり、御老中若老中にも役筋を分けて司とらせたきことなり、その分けやうは禁裡堂上方御門跡等のすぢは高家を下た司と云ふへし、礼儀作法殿中御規式のすぢは奏者物番を属官とすへし、寺社のすぢは今までの寺社奉行属官たるべし、町方のすぢは町奉行属官たるへし、御入毛のすぢは地方奉行相違なくたゞし、三奉行いつれも公事訴訟ともに掌とること故御用繁多にして粗末のことゝも多し、町奉行は御城下を三つにも四つにも仕切りて別々に分ち掌らせて、町方の治めを第一とし、訴訟までを受さすへし、地かたも治めを第一として訴訟迄を掌さしむへし、寺社も此通りなり、

書き下し

御老中は大名を支配し、若老中は御旗本を支配すれは、大名御旗本の官位の昇進役禄の增减参勤交替のこと縁組養子家督等のことは各々月番にても取捌くへきことなり、品々御政務の筋まで一つにして月番に受込み一月切に取捌くことゆゑ、御用繁多にして勤め方粗末なりと見えたり、周礼にも六官を分け、後世にも六部を分けたること古来の良制なり、御老中若老中にも役筋を分けて司とらせたきことなり、その分けやうは禁裡堂上方御門跡等のすぢは高家を下た司と云ふへし、礼儀作法殿中御規式のすぢは奏者物番を属官とすへし、寺社のすぢは今までの寺社奉行属官たるべし、町方のすぢは町奉行属官たるへし、御入毛のすぢは地方奉行相違なくたゞし、三奉行いつれも公事訴訟ともに掌とること故御用繁多にして粗末のことゝも多し、町奉行は御城下を三つにも四つにも仕切りて別々に分ち掌らせて、町方の治めを第一とし、訴訟までを受さすへし、地かたも治めを第一として訴訟迄を掌さしむへし、寺社も此通りなり、

現代語訳

御老中は大名を支配し、若老中は御旗本を支配するので、大名・御旗本の官位の昇進、役禄の増減、参勤交代のこと、縁組・養子・家督などのことは、各々月番でも取り捌いてよいことである。(ところが)いろいろな御政務の筋まで一つにして月番に受け持ち、一月限りで取り捌くので、御用が繁多で勤め方が粗末であると見える。『周礼』にも六官を分け、後世にも六部を分けたことは古来の良い制度である。御老中・若老中にも役筋を分けてつかさどらせたいことである。その分け方は、禁裏・堂上方・御門跡などの筋は高家を下役というべきである。礼儀作法・殿中の御規式の筋は奏者番を属官とすべきである。寺社の筋は今までの寺社奉行を属官とすべきである。町方の筋は町奉行を属官とすべきである。御入用の筋は地方奉行で相違ない。ただし三奉行はいずれも公事訴訟をともにつかさどるので、御用が繁多で粗末なことも多い。町奉行は御城下を三つにも四つにも仕切って別々に分けてつかさどらせ、町方の治めを第一とし、訴訟までを受けさせるべきである。地方も治めを第一として訴訟までをつかさどらせるべきである。寺社もこの通りである。

解説

幕政の最高職である老中・若老中は、大名・旗本の人事のほかあらゆる政務を月番で一人が抱え込むため、仕事が粗末になっていると徂徠は見る。『周礼』の六官や後世の六部にならい、朝廷対応、儀礼、寺社、町方、財政と担当筋を分け、それぞれに奉行などの属官を付けよという。さらに町奉行は城下を地域で分割し、治めを第一とせよとする。機能別の担当役員制と、その下の部門・地域分割の提案であり、現代の経営組織論でいう職能別組織の考えに近い。全てを全員で回す体制は、規模が大きくなれば必ず破綻する。

この章句が説くこと

職掌分業周礼組織老中政談

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