洗心洞箚記 / 卷上・第八十二條
無善無惡、心之體也、故君子致知格物、以歸乎其體、便是太虛、而萬事萬物、皆涵於其中矣、以是日用應酬、故得遂位育參贊之功德也、
新字:無善無悪、心之体也、故君子致知格物、以帰乎其体、便是太虚、而万事万物、皆涵於其中矣、以是日用応酬、故得遂位育参賛之功徳也、
書き下し
善無く悪無きは、心の体なり。故に君子は致知格物して、以て其の体に帰す、便ち是れ太虚にして、万事万物、皆其の中に涵る。是を以て日用応酬す、故に位育参賛の功徳を遂ぐるを得るなり。
現代語訳
善もなく悪もないのが心の本体である。だから君子は知を致し物を格して、その本体に帰る。それがそのまま太虚であり、万事万物はみなその中に包み込まれる。この心で日々の物事に応じるから、天地を位置づけ万物を育て、天地の化育を助けてそれと並ぶという功徳を成し遂げることができる。
解説
王陽明の四句教の第一句「無善無悪是心之体」を引き、その心の本体こそ太虚だとする。致知格物は、その本体に帰るための工夫である。太虚に帰した心は万物を包むので、日々の応対がそのまま『中庸』の言う、天地が位し万物が育ち、人が天地の化育を賛けて天地と参ずる働きになるという。善悪の判断を手放すのではなく、善悪にとらわれる前の澄んだ心から応じるということである。先入観なしに相手や状況を受け止める人が、結果として最もよく物事を育てる。
この章句が説くこと
太虚心致知格物中庸王陽明
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