洗心洞箚記 / 卷上・第百十四條
心歸乎太虛、非他、去人欲存天理、乃太虛也、舜不告娶等之義、雖經所載、初學及有欲之輩、不講之而可也、恐有假之誤身者、然心歸乎太虛、則知非常之事皆亦道也、故不妨、
新字:心帰乎太虚、非他、去人欲存天理、乃太虚也、舜不告娶等之義、雖経所載、初学及有欲之輩、不講之而可也、恐有仮之誤身者、然心帰乎太虚、則知非常之事皆亦道也、故不妨、
書き下し
心太虚に帰すとは、他に非ず、人欲を去りて天理を存する、乃ち太虚なり。舜の告げずして娶る等の義は、経の載する所と雖も、初学及び欲有るの輩は、之を講ぜずして可なり。之を仮りて身を誤る者有らんことを恐る。然れども心太虚に帰すれば、則ち非常の事も皆亦道なるを知る、故に妨げず。
現代語訳
心が太虚に帰るとは、ほかでもない、人欲を去って天理を保つこと、それが太虚である。舜が父母に告げずに妻を娶ったことなどの意味は、経書に載っていることではあるが、初学の者や欲のある者は講じなくてよい。それを口実にして身を誤る者が出ることを恐れる。しかし心が太虚に帰れば、常ならぬ事もみな道であると分かるので、差し支えない。
解説
二条を束ねた。太虚に帰すとは特別なことではなく、宋学の言う「人欲を去りて天理を存す」ことそのものだと言い切る。続いて、『孟子』に見える、舜が父母に告げずに娶った例外的な行いは、初学者や欲のある者には講じるなと言う。例外を口実に身を誤る者が出るからである。ただし太虚に帰した心には、非常の事も道として見える。例外を正しく扱えるのは私欲のない者だけという指摘は鋭い。規則の例外を認める判断は、私心のない人にしか任せてはならない。
この章句が説くこと
太虚天理人欲例外孟子判断
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