洗心洞箚記 / 卷上・第百條
語良知之底蘊、人以苦難、語良知之發見、人以慢易、慢易者、其誤也、至於以情識爲良知、苦難者、其阻也、至於以氣質爲謙讓、是所以聖學之不興於世也矣、
新字:語良知之底蘊、人以苦難、語良知之発見、人以慢易、慢易者、其誤也、至於以情識為良知、苦難者、其阻也、至於以気質為謙譲、是所以聖学之不興於世也矣、
書き下し
良知の底蘊を語れば、人以て苦難とし、良知の発見を語れば、人以て慢易とす。慢易なる者は、其の誤りや、情識を以て良知と為すに至る。苦難なる者は、其の阻みや、気質を以て謙譲と為すに至る。是れ聖学の世に興らざる所以なり。
現代語訳
良知の奥深いところを語ると、人は苦しく難しいものだと思い、良知が現れ出るところを語ると、人は軽くたやすいものだと思う。たやすいと思う者の誤りは、感情や思わくを良知と見なすに至る。難しいと思う者の妨げは、(自分の弱い)気質を謙譲と見なすに至る。これが聖人の学が世に興らないわけである。
解説
良知の説き方が招く二つの誤りを指摘する。奥深さを語れば難しすぎると尻込みし、日常の発露を語れば安易に受け取る。安易な者は、その場の感情や思いつきを良知だと思い込み、尻込みする者は、自分の臆病な気質を謙遜と言い換える。陽明学の後学、とりわけ良知はそのまま現成しているとする一派が情識に流れたとの批判は明末からあり、中斎も両方の偏りを戒めている。自分の直感を過信するのも、無理だと決めつけるのも、学びを止める点で同じである。
この章句が説くこと
良知気質情識謙譲学問陽明学
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