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洗心洞箚記 / 卷上・第五十四條

胡虜曰、衣皮毛、事畜牧、蕃性所便、英雄之生、當王霸耳、何錦綺爲、是言固壯矣、不以人廢言、學者師其意、咬菜根、明道理、人性所當爲、丈夫之業、聖賢惟是期耳、何富貴利祿之羨、

新字:胡虜曰、衣皮毛、事畜牧、蕃性所便、英雄之生、当王覇耳、何錦綺為、是言固壮矣、不以人廃言、学者師其意、咬菜根、明道理、人性所当為、丈夫之業、聖賢惟是期耳、何富貴利禄之羨、

書き下し

胡虜曰く、皮毛を衣、畜牧を事とするは、蕃性の便とする所なり。英雄の生るるや、当に王霸たるべきのみ。何ぞ錦綺を為さんと。是の言固より壮なり。人を以て言を廃せず。学者其の意を師とし、菜根を咬み、道理を明らかにするは、人性の当に為すべき所、丈夫の業なり。聖賢惟だ是れ期するのみ。何ぞ富貴利禄を之れ羨まんや。

現代語訳

ある北方の異民族の首領が言った。「皮や毛を着て牧畜を仕事とするのは、我ら蕃族の性分に合ったことだ。英雄が生まれたからには、王となり覇者となるべきだけだ。どうして錦や綾絹など身につけようか」。この言葉はもとより勇ましい。言った人によって言葉を捨てることはしない(『論語』衛霊公)。学ぶ者はその心を手本とし、菜根をかじり、道理を明らかにする。それが人の性として当然なすべきことであり、男子の仕事である。ただ聖賢を目指すだけだ。どうして富貴や禄位をうらやもうか。

解説

華美な衣服を退け、皮毛を着て牧畜に生きるのが我らの本性だと言い放った北方民族の首領の言葉を取り上げ、言った人が誰であれよい言葉は捨てないという『論語』の態度で、その気概を学べと説く。学ぶ者にとっては、粗食に甘んじ道理を明らかにすることこそ本分で、富貴利禄を羨むことはないという。「菜根を咬む」は宋の汪信民の語として『菜根譚』の名の由来になったとされる。見栄や待遇にとらわれず本分に打ち込む姿勢は、仕事の意味を見失いかけたときの支えになる。

この章句が説くこと

道理富貴菜根丈夫聖賢修己

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