孫子 / 九地篇
施無法之賞,懸無政之令。犯三軍之衆,若使一人。犯之以事,勿告以言;犯之以利,勿告以害。
書き下し
法に無きの賞を施し、政に無きの令を懸く。三軍の衆を犯すこと、一人を使うが若し。之を犯すに事を以てし、告ぐるに言を以てすること勿かれ。之を犯すに利を以てし、告ぐるに害を以てすること勿かれ。
現代語訳
規定にない賞を与え、通常の政令にない命令を掲げる。全軍を動かすのに、一人を使うようにする。仕事を与えて動かし、言葉で説明しすぎない。利益を示して動かし、害のほうは告げない。
解説
非常時における例外の運用を述べている。規定にない賞、政令にない命令——平時の制度を超えて動く権限が将にはある、という主張である。後半の「言を以て告ぐること勿かれ」は情報統制の話で、現代の組織倫理からすればそのまま採用できない部分もある。ただし前半には学ぶところが多い。制度の範囲でしか報いられない組織は、非常時に人を動かせない。想定外の働きに、想定外の報い方ができるかどうかは、規定ではなく決裁する者の覚悟の問題である。
この章句が説くこと
例外賞罰非常時権限運用
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