洗心洞箚記 / 卷上・第百二條
有形質者、雖大有限、而必滅矣、無形質者、雖微無涯、而亦傳矣、高岳桑田、或崩、或爲海、而唾壺之虛、卽太虛之虛、而唾壺雖毀、其虛乃歸乎太虛、而萬古不滅也、
新字:有形質者、雖大有限、而必滅矣、無形質者、雖微無涯、而亦伝矣、高岳桑田、或崩、或為海、而唾壺之虚、即太虚之虚、而唾壺雖毀、其虚乃帰乎太虚、而万古不滅也、
書き下し
形質有る者は、大なりと雖も限り有りて、必ず滅ぶ。形質無き者は、微なりと雖も涯無くして、亦伝はる。高岳桑田も、或は崩れ、或は海と為る。而して唾壺の虚は、即ち太虚の虚にして、唾壺毀るると雖も、其の虚は乃ち太虚に帰して、万古滅びざるなり。
現代語訳
形と質のあるものは、大きくても限りがあって、必ず滅びる。形と質のないものは、小さくても果てがなく、伝わっていく。高い山や桑畑も、あるいは崩れ、あるいは海となる。しかし唾壺(たんつぼ)の中の虚は、そのまま太虚の虚であって、唾壺が壊れても、その虚は太虚に帰って、万古に滅びないのである。
解説
形あるものは大きくても必ず滅び、形のないものは小さくても滅びないと説く。高山も桑畑も変わる、という桑田変じて海となるの故事を踏まえ、つまらぬ唾壺の中の空虚でさえ太虚と同じで、器が壊れても太虚に帰って不滅だという。心の虚を太虚と同一視する中斎の思想を、卑近な器物で示した条である。身体は滅んでも、心が太虚に帰していれば滅びないという生死を一にする考えにもつながる。地位や財産は崩れても、私心なく尽くした心は残る、と読むこともできる。
この章句が説くこと
太虚虚生死不滅心陽明学
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