洗心洞箚記 / 卷上・第七十四條
王文成公討宸濠之獨斷、固致其良知也、然而其所以致其良知、乃從蔡虛齋論岳飛班師書來、因知立言以垂諸天下萬世、卽亦仁也、嗚呼、豈曰小補之哉、
新字:王文成公討宸濠之独断、固致其良知也、然而其所以致其良知、乃従蔡虚斎論岳飛班師書来、因知立言以垂諸天下万世、即亦仁也、嗚呼、豈曰小補之哉、
書き下し
王文成公の宸濠を討つの独断は、固より其の良知を致すなり。然れども其の良知を致す所以は、乃ち蔡虚斎の岳飛の班師を論ずる書より来る。因りて知る、言を立てて以て諸を天下万世に垂るるは、即ち亦仁なり。嗚呼、豈に小補と曰はんや。
現代語訳
王文成公(王陽明)が宸濠(寧王朱宸濠)の反乱を独断で討ったのは、もとよりその良知を致したことである。しかし良知をそのように致すことができたのは、蔡虚斎(蔡清)が岳飛の撤兵を論じた文章から来ている。それゆえ知るのである、言葉を立てて天下万世に残すことは、そのまま仁でもあると。ああ、どうして小さな助けなどと言えようか。
解説
王陽明が朝廷の命を待たずに寧王朱宸濠の反乱を討った決断は良知の発露だが、その決断を支えたのは、南宋の岳飛が召還されて兵を返した故事を論じた明の蔡清の文章だった、と中斎は言う。朱子学者の文が陽明の行動を支えたことになる。ここから、言葉を書き残して後世に伝えること自体が仁だと結ぶ。本書を自ら刊行した中斎の、著述に託す思いもうかがえる。現代でも、誰かが書き残した記録や考察が、後の人の決断の拠り所になる。書き残す仕事を軽んじてはならない。
この章句が説くこと
良知致良知仁立言王陽明決断
関連する章句
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