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洗心洞箚記 / 卷上・第百六十四條

許子曰、聖人是因人心固有良知良能上、扶持將去他、人心本有如此意思、愛親敬兄、藹然四端、隨感而見、聖人只是與發達推擴、就他元有的本領上進將去、不是將人心上元無的強安排與他、後世却將良知良能都斲喪了、却將人性元無的強去安排栽培、如彫蟲小技、以此學校廢壞、壞却天下人才、及去做官、於世事人情殊不知遠近、不知何者爲天理、民彝、似此民何由知嚮方、如何養得成風俗、他於風化人倫、本不曾學、他家本性已自壞了、如何化得人、

新字:許子曰、聖人是因人心固有良知良能上、扶持将去他、人心本有如此意思、愛親敬兄、藹然四端、随感而見、聖人只是与発達推擴、就他元有的本領上進将去、不是将人心上元無的強安排与他、後世却将良知良能都斲喪了、却将人性元無的強去安排栽培、如彫虫小技、以此学校廃壊、壊却天下人才、及去做官、於世事人情殊不知遠近、不知何者為天理、民彝、似此民何由知嚮方、如何養得成風俗、他於風化人倫、本不曽学、他家本性已自壊了、如何化得人、

書き下し

許子曰く、「聖人は是れ人心固有の良知良能の上に因りて、他を扶持し将ち去る。人心本此の如き意思有り、親を愛し兄を敬し、藹然たる四端、感に随ひて見る。聖人は只是れ与に発達推拡し、他の元有る的の本領の上に就きて進め将ち去る。是れ人心上に元無き的を将て強ひて他に安排するにあらず。後世却つて良知良能を将て都て斲喪し了り、却つて人性元無き的を将て強ひて去きて安排栽培す、彫虫の小技の如し。此を以て学校廃壊し、天下の人才を壊却す。去きて官と做るに及びて、世事人情に於て殊に遠近を知らず、何者か天理、民彝たるを知らず。此に似ては民何に由りて嚮ふ方を知らん、如何ぞ風俗を養ひ得て成らん。他は風化人倫に於て、本曾て学ばず、他家の本性已に自ら壊れ了る、如何ぞ人を化し得ん」と。

現代語訳

許氏(許衡)は言う。「聖人は、人の心にもともとある良知・良能の上に立って、それを助け支えて進めていくのである。人の心にはもともとこういう思いがあって、親を愛し兄を敬い、温かな四端(惻隠・羞悪・辞譲・是非の心の芽生え)が、感じるに従って現れる。聖人はただそれをともに伸ばし押し広げ、その人にもともとある本領の上に進めていくだけで、人の心にもともとないものを無理に押しつけるのではない。後世はかえって良知・良能をすっかり損ない、人の本性にもともとないものを無理に押しつけ植えつける。まるで虫を彫るような小手先の技である。そのために学校は廃れ、天下の人材を損なってしまった。いざ官職につくと、世の中のことや人情について遠い近いもわからず、何が天理であり、何が民の守るべき常道であるかも知らない。これでは民はどうして向かうべき方向を知ろうか。どうして風俗を養い成すことができようか。彼らは教化や人倫についてもともと学んだことがなく、自分自身の本性がもう壊れてしまっている。どうして人を感化できようか。」

解説

本節は元の許衡の言を引く。聖人の教えとは、人の心にもともとある良知良能と四端を助け伸ばすことであり、元来ないものを外から押しつけることではない。後世の学は良知を損ない、彫虫の小技のような知識を植えつけたため、学校は廃れ人材は壊れ、官に就いても天理や人情が分からず、民を導けなくなったという。朱子学を元の朝廷に広めた許衡の言葉に、外から詰め込む学への強い批判を読む点に中斎の狙いがある。知識を詰め込むより、人がもともと持つ力を伸ばすことが大切だという示唆は、今の人材育成にもそのまま通じる。

この章句が説くこと

良知良能四端教育人材許衡

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