洗心洞箚記 / 卷上・第三十九條
四時成萬物者也、而至其極則愚不肖恨夏熱、怨冬寒、甚於仇讐、而夏冬神固無心、而不肯顧其怨恨、直道以行焉、而成萬物也、君子之不容乎小人、於此乎可悟、然而君子只是行其道而已矣、亦奚伎倆之有、
新字:四時成万物者也、而至其極則愚不肖恨夏熱、怨冬寒、甚於仇讐、而夏冬神固無心、而不肯顧其怨恨、直道以行焉、而成万物也、君子之不容乎小人、於此乎可悟、然而君子只是行其道而已矣、亦奚伎倆之有、
書き下し
四時は万物を成す者なり。而して其の極に至れば則ち愚不肖は夏の熱きを恨み、冬の寒きを怨むこと、仇讐より甚だし。而して夏冬の神は固より心無くして、其の怨恨を顧みるを肯ぜず、直道以て行ひて、万物を成すなり。君子の小人に容れられざる、此に於てか悟るべし。然り而して君子は只だ是れ其の道を行ふのみ。亦奚の伎倆か之れ有らん。
現代語訳
四季は万物を成し遂げるものである。しかしその極みに至ると、愚かで劣った者は夏の暑さを恨み、冬の寒さを怨むこと、仇敵に対するよりもひどい。しかし夏や冬の神はもとより私心がなく、その怨みを顧みようとせず、まっすぐに道を行って万物を成し遂げる。君子が小人に受け入れられないわけは、ここで悟ることができる。けれども君子はただその道を行うだけである。何の小細工があろうか。
解説
夏の暑さや冬の寒さは極まると愚者に仇敵以上に恨まれるが、季節の神は無心で怨みを顧みず、まっすぐ道を行って万物を成す。君子が小人に受け入れられないのも同じで、君子はただ道を行うだけで小細工はしない、という。与力として奸吏や破戒僧の糾弾にあたった中斎の経歴を思えば重い言葉だが、ここでは原理を貫く者の心構えとして読める。必要な改革や厳しい判断が反発を受けるのは避けがたい。そのとき人気取りに走らず、成すべきことを成す覚悟を問う条である。
この章句が説くこと
君子小人直道天道四時修己
関連する章句
-
『大和俗訓』巻之三・心術上一およそ人の一念の不善も、かならず天に通ずる理あり。天は高きに居て、ひききに聞くといへり。上天を欺くべからず。おそるべし。人をあざむけば、つひに其、偽あらはる。内に誠あれば、必外にあらはるといへり。下人をあざむくべからず。恥づべし。天を欺き、人をあざむくは、共に我が心を欺くによれり。我が心に不善と知りながら、これを行ふ、是自欺なり。我が心あざむくべからず。およそ、天と人と我が心と、皆あざむくべからず。唯一すぢに誠あるべし。ここを以て、君子の心は、つねに青天白日の如くなり。小人の心は、常に陰暗くしてはかりがたし。
-
『童子問』卷下問ふ、知命の説に於て、未だ釈然たること能はず。願はくは其の奥旨を発せよ。曰く、蓬も麻中に生ずれば、直からざること能はず。天道は正直にして、四旁上下、渾渾淪淪として、通徹して間無く、斯の理に非ざる莫し。火に近づけば則ち焦げ、水に近づけば則ち濡る。豈に不正不直を以て須臾も身を其の間に置くことを得んや。孔子曰く、君子は天命を畏る。小人は天命を知らずして畏れずと。其の之を畏るる者は、実に畏怖すべくして、慢るべからざるの理有るを以てなり。蓋し夫子五十にして天命を知り、以後初めて語を置くこと此くのごとし。一毫の聡明を作さず、一毫の智見を挟まず、至誠正直にして、内外表裏、打して一片と成り、而る後に以て自得すべし。聡明智見を以て之を得べきに非ざるなり。
-
論語・憲問篇子曰く、君子にして不仁なる者有るかな。未だ小人にして仁なる者有らざるなり。
-
論語・為政篇子曰く、「君子は器ならず。」
-
論語・学而篇子曰く、「君子重からざれば則ち威あらず、学べば則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること無かれ、過てば則ち改むるに憚ること勿かれ。」
-
論語・学而篇子曰く、「君子は食らうに飽くことを求めず、居るに安きを求めず、事に敏にして言に慎み、有道に就いて正す。学を好むと謂う可きのみ。」
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る