導師導古典を学びたいすべての人に

文武訓 / 文訓上之末

一人の文字を見ば、よきことは褒め、さほどなきは、かげにてもそしるべからず。人のつとめて作れる文字を、一言にたやすくそしりおとさんもなさけなし。作れる人、そしりを聞かば、本意なく思ひうらみいかるべし。是をそしるは不仁無禮にて、道理にそむくのみならず、人のうらみを受けて惡しし。又あしき文詩を褒むるも、いつはりにて本意にあらず。只其よしあしを云はざらんには如かじ。

新字:一人の文字を見ば、よきことは褒め、さほどなきは、かげにてもそしるべからず。人のつとめて作れる文字を、一言にたやすくそしりおとさんもなさけなし。作れる人、そしりを聞かば、本意なく思ひうらみいかるべし。是をそしるは不仁無礼にて、道理にそむくのみならず、人のうらみを受けて悪しし。又あしき文詩を褒むるも、いつはりにて本意にあらず。只其よしあしを云はざらんには如かじ。

書き下し

一人の文字を見ば、よきことは褒め、さほどなきは、かげにてもそしるべからず。人のつとめて作れる文字を、一言にたやすくそしりおとさんもなさけなし。作れる人、そしりを聞かば、本意なく思ひうらみいかるべし。是をそしるは不仁無礼にて、道理にそむくのみならず、人のうらみを受けて悪しし。又あしき文詩を褒むるも、いつはりにて本意にあらず。只其よしあしを云はざらんには如かじ。

現代語訳

人の文章を見たら、よい所は褒め、それほどでもない所は、陰でもそしってはいけません。人が努めて作った文章を、一言でたやすくけなすのも情けないことです。作った人がそのそしりを聞けば、不本意に思い、恨み怒るでしょう。これをそしるのは不仁で無礼なことで、道理に背くだけでなく、人の恨みを受けてよくありません。また、悪い詩文を褒めるのも、偽りであって本意ではありません。ただ、そのよしあしを言わないでおくのに越したことはありません。

解説

他人の文章はよい所を褒め、そうでない所は陰でもそしらず、悪いものを無理に褒めることもせず、黙っておくのがよいと説いています。そしりは不仁・無礼であるうえ、恨みを買うという実際的な害も指摘する点が益軒らしいところです。儒学の仁、つまり人を思いやる心を日常の言葉の場面に落とし込んでいます。今のレビューや評価の場でも、努力して作った人への敬意を忘れた辛辣な批評は、相手の意欲と関係を損ないます。言葉を選ぶ慎みが求められます。

この章句が説くこと

仁礼批評思いやり言葉

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る